59 ルーカスが来日した理由
オリビアは自宅で大学の勉強の復習をしていた。
そこにインターホンが鳴る。
「は~い。どなた?」
オリビアがインターホンに出るとそこには見知った顔の人物がいた。
「やあ、オリビア。俺だよ」
「ルーカス兄様!? どうしてここに?」
「そんなのオリビアに会いに来たに決まってるじゃないか。開けてくれよ」
「ちょっと待って。今、開けるわ」
玄関の鍵を開けるとそこには間違いなく自分の兄であるルーカスがいた。
(なんで、ルーカス兄様が日本に来たのかしら?)
不審に思うオリビアにルーカスは笑顔で話しかける。
「オリビア。久しぶりだね。元気にしてた?」
「ええ。元気よ。とりあえずリビングにどうぞ」
オリビアはルーカスをリビングに通す。
そして二人分のコーヒーを淹れた。
「どうぞ」
「ありがとう」
ルーカスはコーヒーを一口飲む。
「ルーカス兄様は何で日本に来たの?」
「だからオリビアに会うためだろ」
「ふざけないで。そんな理由で双頭の隼が日本に来るわけないじゃない」
ルーカスは双頭の隼としての仕事をしているため忙しいのはオリビアはよく知っている。
それなのに来日したということは何か特別に用事があるということだ。
(まさかと思うけど私とヒロの様子を見に来たんじゃないでしょうね)
自分を昔から溺愛するルーカスならそれぐらいやりかねない。
「そんな。警戒しないでよ。今回はオリビアの彼氏を直に見に来ただけだよ」
「やっぱりそうなのね」
ルーカスは笑顔で言うが目が笑っていない。
浩人のことをルーカスはまだ認めていないのだろう。
(やっぱりそうなのね。ルーカス兄様らしいわ)
「ルーカス兄様。ヒロに変なことしたら怒るわよ」
オリビアはルーカスを睨む。
「まさか。いきなり手を出すことはしないよ。でもオリビアだって波戸場浩人がオリビアと結婚したらドレイクヴァロの幹部になることは知ってるだろう?」
「それは……」
「俺はその素質が波戸場浩人にあるか見定めるために来たんだよ。双頭の隼としてね」
そう言われるとオリビアも反論できない。
ドレイクヴァロの幹部になるためには高い教養と知識、それに何事にも動じない精神力が必要とされる。
オリビアも浩人ならドレイクヴァロの幹部になれる素質を持っていると思うが今の浩人のレベルではまだ幹部になるには実力不足だ。
しばらくは幹部になるための勉強が必要だろう。
「ルーカス兄様の言い分は分かったわ。今回はヒロに会いに来たのね」
「ああ。そうだよ。波戸場浩人に会わせてくれるかい?」
「いいわよ。ヒロの予定を聞いてみるわ」
(仕方ないわね。でもヒロがドレイクヴァロで働くにはルーカス兄様にも納得してもらわないとなのは本当のことだもんね)
オリビアは浩人に電話をかける。
「もしもし、オリビアだけど」
「オリビアか。何か用事か?」
「実は今、アメリカから私の兄が来ているの」
「オリビアの兄さん?」
「そう。兄がヒロにどうしても会いたいらしいの。予定が空いてる日はない?」
「それならこれからでもかまわないが」
「ホント? じゃあ、私のマンションに来てくれる?」
「分かった。これから向かう」
オリビアは電話を切った。
「これからヒロが来るって」
「そうか。それは楽しみだな」
「ルーカス兄様。ヒロに変なことしないでよ」
オリビアはルーカスに釘を刺す。
浩人にルーカスが失礼な態度をとって浩人が不機嫌にでもなったら大変だ。
ジトッとした目でルーカスを見るとその視線の意味を知ってるだろうにルーカスが気にする様子はない。
「変なことなんてしないさ。ちょっと話をするだけだよ」
ルーカスはコーヒーを飲みながらニコリと笑みを浮かべた。
「オリビアの兄か。ということはマフィアの人間だな」
オリビアから電話をもらった浩人は車を運転しながらオリビアのマンションに向かう。
以前「父親の跡は兄が継ぐ」とオリビアは言っていた。
「跡継ぎを見ればどんなマフィア組織か分かるかもしれないな」
浩人はそう呟きながら車を走らせる。
これから自分がおそらく生涯働くことになるマフィア組織のボスの後継者だ。
どんな人物か浩人も興味があった。
組織は上に立つ者で変わったりする。
(できれば筋の通った漢だといいんだが……)
浩人は車のスピードを上げた。




