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ステータス、始めました。〜神社に通い続けて10年、人生が数値化された俺は、日常の全てを「修行」に変えて世界の解像度をハックする〜  作者: KZUCCA
屋上死闘編

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第17話「【日帰り遠征】海まで行ったら色々ありすぎた件」

民俗学研究の部室に向かった。

ドアをノックした。

「入れ」

宵待先輩が振り返った。常盤が本を閉じた。巌が部屋の隅にいた。

「相談があります」

宵待先輩が少し目を細めた。

「珍しいな、お前から来るのは」

「靄がかかっている人間を、3人特定しました」

部屋が、静かになった。

「3人」常盤が繰り返した。「同時に?」

「今のところ、動いていません。でも、一人で抱えるのは無理だと思って」

宵待先輩はしばらく黙って聞いていた。

「誰だ」

「地方議員、他校の女子学生、大きい神社の権禰宜です」

宵待先輩が、少し目を細めた。

「議員か」

「はい」

「それは厄介だな」常盤が言った。「動かれたら影響範囲が大きい」

宵待先輩が立ち上がった。

「剣持に連絡する。イニシアチブが取れる今のうちに動いておいた方がいい」

「一緒に動いてもらえますか」

「当然だ」宵待先輩が飄々と言った。「お前が見つけてきた情報だ。使わない手はない」

巌が、うなずいた。


相談を終えて、トレーニング室に向かった。

巌が後ろからついてきた。

扉を開けると、二人でトレーニングを始めた。

巌が胸のトレーニングを教えてくれた。

ベンチプレス、インクラインダンベルプレス、ケーブルフライ。

「収縮を感じろ。重量を下ろすより、上げる時に意識しろ」

「どこに意識を向ければ」

「胸の中央に向かって絞り込む感じだ。腕で押すな」

黙々とやった。

昨日よりきつかった。でも、動けた。自然回復のおかげだ。


翌朝、石段に向かった。

10往復。いつも通りだ。

9往復目を終えて頂上に立った瞬間、視界の端が光った。


【システム通知】敏捷が100を超えました

スキルを選択してください


「来た」

3つの選択肢が浮いていた。

①瞬歩

瞬間的に短距離を高速移動する。一時発動。連続使用可能。

②残像

動きに残像が出て、相手の目を欺く。一時発動。

③回避本能

危険を察知した瞬間、体が自動的に動く。常時発動。ただし1時間に1回のみ。

しばらく、3つを見比べた。

回避本能は魅力的だ。不意の一撃を自動で防げる。靄のかかった人間が複数いる状況では、保険として最高だ。

でも、1時間に1回しか使えない。

瞬歩は能動的に使える。並列思考と眼力で先を読みながら、自分でタイミングを選んで動ける。連続して使える分、戦闘での応用が利く。

オートマよりマニュアルの方が、繊細にコントロールできる。それと同じだ。

「これだ」

①を選んだ。


【スキル獲得】瞬歩

瞬間的に短距離を高速移動する。一時発動。


10往復目を下りながら、試した。

意識を足に集めて、前に踏み出した。

一瞬、景色が流れた。

3歩分くらい、前に出ていた。

「これは、使える」


週末、電車に乗った。

海沿いのエリアまで、1時間ほどだった。

渡り鳥で見つけたクエストが3個、このエリアに固まっていた。

駅を出ると、潮の匂いがした。


最初に鍾乳洞に向かった。

入口で眼力を使った。


【クエスト発生】

この空間を、奥まで観察し続けろ


中に入った。

照明はあるが、暗い。天井から鍾乳石が垂れていた。

眼力を使った。

Lv.2では、細部が見えるようになっていた。でも、暗所では限界があった。

奥に進んだ。照明が少なくなった。

意識を絞った。

じわじわと、見え方が変わってきた。

暗い場所なのに、輪郭が見えた。鍾乳石の形が、はっきりしてきた。

10分、15分。

奥まで歩き続けた。

30分後、視界の端が光った。


【クエスト達成】

眼力 Lv.3


帰り道、出口に向かいながら試した。

照明を避けて、暗い部分を見た。

Lv.2の時より、ずっとはっきり見えた。


次に砂浜に向かった。

浜辺に出ると、ゴミが目についた。

流れ着いたペットボトル、袋、網の切れ端。

眼力を使った。


【クエスト発生】

この浜のゴミを集めろ


近くの売店で袋をもらった。

1時間、拾い続けた。

網に絡まったゴミを外す作業が、特に大変だった。指先を使う細かい作業が続いた。砂の中に埋まったゴミも、丁寧に掘り出した。

砂浜がきれいになっていくのを見ながら、黙々とやった。

視界の端が光った。


【クエスト達成】

器用 +4/魅力 +3/耐久 +3


海に向かって、手を合わせた。

ありがとうございます、と声に出して言った。

神社以外でこれをやるのは初めてだった。でも、なんかそうしたくなった。


最後に海の家に向かった。

古い海の家だった。看板が色褪せていた。でも、きれいに手入れされていた。

眼力を使った。


【クエスト発生】

この場所の壊れた箇所を直せ


中に入った。

おばあちゃんが一人でいた。小柄で、目が細くて、でもはっきりした声をしていた。

「いらっしゃい。珍しいね、若い子が一人で来るのは」

「かき氷、ください」

「何味?」

「宇治金時で」

かき氷を待ちながら、外を見た。

裏の雨戸が外れかけていた。蝶番が緩んでいる。風が吹くたびに、ガタガタ音を立てていた。

「あれ、直しましょうか?」

おばあちゃんが振り返った。

「あー、ずっと気になってたんだけどね。業者呼ぶのも面倒で」

「道具あれば直せます。貸してもらえますか」

おばあちゃんが少し目を丸くした。「いいの?」

「なんとなく、気になって」

道具を借りて、作業を始めた。

雨戸の蝶番を締め直した。床板が一枚浮いていたので、釘を打ち直した。窓枠の隙間にも、詰め物をした。

細かい作業が続いた。

おばあちゃんがかき氷を持ってきてくれながら、話しかけてきた。

「どこから来たの」

「電車で1時間くらいです」

「わざわざ。観光?」

「まあ、そんな感じです」

「うちの孫も、遠くに就職してね」

「どんな仕事をしてるんですか」

「警察官だよ。女の子なのに。変わった部署に配属されたって言ってた」

俺は少し、手が止まった。

「名前、なんていうんですか」

「律っていうんだけど。知ってるの?」

「いや、なんとなく」

おばあちゃんはしばらく俺を見てから、「不思議な子だね」と言って笑った。

作業を終えると、おばあちゃんが「助かったよ」と言った。

視界の端が光った。


【クエスト達成】

器用 +4/魅力 +4/精神 +2


「また来てね」

おばあちゃんが手を振った。

「はい、また来ます」

本当にそう思った。


帰りの電車の中で、ステータスを確認した。


【ステータス】

体力 116(+2 石段継続)

筋力 90(+2 巌との継続トレーニング)

敏捷 101(+1 石段 +8 ボーナス)

耐久 95(+2 石段継続 +3 砂浜)

知力 88(+1 問題集継続)

知識 82(+1 読書継続)

集中力 85(+1 修行全般)

精神 105(+2 海の家)

器用 79(+4 砂浜 +4 海の家)

魅力 90(+3 砂浜 +4 海の家)

【スキル】

眼力 Lv.3

メモ Lv.2

自然回復

並列思考

瞬歩


魅力が90になっていた。

器用も79。

スキルが5つになっていた。

窓の外に、海が見えた。夕日が水平線に傾いていた。

霧島律。

あのおばあちゃんの孫が、霧島さんだとしたら。

次に会った時に、聞いてみよう。

電車が動き出した。


(第18話へつづく)

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