52 銀の豹の後継者
オリビアは大学が終わり自宅まで徒歩で帰っている最中だった。
「オリビア!」
突然名前を呼ばれてオリビアは振り返る。
そこには金髪に青い瞳の青年が立っていた。
「レナード?」
オリビアは突然のレナードの出現に驚いた。
レナードはオリビアの親戚だ。
オリビアの父のアランとレナードの母のジェシカはイトコに当たる。
レナードはまだ20代だが医者として活躍している。
「久しぶりだね。オリビア」
「なぜレナードが日本にいるの?」
オリビアが不審そうに尋ねるとレナードは笑顔で答える。
「実は俺、今度『銀の豹』の後継者に選ばれたんだ。それで今後継者の挨拶のために各地域リーダーのところを回っているのさ。日本には黒の鷹がいるからね」
「まあ、銀の大叔母様の後継者になるの?」
「うん。銀の豹はブラックウェル一族の者しかなれないからさ」
銀の豹とはシンガポールを拠点にして東南アジアやオセアニア地域を担当している地域リーダーだ。
現在の銀の豹はアランの叔母に当たる人物が務めているが高齢になってきたため次の後継者を誰にするかという課題があったのをオリビアは思い出した。
銀の豹は代々ブラックウェル一族の者がなることが決まっている。
それは銀の豹がドレイクヴァロの重要な仕事を任されているからだ。
銀の豹の治める東南アジアの国々は決して裕福な国ではない。それ故か麻薬になる大麻草を栽培して売る組織が多い。
国も分かっていてそんな組織のことを放って置いている。
そしてドレイクヴァロでは『麻薬』は取り扱わないが唯一の例外で銀の豹が大麻草を売る組織から大麻草を通常の2倍の値段で各組織から買い上げている。
その大麻草をどうしているかというと焼却処分しているのだ。
それは先代のクラウド総帥が決めたことで「作るなと言っても作るなら作らせておいて処分すればいい」と言ったそうだ。
東南アジアの各組織はお金が入れば文句は言わない。なのでドレイクヴァロに大麻草を売ってくれる。
ドレイクヴァロはそれを高値で買い取る条件として他の組織には大麻草を売らないことという契約を組織と結んでいる。
これに違反した組織はドレイクヴァロによって始末されるのだ。
大麻草を栽培している組織も馬鹿ではない。
ドレイクヴァロに従ってドレイクヴァロに大麻草を売れば通常より高値で売れるのだからほとんどの組織がドレイクヴァロに大麻草を売る。
そしてドレイクヴァロはその大麻草を焼却処分する。
その仕事の内容はドレイクヴァロの中でも特別な秘密なのでそこを治める銀の豹はブラックウェル一族から選ばれることになっていた。
ドレイクヴァロでご法度とされる大麻草を扱うためもっとも信頼のできる人物でなければ銀の豹にするわけにはいかない。
元々ドレイクヴァロが『麻薬』を取り扱わない理由は初代ドレイクヴァロの総帥の遺言だからとオリビアは聞いている。
初代総帥は「どんなことをやろうとかまわないが麻薬だけは手を出すな」と言ったらしい。
代々の総帥はその言葉を守りさらにこの世界から少しでも『麻薬』を減らすための活動をしている。
それがドレイクヴァロが普通のマフィア組織と大きく違うところだ。
なぜならドレイクヴァロの目指す『ドレイクヴァロの夢』に麻薬は必要ないからだ。
「そうなの。レナードが銀の豹になるなら安心ね」
「ありがとう。これからもドレイクヴァロのために働くよ」
「頑張ってね。レナード」
「うん。オリビアは今は留学中だよね? 大学生活は順調かい?」
「ええ。日本の生活は楽しいわよ。彼氏もできたし」
「え? 彼氏?」
「そうよ。日本の極道している波戸場浩人って人よ。とてもいい人よ」
「へえ、そうなんだ。今度紹介してよ」
「機会があったらね」
「うん。じゃあ、俺は仕事に戻るから」
「分かったわ。またね」
「うん。またね」
レナードはオリビアを抱き寄せ額に親愛のキスをする。
そしてレナードは近くに停めてあった車に乗り込む。
オリビアはレナードに手を振って見送った。
(レナードも銀の豹になるなんて大変ね。でもレナードは優秀な人物だから適任よね)
レナードの車が見えなくなるまでオリビアは手を振り続けた。
その様子を建物の影から見ていた人物がいたがオリビアが気付くことはなかった。




