第4話「知られれば、本は売れる?」
賞を取れば、本は売れる。
それは、間違いではなかったと思う。
芥川賞や直木賞など、大きな賞の受賞作が発表されると、本が動く。
テレビや新聞で取り上げられ、それまでその本を知らなかった人まで書店にやってくる。
話題になった本が、一気に売れる。
私も、そんな光景を何度も見てきた。
けれど、コロナ禍を境に、少しずつ様子が変わっていった。
もちろん、賞を取った本が売れなくなったわけではない。
ただ、
「賞を取ったから売れる」
それだけでは、以前ほど簡単ではなくなったように感じた。
受賞作が棚に残る。
受賞作家のサイン本まで残っている。
以前なら強かったはずの「受賞」という言葉だけでは、本が動かないことが増えていった。
私は、それをアイドルに置き換えて考えてみた。
たとえば、まだそれほど知られていなかったアイドルが、大きな賞を取ったとする。
ニュースになる。
テレビで紹介される。
今までそのアイドルを知らなかった人にも、名前や顔を知ってもらえる。
けれど、名前を知った人が、全員ファンになるわけではない。
少し気になって曲を聴いてみる人もいる。
動画を探す人もいる。
ライブに行ってみたいと思う人もいる。
その一方で、
「この人、賞を取ったんだ」
と思って、それきりの人もいる。
ただ、アイドルには、その先がある。
テレビに出れば、話している姿を見ることができる。
インタビューを読めば、どんなことを考えているのかが分かる。
SNSを見れば、普段の姿が見えることもある。
そこで人柄を知って、
「この人、なんか好きだな」
と思うこともある。
そうして、賞をきっかけに知った人が、少しずつファンになっていくこともある。
では、本の場合はどうだろう。
賞を取れば、それまでその本を知らなかった人にも、存在を知ってもらえる。
けれど、
「賞を取った本がある」
と知ることと、
「その本を読んでみたい」
と思うことは、同じではない。
では、賞よりもさらに多くの人の目に触れるきっかけがあったらどうだろう。
映画やドラマになれば、売れるのか。
文庫の帯には、
「映画化」
「ドラマ化」
の文字が大きく並ぶ。
有名な俳優が主演を務め、テレビでも作品が紹介されている。
これなら原作も売れるだろう。
そう思う。
でも、思ったほど売れない。
ところが、同じ映像化でも、漫画では少し違う光景を見た。
アニメ化された漫画が売れる。
映画になった漫画が売れる。
ドラマになった漫画も、原作が動く。
コロナ禍でも、少年漫画には、品薄になるほど売れる作品があった。
同じように映像になり、たくさんの人に知られているはずなのに。
漫画と文芸書や一般文庫では、何が違うのだろう。
もしかすると、手に取るまでのハードルそのものが違うのかもしれない。




