70 総帥との対面
浩人はエドワードとルーカスに見つめられて緊張した。
部屋には他に五人の男がいる。先ほど黒の鷹と呼ばれた男とスーツ姿の男が二人。それにオリビア救出の時に突入してきた軍人たちのリーダーらしき二人でこの二人はまだ武装を解いておらず銃を持っている。
「浩人。君に教えることは山ほどあるが、その前に君の本音を聞きたい。浩人はオリビアと結婚したいか?」
エドワードに問いかけられて浩人は頷く。
「はい。結婚したいです。そのためなら何でもします」
(俺はオリビアのためならこの命を懸けてもいい)
浩人はオリビアの顔を思い出す。
「なるほど。君の意思は分かった。これから話すことはドレイクヴァロの基本的なことだからよく聞いて欲しい」
「はい」
浩人は姿勢を正した。
「まずはこの部屋にいる人物を紹介しよう。私はエドワード、そしてルーカスは分かるね?」
「はい」
「この人物は東アジアの地域リーダーの黒の鷹だ。そしてあちらに立っているグレーのスーツを着ているのが私の秘書兼ボディーガードのキール、その隣の黒いスーツの男はルーカスの秘書兼ボディーガードのロバートだ」
キールとロバートが浩人に頭を下げる。
「入り口の所にいるのは右が私の直属護衛チームコンドルのリーダーのメイソン、そして左がルーカスの直属護衛チームオルカのリーダーのカルロスだ」
メイソンとカルロスも頭を下げる。
「次はドレイクヴァロの幹部についてだ。総帥のオリビアの父アランは双頭の鷲、そしてアランの弟の私は双頭の山猫、アランの息子のルーカスは次期総帥で双頭の隼、ルーカスの双子の弟マテオは双頭の梟と呼ばれている」
「はい」
「ドレイクヴァロの仕事の話をする時はこの通称名で呼び合うことになってるから注意してね」
「分かりました」
「その他に世界の各地域を支配する地域リーダーと言う者が七人いる。赤の蛇、青の熊、緑の虎、白の狼、金の獅子、銀の豹、それにここにいる黒の鷹だ」
黒の鷹は浩人に軽く頭を下げる。
「そしてアランの相談役として十和麗月会の舎弟頭が双頭の朱雀の名前をもらっているが双頭の朱雀がドレイクヴァロの運営に直接口を出すことはない。あくまでドレイクヴァロの運営は先に話した四人と地域リーダーの七人の合計11人で行っている」
「はい」
(十和麗月会の舎弟頭がドレイクヴァロと親密な関係と聞いたが双頭の朱雀というのは名誉職みたいなものか)
「まずは君にはこれから総帥の双頭の鷲にパソコンを通じて会ってもらう。そこでまず総帥が君のことを認めなければ君は不要な存在となる。不要な存在は排除される。それは分かるね?」
「はい。分かります。俺は消されるってことですね」
エドワードはその言葉に返事をしなかったがエドワードが浮かべる笑顔がそれを物語っている。
(ドレイクヴァロは徹底的な実力主義だと聞いたことがあったが本当のことだったんだな)
「では双頭の鷲への通信を開く」
エドワードが目の前のパソコンを開き何やら操作をする。
「双頭の鷲様。双頭の山猫です」
「双頭の山猫か。どうした?」
「はい。先ほど話した通り波戸場浩人をドレイクヴァロに引き取りましたので挨拶をと思いまして」
「そうか。分かった」
英語で会話していたエドワードはパソコンの画面を浩人に向ける。
画面には黒髪に黒い瞳の男が映っている。
浩人は画面越しとはいえドレイクヴァロの総帥に会うのに緊張した。
「総帥は日本語が話せるから日本語で挨拶をしていいよ」
「は、はい。初めまして、双頭の鷲様。波戸場浩人と申します」
浩人は画面の中の双頭の鷲に挨拶をする。
「君が波戸場浩人くんか。浩人と呼んでいいかね?」
「はい」
「君はオリビアと付き合っているらしいがオリビアと結婚したいのか?」
アランの直球の質問に浩人は緊張しながらも答える。
「はい。オリビアさんとはいずれ結婚したいと思っています。オリビアさんと結婚できるなら何でもします」
浩人は自分の胸の内をアランに訴える。
(俺はオリビア以外の者を愛することはない)
その言葉を聞きアランはスッと目を細めた。その瞬間浩人は呼吸すら困難なほどの圧迫感を感じる。
(ぐっ、何だ?この男の存在感は。パソコンの画面越しでもこんな存在感を感じる男は初めてだ)
「そうか。浩人の気持ちは分かった。だが娘と結婚したいならドレイクヴァロの幹部クラスの実力を身に着けろ。それが条件だ」
「わ、分かりました」
浩人は蛇に睨まれた蛙のように動かなくなった自らの体を叱咤して答えた。
「勉強の内容は双頭の山猫に聞け。オリビアが留学期間が終わってアメリカに帰って来る時に君に会うのを楽しみにしている」
「はい」
すると画面が消える。
浩人は金縛りが解けたようにホッとした。ただ会話しただけなのに浩人は全身に汗を掻いていた。
(さすが世界最大のマフィア組織のボスだな。こんな漢がこの世に存在するなんて)
小さく乱れた呼吸を整える浩人にエドワードは笑顔で声をかけてきた。
「とりあえず双頭の鷲にはチャンスを貰えて良かったね。双頭の鷲も言っていたがこれからオリビアの留学期間中に君には私の元でいろいろ勉強してもらう」
「はい」
「オリビアの留学期間中に最低限のことが身についていなければ君はオリビアの相手として失格だ」
「分かりました」
「では近々浩人にはこちらが用意するマンションに移ってもらう。引っ越しの準備をしておいてくれ」
「引っ越しですか?」
「ああ。私のマンションの近くだよ。近くにいた方が通って来るのも楽だろうし、暫定的とはいえ君はドレイクヴァロの幹部の一人としてこちらも扱うからそれなりの場所に住んでもらわないと困る」
「分かりました」
「では明日からの予定を確認しよう」
エドワードはそう言って浩人がこれからすべきことを説明した。




