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VRMMO殺人指南書  作者: 幽々
ノーネーム編
15/31

Episode14

『ザッツ・ライ、お昼下がりのアンニュイ。 本日のゲストはぁ、なんとあの残剣・シャドウを入手したという、プレイヤーネーム「ランカ」さんを呼んでおりまーす、拍手ー』


ローレイフとの一件から、既に一週間ほどが経った十一月の中旬。 俺は真っ暗な部屋の中、ベッドの上で今日の昼に行われていたという、とあるインタビューの録画映像を眺めている。 映し出されているのはRMT内の映像だ。 こういうメディア系の映像や資料はプレイヤーなら誰でも見られる情報で、公式が唯一許可を出しているプレイヤーによる情報でもある。 インタビュアーを務めるのは自称『情報発信ギルド』の「ナナちゃん」という名前のプレイヤーで、情報収集に当たるプレイヤーも数人在籍しているらしい。 狩りギルドでもPKギルドでも戦争ギルドでもなく、ただ情報を発信するためだけに存在するギルドというのは、RMT内で唯一の存在である。


基本、VRMMO、RMT内に置けるインタビューは稀にあることだ。 注目されているプレイヤーや、偉業を達成したプレイヤー、高難易度のクエストをクリアした初のプレイヤーがそれらに呼ばれることは多い。 最近の出来事で言うと、グラグルトの「サーザン」と「影桜」がインタビューを受けていた。 そんで、今日再び行われたインタビューでは、クエスト「残剣の欲望」をクリアした俺たちに白羽の矢が立ったというわけ。 適正レベル推定百、レベルキャップが今年の五月に解放されてから初の百以上クエスト。 それをクリアしたというのだから、取材申請があったのも無理はないだろう。 RMT内全てのプレイヤーに発信されるということで、勿論俺もローレイフも断ったが、今映像に映っている馬鹿は別だったらしい。


『あはは、いやいやどうもどうも。 神楽のランカです。 なんか、こういうのって初めてだから緊張しちゃって』


『大丈夫ですよぉー。 わたしだって、そりゃもう緊張してますしねぇ』


気だるそうに、インタビュアーは言う。 さすがにアンニュイと名乗ることだけあり、心底だるそうだ。 見ているとなんだか眠くさえなってくる。 俺は水をひと口含み、それを喉に通しながら続きを見る。


『それより、良かったんですかぁー? ランカさんって、噂によるとプレイヤーキラーだとか伺ったんですがぁ』


……そうだ。 だからこそ俺は、目の前のこの録画映像に頭痛さえしている。 このインタビュー自体、強制ではなく承認制だ。 恥ずかしがって受けない奴もいれば、明確に拒否する奴もいる。 中には無視なんてする奴もいる。 いつだったか、その所為で中々良い情報を送れないと番組内で愚痴っていたこともあったっけか。


そして、あろうことかこの馬鹿はなんの躊躇いもなくインタビューを受けたのだ。 RMT内に馬鹿発見器と言われる物があるとしたら、まさしく目の前のこれだろう。


少なくとも、このインタビューで得られる情報だけでも、中部を拠点にしている『神楽』というギルドがあること。 そのギルドはPKギルドであること。 そしてランカの名前と容姿。 それらを得ることができる。


なのに、この馬鹿は。


『いえいえ問題ないですよ。 誰が来ても、ぶっ殺しますから。 ……あ、そう言えばロイフはメディア露出するときは少しぶりっ子した方がウケが良いって言ってたっけ……。 あ、えと! ぶち殺しちゃうぞ? てへ』


『あ、あはははは……』


インタビュアーでさえ、引いている。 というか俺も引いている。 ランカの奴、普通に受ければまだマシなものを……全ギルドに対して喧嘩を売るような発言をしたのだ。 まぁいずれそうなるとしても、この立ち上げて少ししか経っていない期間にだ。 しかも問題は、これを問題だと捉えているのが俺だけだということ。 ロイフは「来れば戦うだけだ」とかなんとか言っていたし。


「で、これについて何か言うことは?」


俺は録画映像を切り、通話中の相手に返答を求める。 宙に浮かぶクリアなパネルではあるが、その先の相手はしっかりと映し出されていた。 その相手は照れ臭そうに頭を掻き、返答する。


『あーいやぁ、なんか有名になっちゃったね。 困った困った』


その先に居るのは、病院のベッドで寝ているランカ。 病衣を身に纏い、その姿と場所には似合わない元気な笑顔をランカは俺に向けている。 一見したら、発色性不合症候群という奇病に侵されていないようにも感じられる姿だった。


「お前なぁ……確実に、絶対に反省してねーだろ」


あれから、至るところでランカの噂で持ち切りだ。 あんな発言をRMT内全てに発信されるインタビューで言った奴なんて、後にも先にもこいつだけだ。 おかげでランカは殺人鬼ならず殺人姫だなんて呼ばれている。


『おかしいよね。 もうちょっと、可愛さをアピールしたかったんだけど……』


「ないもんをアピールしようがねえだろ。 まぁ馬鹿っぷりはアピールできたんじゃないか」


『まーたそういうこと言う! シンヤはほんっと、女の子に対して乱暴な扱いをするんだから』


「……はいはい悪い悪い」


ランカは頬を膨らませ、画面に顔を思いっきり近づけた。 それがなんだか恥ずかしくなり、俺は咄嗟に画面を遠ざけ、そう返す。


『あ、それよりシンヤ、髪切ったんだね。 まだ少し長いけど』


「ん、ああ。 ちょっと鬱陶しかったからな」


ただ、気が向いただけとしか言いようがない。 それに、この前のロイフの一件で臨時収入はあったしな。 全員に分配され、そして殺しを繰り返して、最終的には俺、ランカ、ローレイフに十万近い収入があった。 俺とランカ二人で、二人を殺したときと同じくらいの金額だ。 正直、あれはかなりでかい。 あれのおかげで俺の生活は結構潤ったのだ。 この前なんて、通販で良い水を買っちゃった。 それも箱買いで。


『ふふ、そっかそっか。 偉い偉い』


「なに子供扱いしてんだ。 喧嘩売ってるのか」


俺が言うも、ランカは笑ってはぐらかす。 そして更に何かしら言ってやろうかと思ったところで、携帯が鳴り響いた。 面白いことに、俺とランカの携帯が同時にだ。


「……メール?」


『あ、私もメール。 速報だ、RMTの』


それを聞き、通話状態のまま俺とランカはメールに目を通す。 そこには、こう書かれていた。




差出人、ザッツ・ライRMT運営部。


この度は弊社VRゲーム『RealMoneyTrade』をご利用頂きありがとうございます。


さて、以前にも告知しておりました『ノーラム城の攻城戦』について、プレイヤーの方にお知らせがありまして、ご連絡をさせて頂きました。


来る十一月二十八日、午後九時より十時半までの間、攻城戦開始の告知をさせて頂きます。 これにより、東西南北全ての城で攻城戦が行われることとなり、サイクル型の攻城戦実装となります。


ノーラム攻城戦から始まり、ガーラ攻城戦、イロニア攻城戦、サリュローザ攻城戦をサイクルで行います。 期間、日程については次回定期メンテナンス時に、公式ホームページにて掲載致します。


そして各地での攻城戦活発化に伴い、これから起こるであろう変化にもご期待ください。


これからも、末永いご愛願を宜しくお願い致します。


ザッツ・ライRMT運営部。




「一週間だな」


『一週間? 二十八日まで、まだ十日くらいはあるけど』


「そうじゃなくて、攻城戦のサイクルだ。 北、東、南、西の順番だろ? 城から城は、どっから行っても三日はかかる。 それから準備とかもあるし、それを考えたら週に一回ってところだ。 全部の戦争に顔を出す戦争屋ってのもいるしな。 ガーラの里とか、良い例だ」


少数精鋭ギルド、助っ人ギルド、なんでも屋、様々な呼ばれ方をするガーラの里だが、一番使われるのは傭兵部隊というものだ。 一人一人のレベル、ステータス、装備はどれもトッププレイヤー級で、その実力は一騎当千とも言われている。 正直、今この段階であいつらとぶつかり合うのは避けておきたい。


『なるほろぉ。 でも、私たちには関係ないでしょ? 殺してもなーんも貰えないんじゃ、つまんないし』


「攻城戦時間内はな。 だけどそれ以外なら別だ。 その途中のフィールドでなら、時間前のエリア内なら、PKは成立する。 それによ、北部に行くためには必ず中継しなきゃならない場所があるだろ?」


ランカはそれを聞き、一瞬だけ顎に手を当てた。 そして、ハッとなり顔を上げる。


『アルゴーラ! ノーラムに入るときに必ず一度は立ち寄る街!』


「そ。 ノーラムはさっみいからな。 凍結耐性のポーションを買っておかないと、まともに動けやしない」


そして、唯一そのポーションを取り扱っているのが、アルダイムの最北端にある、アルゴーラという街だ。 丁度、セントラルから北西方向、ノーラム地方の都市『ノズウェイ』と隣接するようにある街だ。


「ガーラの里の連中も来るだろうから、なるべく早く行動すんぞ。 ってわけでランカ、今からログインできるか? ロイフには俺から連絡しとく。 誰かさんの所為で顔が割れてるから、アルゴーラ付近で姿隠して狩りすんぞ」


『オーケー。 大儲けだ!』


嬉しそうだなおい。 俺としちゃ、誰かさんの所為でって部分をもっと気にして欲しかったんだけどな。 気にする素振り皆無かよこいつめ。


……まぁとにかく。 ロイフに連絡をしよう。


この「ロイフ」という呼び方も、ランカが「長いから三文字まで削ろう」と提案し、定着した呼び方だ。 俺は正直どっちでも良かったが、ランカが呼ぶ内に自然とそう呼んでいた。 ロイフ自身も嫌がる素振りは見せなかった……というよりかは半ば諦めている感じではあったが、晴れてランカの呼び方は浸透したのだ。


「ロイフ、居るか?」


『ん、どうした。 仕事中なんだが』


ランカとの通話を切った俺は、すぐさまローレイフに電話をかける。 既に連絡先は交換してあり、ランカのようにライブモードではなく、昔懐かしい音声のみでの通話だ。


「おっと悪い。 つうか、働いてたんだな」


『また随分失礼な物言いだな……そういうシンヤは?』


「俺は決まってんだろ、学生ニートだ。 つーか、ネトゲとかニート最強だからな。 もっと言えば金持ってるニートが最強だけど、RMTじゃあんま課金要素ねーからな。 時間が有り余ってるニートが最強で間違いねぇ。 一日十八時間くらいやっとけば余裕だ」


『駄目人間の演説を聞かせるな、いろいろ毒される気がしてならない。 それで、用件は?』


ローレイフに言われ、本来の用事を思い出す。 危うく、ネトゲにおいてニートが如何に強いかに熱弁を振るうところだった。 もう振るったあとのような気もするが、別に良いか。


「ああ、ニュースは見たか? ザッツ・ライの」


『見たよ。 確か、ノーラムの攻城戦だったな。 以前から言われていたやつだ』


聞いといてあれだが、ついさっき届いたばかりのメールをもう読んでいるとか、こいつ仕事中に遊びすぎじゃないか……。 てか、普通にイン時間も俺たちと大差ねーんだよな、実際のところ。


「なら話が早い。 俺とランカでアルゴーラの近くで張って、一稼ぎしようかって話してたんだ」


『なるほど。 そういう話だったか』


「けどま、仕事なら仕方ねーな。 邪魔して悪い」


ホワイトなギルド神楽では、基本的にリアルを優先している。 ネットゲーム界ではその昔「仕事を辞めてください」とか「何々というボスを狩るためにニートになれませんか?」というようなことを言ってくるギルドがあったというが、うちではそんなことは決して言わない。 俺もランカも優先すべきリアルというのが存在しないってのもあるからだけどな。 新しく加わったロイフは、それを知っているのかイン時間を確保してくれるからありがたい。


……だと思ったのだが。


『それを一番最初に言え。 俺も行こう』


「ん……でも、仕事は?」


『今日は店仕舞いだ。 趣味でやってるバーで、本業はRMTだからな』


とことん、類は友を呼ぶって感じだな。 それとも、似たもの同士どんどん似てきているだけか。


とまぁ、こんなわけでプレイヤー狩り、もっとも人が多く来るであろう二十八日までの間、俺たち神楽の三人はアルゴーラ付近でPKを行うことにした。

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