67 双頭の山猫からの報せ
双頭の朱雀こと十和麗月会の舎弟頭の舘は寝ようとしてベッドに横になった。
その時に携帯電話が鳴る。
名前を確認するとエドワードからだ。こんな夜遅くにエドワードからの電話は珍しい。
舘は少し嫌な予感がしながら電話に出た。
「もしもし。エドか?」
エドワードとも個人的に付き合いがあるため普段はエドワードのことをエドと呼んでいる。
「双頭の朱雀さんですか? 双頭の山猫です」
ところがエドワードは舘のことを「双頭の朱雀」というドレイクヴァロの中での呼び名で呼んだ。
それは仕事の話をする時だ。
舘は身を引き締める。
こんな時間にドレイクヴァロの仕事の関係でエドワードから連絡が来るということはそれだけ重要案件が起こったということだ。
「ああ。双頭の朱雀だ。何かあったのか?」
「ええ。実は双頭の鷲の娘であるオリビアが誘拐されました」
「なんだと!?」
舘は驚いて声を上げる。
「犯人グループは分かっていますがちょっと厄介なことになってましてね」
「厄介なこと?」
「ええ。オリビアを誘拐したのは十和麗月会の三次団体太田組の者です」
舘は十和麗月会の組織に名を連ねている組織名を思い出す。
「確か九条会の傘下の組だったな」
「ええ、そうです。オリビアが九条会本部長の白石の組の若頭と付き合っていることは以前お話しましたよね」
「ああ。そう言ってたな」
「太田組の組長は九条会の若頭補佐をやっていて白石組とは犬猿の仲だそうです。どうやら太田組は白石組を潰す目的でオリビアを誘拐したらしい」
「オリビアが関係あるのか?」
「オリビアを人質にとって波戸場浩人に白石組長の命を狙わせるつもりみたいだね」
「つまり太田組と白石組の抗争に巻き込まれたということか?」
「そうなるね。でも重要なのはオリビアが十和麗月会の人間に誘拐されたということさ。もしオリビアにかすり傷でもつけていたらどうなるか分かるでしょ?」
エドワードの声はどこか楽し気な声だったが舘は背筋がゾッとした。
十和麗月会の人間がドレイクヴァロの総帥の娘を傷つけることになればいくら自分が総帥のアランと仲が良くてもお互いの立場上十和麗月会とドレイクヴァロは敵対することにならざるを得ない。
それどころかオリビアを誘拐した時点でドレイクヴァロから十和麗月会に報復があってもおかしくはない。
「分かった。このケジメは取らせてもらう」
舘はエドワードに返事をする。
「そう。何でも波戸場浩人は明日の夜9時に横浜のA倉庫に来いと言われてるらしいよ。白石組もその時に太田組を襲撃するために組員集めてるみたいだし。こちらからもオリビアの救出作戦に兵隊を出すつもりだから」
「分かった。明日の夜9時がリミットだな」
「現場には双頭の隼も行くらしいからよろしく」
「ああ。分かった」
そこでエドワードとの電話は切れた。
舘は部下を呼ぶ。
「鹿沼会長の家に行く。車を至急準備しろ」
「はい。分かりました」
部下は慌てて部屋を出て行った。
まったく何てことをしてくれるのか。太田組の組長にはケジメをとってもらおう。
それと揉め事を起こした責任として九条会にも制裁が必要だ。
とりあえずこれからのことを会長の鹿沼と相談しなければならない。何が何でもドレイクヴァロと敵対することは避けなければ。
太田組はただ白石組を潰すだけのつもりでオリビアを誘拐したのだろうがこの件は十和麗月会の命運を決める事件だ。
「たく、これだから馬鹿は困る」
舘は深い溜息をついた。




