表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ステータス、始めました。〜神社に通い続けて10年、人生が数値化された俺は、日常の全てを「修行」に変えて世界の解像度をハックする〜  作者: KZUCCA
能力者襲撃事件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/14

第8話「逃げた刃物男、姿を消せても貼られたメモからは逃げられなかった件」

翌日の午後、病室に向かった。

昨日、あいつにメモを貼った。近づけば見えるはずだ。それだけを頼りに、今日も動くしかない。


病室のドアを開けると、柊斗が起き上がってスマホをいじっていた。包帯を巻いた腕が、ベッドの上に乗っている。


「元気そうだな」


「元気だから、もう退院させてくれって言ってんのに聞いてもらえない」


「大人しくしてろ」


「腕一本動かないだけで全部ダメって、さすがに管理が厳しすぎる」


柊斗はスマホを置いて、俺を見た。


「昨日のあいつ、結局なんだったんだ」


「わからん。警察が調べてるはずだ」


「姿消えたよな、あいつ」


「だよな。俺も見てびびった」


柊斗はしばらく俺を見てから、「なんか、世の中おかしくなってきてるな」とだけ言った。


しばらくして、病室のドアがノックされた。


朝日なのだった。

マネージャーらしき女性と一緒に、少し緊張した顔で立っていた。私服で、帽子を被って、マスクをしていたけど、眼力を使わなくてもわかった。


「大丈夫ですか? 昨日は本当に申し訳なくて、どうしても来たくて」


柊斗が固まった。


「あ、ありがとうございます、全然大丈夫です」


「全然大丈夫じゃないでしょう」


朝日なのが柊斗の腕を見て言った。


「ごめんなさい、巻き込んでしまって」


「いや、こっちが勝手に動いたので」


朝日なのが椅子に座って、柊斗と話し始めた。最初はぎこちなかったけど、柊斗が普通に話しかけるから、だんだん自然になっていった。こいつは昔からそういうやつだ。誰とでも普通に話せる。


俺は窓際に立って、その様子を見ていた。


しばらくして、朝日なのがこちらを見た。


「昨日、すごく速く動いてましたよね。怖くなかったですか、刃物なのに」


「怖かったですよ」


「でも動いた」


「ライブの興奮でアドレナリン出てたんだと思います」


朝日なのはしばらく俺を見てから、「それだけじゃないと思いますけど」と言った。


「そうですかね」


「そうですよ」


柊斗が横から「こいつ最近ずっと修行してるんですよ」と余計なことを言った。


「修行?」


「走ったり、腕立てしたり」


「だから動けたんですね」


朝日なのが笑った。


「修行、続けてください」


そのとき、窓の外、視界の端に、メモが浮いた。


病院の駐車場の方向だった。


「いる」


声が出そうになって、飲み込んだ。


病室の中は、普通の会話が続いていた。朝日なのが柊斗に何かを話していた。柊斗が笑っていた。


「ちょっと電話してくる」


「え、誰に?」柊斗が聞いた。


「親」


「お前の親、そんな電話してくるタイプだったか」


「たまに」


廊下に出て、剣持の番号を呼び出した。


「剣持さん、昨日の男がいます。病院の駐車場付近に」


『場所を離れるな。裏口から入る』


電話を切って、廊下の窓から駐車場を見た。


人が行き来している。でも、姿は見えない。すでにハイディングを使っているらしかった。メモだけが、駐車場の奥の方向に浮いていた。


5分後、剣持と霧島が裏口から現れた。


「どこだ」


「駐車場の奥です。姿はもう消えています。でもメモが見えてます」


「メモ?」


「俺にしか見えない目印です。昨日、あいつに貼りました」


剣持が眉をひそめた。


「やれやれだ」


三人で駐車場に出た。俺が前に出て、メモの方向へ進んだ。


フェンスの手前。メモが止まっていた。


「そこです。動いていません」


剣持と霧島が広がって、逃げ道を塞いだ。


俺はメモに向かって走った。


見えない相手に、全力でタックルした。


手応えがあった。男の姿が戻った。地面に押さえつけた。


「離せっ、なんで位置がわかる」


「企業秘密です」


剣持が駆け寄って、手錠をかけた。




男に手錠がかかった瞬間、視界の端が光った。


【システム通知】実績解除システムが実装されました


「なんだ」

思わず声が出た。

霧島が俺を見た。

「どうかしましたか」

「いや、なんでもないです」

視界の端を確認した。


【実績解除】初めての能力者捕縛

体力 +2/筋力 +2/敏捷 +2/精神 +2/魅力 +2


合計10、一気に上がっていた。


でも、それより気になることがあった。

実績解除システム。

やれば上がる、はずっと知っていた。でも、これは違う。初めてのことをやると、別枠でボーナスが入る。そういうことらしい。

じゃあ、初めてのことを増やせば。



「やれやれだ。また能力者か」


警察に引き渡す手続きをしながら、剣持が俺に言った。


「お前、本当にどうやって見つけた」


「昨日、あいつに触れた時にマーキングしました。俺にしか見えない目印です」


剣持はしばらく俺を見てから、「霧島」と呼んだ。


霧島が近づいてきた。


「こいつ、能力者だ」


「知ってます」


霧島が俺を見た。


「最初から」


「なんで言わなかった」


「言う必要がなかったので」


剣持がため息をついた。


「やれやれだ」


それから俺に向き直った。


「お前、名前は」


「黒瀬直哉です」


「黒瀬。覚えておく」


剣持が言った。


「また何かあったら連絡しろ。お前みたいなやつが、最近必要になってきてる」


霧島が、最後にもう一度だけ俺を見た。


「困ったことがあれば連絡してください。こちらも、あなたに頼みたいことが出てくるかもしれないので」


それだけ言って、剣持の後を追った。


病室に戻ると、朝日なのはまだいた。柊斗と話し込んでいた。


「遅かったですね」と朝日なのが言った。


「ちょっと長くなって」


「お母さん、心配してたんですか?」


「まあ、そんなとこです」


朝日なのはしばらく俺を見てから、「そうですか」とだけ言った。

その目が、何かを感じ取っている気がした。


しばらくして、朝日なのが立ち上がった。


「そろそろ失礼します。お大事にしてください」


「来てくれてありがとうございました」と柊斗が言った。


朝日なのは一度だけ振り返った。


「本当にありがとうございました。また会えると嬉しいです」


そう言って、マネージャーと一緒に病室を出ていった。


柊斗が何か言いかけた。でも俺は窓の外を見ていた。


今回はうまくいった。ハイディングとメモの相性が、たまたま良かった。見えない相手を、見える目印で追えた。


でも、次の敵が同じとは限らない。


メモで追えない相手だったら。眼力が通じない相手だったら。そもそも、俺の体力や筋力が通用しない相手だったら。


ステータスを、もっと上げなければ。


(第9話へつづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ