表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMO殺人指南書  作者: 幽々
神楽結成編
13/31

Episode12

「さーて、行動パターンは……」


まず俺がしたことは、シャドウの基本攻撃パターンの確定。 対象としているのは、出現したときにもっとも近くに居た俺だ。 そして、こいつは俺がある程度距離を取った状態だと先ほどの魔法を放ってきた。


「ブラッドドレイン」


クリスに意識を向け、俺はスキルを唱える。 吸血とも呼ばれるスキルだ。 これは敵に与えたダメージの十分の一を自身のHPへと還元させるスキル。 暗殺師が殴り合いを行う場合の生命線。


俺の魔法耐性はそこまで高くはない。 速度最重視で、次点で上げているのは攻撃力だ。 HP総量や、異常耐性、魔法耐性を高めるCONには必要最低限しか振っていない。 正直、あの魔法をもう一度撃たれたらマズイ。


だから、やるとしたら接近戦。 持久戦は望ましくないから、短期決戦だ。 あのシャドウとやらは、攻撃力は馬鹿みたいにたけえが、動きはそこまで早くない。 とは言っても、やはり距離を取られるのは面倒か。 ならば。


「ッ! レッグカット!」


追い詰められていた壁を蹴り、前へ飛ぶ。 ほんの一瞬でシャドウのもとへと辿り着いた俺は、すぐさまスキルを唱え、シャドウの足を斬りつける。


「ぐ……」


同時に、シャドウのHPバーに異常状態を知らせる囲いができる。 移動不可のアイコンだ。


「お前、硬そうだな。 比べようぜ、俺の火力とお前の耐久、俺のHPとお前のHP、どっちが先になくなるか。 モンスター如きがあんま調子乗るんじゃねーぞ」


言い、俺はクリスを振るう。 肩の辺りを斬り裂き、次にクリスを逆手へ持ち替え、俺はそのまま胸の辺りを横に斬り付けた。 次に腰を、次に首を、次に足を、次に腕を、次に腹部を、次に顔を。


後ろへ抜け、背中をそのまま二度斬り付ける。 秒間十発の攻撃、それが俺の早さだ。


「……ゴミが……ゴミの分際が……ハッ!!」


俺の攻撃が終わり、すぐにシャドウは俺に向けて剣を振るう。 それを後ろへ仰け反り、躱す。 頬の辺りが多少切れ、俺のHPは微量減った。


……さすがに高レベルだけあり、こいつの速度も中々だ。 AGIは回避判定も大きく変わるというのに、当ててくるか。


「舐めんなよオイッ!!」


それから、俺とシャドウは斬り付け、斬り付けられを繰り返す。 俺にとっては一瞬の出来事だったかもしれないが、恐らく数分の間……それは続いた。 そして、やがて倒れたのはシャドウだった。


『ぐぁあああああああ!! こ、この我が死ぬというのか……だが、まだだ……まだ終わらん!! 我の野望、ダグラハマの復活は近いッ!! 貴様ら……覚悟、するのだな……』


シャドウは言い、消滅する。 同時に、クエストのクリア画面が表示される。 それを見て、俺はようやく全身の力を抜いた。 すると、その場に崩れるように体が落ちた。


……ギリギリだった。 俺のHPバーが、残り数ミリしか残されていない。 アイテムを惜しみなく使い、これか。 これじゃあどうやら、報酬である残剣を売り捌いたとしても、収支はトントンじゃねーか。


ほんっと、とんだ厄日だな。


「わ、わわわ!! さ、さすがです!! わた、私……何もできませんでしたよぉ!!」


「いやぁ……マジですげえな。 トッププレイヤーってのは、全員こんななのか?」


カラフルとカインは言い、笑いながら俺のことを見ている。 というよりかは、トッププレイヤーってのはもうちょっとしっかり構成を組んだりするものなんだよ。 まず、こういう状況に陥ること自体がない。 そういう状況にさせないってのが、本当のトッププレイヤーだ。


その点で言えば、トルトが在籍しているグラグルトのギルドマスターのサーザンと、サブマスターの影桜は相当なものだ。 戦略的に優れており、そして人望もあるあいつらは強い。 俺にはない強さが、確実にある。


「ほほっ! 恐れ入りましたぞ、シンヤさん。 いやぁ、やはりシンヤさんを呼んで正解でしたな……。 ワタシたちだけでは、確実に全滅しておりました」


「んだね! ここまで強いなら、うちでも一番上に付けるんじゃないかなぁ。 どう?」


トルトは言うと、俺に手を伸ばす。 が、俺はそれを掴まずに立ち上がった。


「大勢で動くのは好きじゃないんだ。 それに、俺は結局プレイヤーと戦った方が好きだから」


「そっか。 そりゃ、残念だ」


それらの声に、俺は素っ気なく返す。 少しだけ、照れ臭いというのもあった。 そんな中、俺に駆け寄ってきたのはランカだった。


「おっしいなぁ。 もうちょっとで、シャドウさんの勝ちだったのに」


「残念だったなおい。 言っとくけど今日の戦犯はお前だからな。 戻ったらいつもの居酒屋で祝勝会、んで経費よろしくな」


「……」


俺の言葉に、ランカはムスッとした顔付きになる。 そして渋々、頷いた。 こいつの今日の行動力の根源に、俺に対する仕返しという想いがあったかと思うと、なんだか凄くやるせない気持ちになるな……。


「とにかくお疲れさん。 これでカラフルも、心置きなくって感じか」


「は、はいッ! 本当に、最後にとても凄いものも見れましたし……思い残すこと、ありません!」


俺はそれを聞き、ボスが倒されたことで開かれた部屋の奥へと向かう。 クエスト報酬である残剣は、しっかり貰っておかなければな。 このまま何もなしとなってしまっては、釣り合いが取れなさすぎる。


ランカも俺を見て、並んで奥へと進み出す。 他のメンバーは、最初の位置で思い思いの話に花を咲かせていた。 大方、最後になるカラフルに言葉でもかけているのだろう。 その証拠に、カラフルの奴……キャラがラグっている。


「またさ、いつか気が向いたら戻ってきなよ。 そんときにはオレ、グラグルトのトップになってるから!」


「は、はい! いつか、絶対戻ってきます! 皆さん、本当に色々とありがとうございました」


「良いって良いって、そんなかしこまること――――――――へ?」


途中で、トルトの様子が変わった。 それを聞き、何かあったのかと思い、俺は振り向く。


「……ランカ、お前もしかして最初から勘付いてたのか? そんで、このクエストを受けることに積極的だった。 そうか?」


「んー、どうだろ。 どっちかって言うと、そういう可能性もあるかなって思っただけ。 結果的にはこうだけど」


目の前で起きていた光景を見て、俺とランカはそんな会話をする。 そんな会話をしている間にも、目の前の出来事は進行する。


「な……ろ、ローレイフ? お前、一体何を……」


「……」


目を見開き、カインはローレイフのことを見る。 だが、ローレイフは返事をせずに()()()()()()()()()()()()()()


『お知らせです。 セントラル北、クエスト名「残剣の欲望」ダンジョン内にてプレイヤーキルが発生致しました。 プレイヤー「ローレイフ」がプレイヤー「トルト」を殺害しました』


「ろ、ろろ、ローレイフさん……? な、なんで……ど、どうして!?」


「……」


引き抜いた剣を眺めるローレイフ、そしてそのローレイフにカラフルが言葉を投げ付ける。 だが、ローレイフはそのまま一番近くに居たカイン目掛け、剣を振り下ろした。


「う、ぐぁあ!」


呆気に取られていたカインは行動を起こす前に、その剣を食らう。 残りHPが僅かだったカインもまた、そのHPバーを消滅させる。


『お知らせです。 セントラル北、クエスト名「残剣の欲望」ダンジョン内にてプレイヤーキルが発生致しました。 プレイヤー「ローレイフ」がプレイヤー「カイン」を殺害しました』


無機質に、アナウンスは流れる。 このダンジョン内ならば、そのアナウンスが聞こえるのは俺たちだけだ。 そして、そのPKは今目の前で行われているものだ。


「便利なものだな、殺人許可証は」


……俺が持っている、チケットか。 それの効果は、パーティメンバー全員、及びギルドメンバー全員に及ぶ。 それを利用して、こいつはトルトとカインを殺した。 とすると……最初から、計算の内だったというわけか?


「殺人、許可証……。 そ、そうですぞ! トルトさんがやられてパーティリーダーがシンヤさんに移っております……ひっ!!」


山ノ川は、俺に向けて何かを言いかけたところで、背後からローレイフに斬り付けられる。 山ノ川のHPはほぼ満タンではあったが、その一撃で全てが消し飛んだ。 防御力の低い後衛職で、しかもレベル差があれば騎士の攻撃と言えど、ワンキルってわけか。


『お知らせです……』


お馴染みのアナウンスが流れ、山ノ川が死亡したことが告げられる。 それを見て、カラフルは慌てて俺のもとへと駆け寄ってきた。


「し、シンヤさん! い、今すぐローレイフをパーティから追放してくださいッ!! そ、そそ、そうすれば……ローレイフはPKをすることができなくなりますッ!!」


山ノ川の言葉から、それに気付いたのか。 カラフルは懇願するように俺に言う。


既に、六人中三人がローレイフによって殺された。 パーティメンバーである俺たちにも俗に言う分配は入っているが、それはローレイフによって行われたものだ。


次に、俺がクエストを手伝った理由だ。 それは山ノ川が言う「思い出作り」というものが、どのような結末を迎えるのかに興味があったから。 俺が普段足を踏み入れないような人種のそれが、どんなものなのかが見たかった。


更に次。 クエストが終わるまで、俺は手出しするつもりはなかった。 それは勿論、パーティメンバー全員に対して。 例外なく誰一人として、殺すつもりはなかった。 しかし、ローレイフがそれを行った。


……ここで俺が、カラフルを助ける理由。 今すぐにローレイフをパーティから追放し、俺とランカ、そしてローレイフの対決に持ち込むこと。 それをすれば、少なくともカラフルは助かる。 最後の最後で最悪な結末とはなったが、自分自身が死ぬことはなくなる。


「シンヤさん!!」


俺はどうやら、寝ぼけていたようだ。 狩り専の連中と、こんなことをすること自体がそうとしか思えない。 目が、覚めたな。 ここでカラフルに手を貸す理由は――――――――もうないじゃん。


「あは、あはは……あはははは! やだよ、断る。 なぁ、何を勘違いしているのか知らねーが、俺もあいつも大差ねえんだよ。 気が向いたら殺すし、そうじゃなくてもとりあえず殺す。 プレイヤーキラーなんて、そんなもんだ。 次の機会がもしもあったら、参考にするように」


ああ、楽しい。 その顔が、愉快だ。 自分の死を実感するその顔が、愉快だ。 こんな仮想空間ではいくら死んでも現実で死ぬなんてことはないが、このゲームは失われる物が多い。 カラフルの仲間、あの三人はもう帰ってくることはないだろう。 特にカインなんて、馬鹿な奴だった。 百万近い金が、あの一瞬で吹き飛んだ。 これが笑わずにいられるか? 無理だね、楽しくて、面白くて仕方がない。


俺は、そういう奴だったよ。 ちゃーんと、思い出した。 この感じはやっぱり楽しい。 PKはもう、止められそうにない。


「しん、や……さん……」


カラフルのキャラは、これ以上ないほどにラグる。 動揺が、そこに現れている。 しかし、その切断されるまでの数秒をローレイフは逃さなかった。 背後から、カラフルの首を斬り落とした。


『お知らせです。 セントラル北、クエスト名「残剣の欲望」ダンジョン内にてプレイヤーキルが発生致しました。 プレイヤー「ローレイフ」がプレイヤー「カラフル」を殺害しました』


ばいばい、少なくとも数分の間は、良い夢が見れたよ。 もっとも覚めてみりゃ、最悪の夢だったけどな。


「礼を言っておこう。 どうやら、俺は気が触れてしまったわけじゃないらしい」


「はっ。 何が? 俺から言わせれば、プレイヤーキラーなんて全員頭がオカシイ連中だぜ。 お前も、俺も」


ローレイフはそれを聞き、笑う。 この空気、どうやらこいつは俺とランカのことも殺そうとしているな。 それを感じランカに視線を送る。 すると、ランカも既にそれには気付いているようで、杖を構えいつでも戦える状態へとなっていた。


「さっきの言葉だよ。 俺は、元よりパーティメンバーを全て殺し、残剣を奪う予定だった。 だが、それに全く何も感じなかったのだよ。 少しの戸惑いも、躊躇もしなかった。 だから俺はお前に聞いた。 PKをするときに、思うことはあるか……と」


「なるほどね。 なら俺とお前は一緒だ。 っつうことはなんだ、PKしたのは初めてか。 のわりに、やけに手際が良いな」


「褒めてもらえて光栄だ。 だが、お前らもここで死んでもらう」


ローレイフは言い、剣を両手に持つ。 殺気が放たれ、それを俺もランカも感じ取る。 こいつ……対人初心者にしちゃ、やけに落ち着いてるな。 たまーに居るんだよな、そういう才能を持ってる奴。 対人に関する絶対的なセンスを持った人間が。


「……なぁ、お前は元からこうするつもりだったんだろ? けどよ、その作戦にはクッソでけぇ穴がある。 分かるか?」


「さぁ、分からないな。 教えてくれるか? 先輩方」


「俺とランカを敵に回すっていうことだよ。 その時点でテメェの作戦は失敗だ」


さ、始めよう。 久し振りに、面白く戦えそうだ。 俺は今、この上なく楽しそうに笑っているんだろうな。 こんな感覚、もう忘れてしまいそうなものだった。 それを思い出させてくれてありがとうよ。 それで、死ね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ