第七話 長い一日の終わり
「親睦会って、何をするつもりだ?」
「そうだなートランプとか?」
ありきたりなことだなと思ったがリビングでは賛成が続出していた。
そんなにやりたいなら4人でやればいいのに、と思うがさすがにこの空気を壊して学校でうまくやっていける気がしない。
なのでしぶしぶ了承する。
またもリビングに招かれ、晴斗と神谷がソファーに座り残りの三人は床に座りテーブルを囲んでいる状況になった。
「五人でできるちょうどいいのあるか?」
晴斗が呈した疑問に神谷が答える。
「大富豪とかどうかな?みんながルール知ってるならちょうどいいと思うけど」
それに皆、賛同し大富豪が始まることになった。
だがそうなると発生する問題もある。
「ローカルルールとかってどうするの?」
それを小野寺が指摘した。
「んーじゃあ、革命はありでしょ?あと、8切りも入れようよ!」
沙夜がそういうと続々とローカルルールが出てくる。
「階段はどうかな?」
「さすがに強くない?11バック、スぺ3返しとかはなしでいいかな?」
「いいんじゃない?!というより、革命と8切りだけでいい説あるよね!」
と、いうことで結局最初に出た二つのルールだけが採用された。僕はなんでもよかったから、話し合いに参加しなかった。
それでもゲームには参加させられるわけで札が配られてくる。
手札は……ごくごく普通というのが評価だろう。
そうして始まった大富豪はある一人の少女が無双し、ある一人の男がぼこぼこにされていた。
「また私のあがりだ、今日珍しくつよい」
そう口にするのは神谷だった。
「マジで勝てない!どうなってるんだこのゲーム!」
対称に嘆いてるのが晴斗だ。
「ほら、次のゲームも配るよー」
沙夜がカードを混ぜながらにやにやしている。
「いやいや、璃子さんやもうちょっと手加減してくれないか?こっちは毎回ビリなんだよ」
晴斗が情けない声を出すと、神谷は肩をすくめる。
「それは実力差。運も含めて、ね」
「くぅ〜、言うねぇ!」小野寺が面白がって背中を叩く。
「じゃあ次は私が璃子を倒す!」
結局、次のゲームも神谷があっさり上がり、小野寺は「なんで!?あんなに自信あったのに!」と床に突っ伏す。
僕はというと、いつの間にか二位で終わっていた。
「誠君、意外と上手いじゃん!」
沙夜の何気ない一言に、場の空気がふっとこちらへ向く。
「じゃあ次は誠くんを狙うか〜」
「やめてくれ……」
笑い声がリビングに広がり、なんだかんだで親睦会らしい空気になっていった。
この後も大富豪をやったり、ババ抜きに変えてみたりして、なんだかんだ楽しんでいた。
ちなみに、ババ抜きでも晴斗は可哀そうになるくらい、ぼこぼこだった。
負けるたびに「今のは手札が呪われてた」だの「星座占い10位だったからなー」とよくわからないことを言っていた
そうして時間がたったので、作ってたあれが固まったころだ。
「たぶん固まったからとってくる」
「お!よろしく頼むよ少年!」
沙夜になぜか見送られキッチンに向かった。
冷蔵庫を見るとしっかり固まっていたので包丁で切り分け、そのままリビングに持って行った。
「ほら、弁当で事故ってたぶんしかないからそんなに量ないけど」
出来栄えはそれなりで食べれないものではないと考えているがどうだろうか、と考えていると沙夜がもう口に運ぶところだった。
一口食べた沙夜の眉が一瞬きゅっと寄り、次の瞬間ぱっと緩んだ。
「……うん、意外といける!というかうまし!」
沙夜がぱっと顔を明るくして言った。
「甘いのに、米の食感が残ってるのが面白い!」
「へぇ、そんなに?」小野寺も一口食べ、少し首を傾げる。
「うん、おいしいけど……おやつっていうより、妙に腹にたまるね」
「誠やるな!これおいしいぞ!」晴斗は感心していた。
「私もこれ好きだよ」神谷は淡々と食べ続け、あっという間に完食していた。
それぞれの感想に僕は苦笑しながら、まあ事故の割には上出来か、と胸をなでおろした。
結局、皿はすべて空になり、テーブルの上にはわずかに残ったチョコの香りだけが漂っていた。
「じゃあ、そろそろ私は帰るよ、晩御飯作らなきゃだし」
神谷がそう言い時計を見ると、7時を指していた。
「じゃあ俺も帰ろうかな、今日はありがとな!」
「わたしも帰る!花咲さん今日はありがとね!音無君もあのチョコありがと!」
そうしてみんな帰っていくというので僕ももそれと一緒に帰ることにしようとしたが、ご近所さんだと、他の人にばれたくないと思っていると。
「あ!誠君は残って!先生から預かってるものあるから!」
珍しくタイミングが良かったので残らせてもらうことにした。
「わかった、それを受け取ってすぐ帰る」
「じゃあ俺たち先に帰ってるなー!」
「「「おじゃましましたー!」」」
そうして三人が帰っていき何かを取りに行ったであろう沙夜が何も持たずに戻ってきた。
「渡すものがあるんじゃなかったのか?」
「いや?ないよ?ご近所ってばれるのいやかなーって思って!」
「お前気遣いとかできたんだな」
「ひどくない!?」
素直に感心だ、今日一日のことを考えて人のことを考えるとかできないのかと思っていた。
「今回に関しては素直に感謝だ、ありがとう」
「誠君がでれてる!初めて見た!」
「でれてねーわ」
けらけらと笑ってる沙夜を横目に鞄をもって玄関に向かう。
玄関につくと沙夜にもう一度話しかけられた。
「どう?ちゃんと楽しかったでしょ?」
「どうだか」
そっけなく返したがなんだかんだ楽しかったと感じている自分がいる。
とっても疲れたが、とても充実した一日だっただろう
「あとさー、私のこと一回も名前でも苗字でも呼ばないよね?どっちかで呼んでくれない?」
頬をぷくーっと膨らませ、不満ですよとアピールしてくる。
「気が向いたらな」
「ダメ、せめて名字で呼びなさい!」
特にこだわりがあるわけでもないし。呼ばないと返してくれなさそうなのでとっとと呼んで帰ることにする。
「花咲、これでいいか?」
「んー、まあいいでしょう!今日はあれどうにかしてくれてありがとね!また明日学校で!」
そうして見送られ外に出る。
すぐそこの自分の家に入ると奥から母親がすぐ出てきた。
「おかえり!学校どうだった?楽しかった?お友達はできた?先生はいい人だった?」
いっぺんにすごくいろいろなことを聞いてきた。
「全部に一気にこたえられるわけないだろ、友達はできたし、それなりに楽しかったよ」
そういう僕の顔を見るなり母はにっこりと笑った。
「そう、ならいいのよ!これからもいけるときに行こうね」
その母の顔は余計なことを言わないようにしているように見えた。
僕が引きこもる要因は学校にいるのだが、それに触れないようにしているのだろう。
「心配しすぎだよ、なるようになるから」
そう言って、僕は部屋に戻り制服のままベッドに倒れこむ。
今日は長い一日だった、そう思い瞼の重みに身を任せ、眠った。
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