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ステータス、始めました。〜神社に通い続けて10年、人生が数値化された俺は、日常の全てを「修行」に変えて世界の解像度をハックする〜  作者: KZUCCA
屋上死闘編

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第26話「【激震】ファンタジー、現実になりました」

ゴブリンもどきが四体、唸り声を上げながらじりじりと間合いを詰めてくる。緑がかった肌、黄色く濁った目、不揃いに並んだ牙。人間でないことだけは確かだった。

「まるで、ゴブリンみたい……」

常盤先輩がぽつりと呟いた。誰も笑わなかった。笑える空気じゃなかった。


先頭の一体が地を蹴った。思ったより速い。

宵待先輩が半歩外へ流れるように体をかわし、伸びてきた爪をすり抜けながら蹴りを叩き込んだ。

ゴブリンもどきが宙を舞い、地面に叩きつけられる。

人間と同じように吹き飛ぶ。当たり前のことが、今は当たり前じゃなかった。

「効くんですね」

「効くみたいだな」

飄々とした声色の奥に、わずかな硬さが滲んでいた。宵待先輩でもそうなのか、と思った。


巌先輩が鋼鉄化した拳を振るう。鈍い音とともに、もう一体が地面に沈んだ。痙攣して、動かなくなる。

残った二体が左右に散った。

一体が俺に向かって跳んだ。爪が伸びる。

瞬歩。

視界が一瞬切り替わり、気づけば横にいた。すかさず背中に体当たりする。

よろけたところを宵待先輩の蹴りが捉えた。

最後の一体は、霧島さんの手によって動きを封じられた。

靄はない。それでも、触れた瞬間に糸が切れたように動かなくなった。


全員、肩で息をしていた。

剣持さんが周囲を見回す。「やれやれだ。こいつらは、一体何なんだ」

誰も答えられなかった。答えを持っている人間など、この場には一人もいない。


遠くで悲鳴が上がった。

空を見上げる。

亀裂が、さっきより明らかに大きくなっていた。

道を逃げ惑う人たちが、空を指差していた。みんなに見えているんだ、と気づいた。

剣持さんのスマホが鳴り続けている。画面を覗き込んで、声が一段低くなった。

「東京だけじゃない。大阪、名古屋、札幌……同じ報告が、世界中から上がってる」

霧島さんが静かに口を開いた。「通信が使えなくなる前に、動いた方がいい」


解散する直前、声をかけた。

「一つ、お願いがあります。式神を皆さんの持ち物に貼らせてください。通信が途絶えたときの連絡手段になります」

「プライバシーはどうなる」宵待先輩が片眉を上げる。

「公開するときだけ出してください。こちらから見ようとしない限り、何も見えません」

全員が頷いた。それぞれのスマホに、小さなメモを貼った。


「やれやれだ」剣持さんがぼやきながら財布を差し出した。

常盤先輩が巌先輩に付き添う形で去っていく。霧島さんと剣持さんは職場へ。宵待先輩と俺は、それぞれ別の方向へ歩き出した。


しばらく歩いてから、スマホを見た。

気づいていなかったが、何件もメッセージが届いていた。

柊斗からだった。「お前大丈夫か。返事くれ」「直哉、生きてるか」

早瀬からも。「ねえ、大丈夫?心配してる」「返事して」

ずっとバタバタしていて、気づく余裕がなかった。

「無事だ。学校に向かう」

柊斗からすぐに返ってきた。「よかった。俺も行く」

早瀬からも。「よかった……気をつけてね」

ほっとしたのも束の間、しばらく歩いたところで通信が途絶えた。

画面を何度見ても繋がらない。どこで切れたのかは、わからなかった。


視界の端に、見慣れた通知が浮かんだ。


【実績解除】

初めて異界の存在を倒した

全ステータス+10


こんなタイミングで、と思いながらも目を通した。


家にたどり着くと、リビングからテレビの音が漏れていた。ニュースだ。

「ただいま」

母さんが玄関まで飛んできた。「直哉、無事だった、よかった……!」

リビングを覗くと、父さんが床に倒れていた。

「どうしたの」

「玄関にバリケードを作ろうとしてね」母さんがため息をつく。「タンスを動かそうとして」

「腰を……やった……」

低い声で父さんが呻いた。

「お大事に」

「待て、直哉」

父さんが顔だけこちらに向けた。

「頼んだぞ、息子よ」

「え」

「あとは……任せた……」

目だけは、やけに真剣だった。


荷物をまとめる。食料、水、着替え、救急用品。

「どこ行くの」と母さんが聞いた。

「学校。みんなで集まる約束をしてる」

「お父さんは」

「連れていく。歩けますか」

父さんが立ち上がろうとして、また顔をしかめた。

「……行ける……」

「無理そうですね」

「行ける」

結局、父さんの荷物も俺が背負うことになった。


外に出ると、空が違って見えた。

亀裂が街全体を覆うように広がっている。

道には逃げ惑う人たちの影。

遠く、何かが動いていた。さっきのゴブリンもどきとは違う、もっと大きな影だった。

母さんが俺の腕にしがみついた。父さんは腰を庇いながら、それでも自分の足で歩いていた。

三人で、学校に向かった。


【ステータス】

体力 148(+10 異界討伐実績解除)

筋力 122(+10 異界討伐実績解除)

敏捷 133(+10 異界討伐実績解除)

耐久 127(+10 異界討伐実績解除)

知力 104(+10 異界討伐実績解除、スキル選択待ち)

知識 99(+10 異界討伐実績解除)

集中力 103(+10 異界討伐実績解除、スキル選択待ち)

精神 127(+10 異界討伐実績解除)

器用 89(+10 異界討伐実績解除)

魅力 100(+10 異界討伐実績解除、スキル選択待ち)

【スキル】

眼力 Lv.3

メモ Lv.2

自然回復

並列思考

瞬歩

浄化耐性


(第27話へつづく)

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