66 浩人を手に入れる方法
ルーカスはクリスマスイヴということでエドワード夫妻に夕飯に招かれて食事をした後にエドワードの私室でお酒を飲みながらエドワードと雑談していた。
今夜はエドワードの屋敷に泊る予定だ。
そこに慌ただしくキールがやってくる。
「エドワード様。至急のご用件が」
「いったい何だ?今日は双頭の隼もいるんだぞ。静かにしないか」
キールはエドワードに注意されてルーカスを見る。
「申し訳ありません。双頭の隼様」
慌ててキールは頭を下げた。
ドレイクヴァロの次期総帥に失礼があってはいけない。
「かまわないよ。仕事の話なら遠慮なくするがいい」
ルーカスは笑みを浮かべてキールを見た。
「それで何があった?」
「はい。オリビア様が何者かに拉致されたとの報告です」
「なんだと!?」
「それは本当か!?」
エドワードとルーカスが同時に声を上げる。
「詳しく話せ」
「はい。本日オリビア様は波戸場浩人と都内のホテルで夕食を食べていたらしいのですが化粧室に行った後に姿が見えなくなり波戸場浩人が慌ててホテルを出て行ったのでホテルの防犯カメラを調べたところオリビア様が拉致されていたのが映っていたとのことです」
「オリビアがどこに行ったか分からないのか?」
「すぐにオリビア様のスマホのGPSで場所を確認したところ横浜のA倉庫にいることが分かりましたが敵の人数が多く救出するのに応援が欲しいとの報告です」
「犯人は誰だ?」
ルーカスは落ち着いた声で確認する。
敵がどんな相手なのかで対応が違ってくる。ドレイクヴァロの敵は世界中にいるため日本の組織がオリビアを誘拐したとは限らないのだ。
「それが、どうやら十和麗月会の三次団体太田組の人間ではないかとのことです」
「まずいな。オリビアに何かあったら十和麗月会とドレイクヴァロの関係にヒビが入るぞ、ルーカス」
エドワードの言葉にルーカスも頷く。
なぜ太田組がオリビアを拉致したかは分からないが十和麗月会の人間がオリビアに手を出されるのは確かにまずい。
オリビアにもしものことがあればドレイクヴァロと十和麗月会の友好関係が崩れる。それは現総帥のアランが一番嫌うことだろう。
「双頭の山猫様。すぐに双頭の朱雀に連絡を」
ルーカスは双頭の隼としてエドワードに発言をする。
「分かった。双頭の隼はどうするんだ?」
「オルカを出動させます。オリビアを救出する」
「なるほど。では私もコンドルを出動させよう」
「コンドルを貸してくれるのですか?」
ルーカスが若干驚いた顔をした。
それぞれの直属護衛チームは基本的に主人の命令を第一に優先することになっているのでルーカスがエドワードの直属護衛チームのコンドルに命令することはできない。
あくまでコンドルを動かすにはエドワードの命令が必要なのだ。だからルーカスは自分が動かせる「オルカ」だけで対応しようとしたが「コンドル」をエドワードが貸してくれるならさらに心強い。
「今回はオルカとコンドルの混合チームで対応しよう。オリビアを何としても無事に救出しなければならない」
「そうですね」
そこへ今度はロバートがやってくる。
「双頭の隼様。白石組を見張らせている者からの報告で白石組の組員が集合して武装しているとのことです」
「なるほど。他には?」
「はい。白石組にいるスパイから相手は明日の夜9時に白石組長の首を波戸場浩人が持って横浜のA倉庫に来いと言われてるとのことです」
「狙いは白石組の白石組長か……」
白石組にはドレイクヴァロの息のかかったスパイがいる。もちろん白石や浩人は知らないだろう。
ドレイクヴァロのスパイはどこの組織にも入り込んで存在している。十和麗月会だけでも何人もドレイクヴァロのスパイは潜り込んでいる。
「白石組と太田組は犬猿の仲だと聞いている。おそらく白石組を潰すために太田組はオリビアを誘拐したんだろう」
エドワードがそうルーカスに説明するとルーカスは拳を握る。
「そんなくだらない理由でオリビアを誘拐するなんて許せないな。だが……この状況は使えるな」
ルーカスはいたずらを思いついたような顔をした。
「何をする気だ?」
「波戸場浩人をドレイクヴァロが手に入れる口実を考えついたんです。できれば穏便に波戸場浩人をドレイクヴァロに引き取りたいのでね」
どんな危機的状況でも利用できるものは利用せよとルーカスは次期総帥として教えられていた。
オリビアを誘拐した犯人たちは指定された日時まではオリビアを殺すことはないだろう。
人質とは生かしておくことで価値があるのだ。もちろんオリビアが傷つけられていたらその時はドレイクヴァロによって日本の地を血で染めることも厭わないが。
オリビアを無事に助け出せればこの状況を活用して波戸場浩人も手に入れたい。
ルーカスは冷たい笑みを浮かべた。




