51 オリビア襲撃の黒幕
エドワードが仕事をしているとパソコンがピピピッと鳴った。ドレイクヴァロ幹部専用のパソコンである。
誰かがエドワードに通信をして来たのだ。エドワードはパソコンを開けて通信を繋ぐ。
やがて画面に黒の鷹の姿が現れた。
「双頭の山猫様。報告したいことがあります」
「クロか。どんな報告だ?」
「はい。先日捕まえたなまはげから雇い主の情報を手に入れました」
「ほお。誰だったんだ?」
エドワードは緑の目を細める。
「はい。踊り子となまはげを雇ったのは香港マフィアのサイラス・マオンという男です」
「香港マフィア? なぜそんな奴らがオリビアを襲ったんだ?」
「はい。調査の結果、そのサイラスという男の組織は脅征威連合へ武器を販売していました」
「脅征威連合に?」
エドワードは脅征威連合の情報を思い出す。
確か最近脅征威連合は会長が代替わりしたと聞いていたが。
「はい。サイラスは武器商人です。おそらく脅征威連合と結託して十和麗月会とドレイクヴァロの関係を壊すのが目的だったのではないかと」
「どういう意味だ?」
「なまはげたちにはオリビア様を殺害する時に条件を出されたようです。必ず波戸場浩人とオリビア様が一緒の時に襲撃し波戸場浩人は殺さないようにせよと」
「なるほど。そう言うことか」
そのサイラスって男はオリビアの殺害を波戸場浩人が殺害したように見せかけたかったということだ。
確かに波戸場浩人がオリビアを殺害したら十和麗月会とドレイクヴァロの関係は壊れるだろう。
波戸場浩人は十和麗月会の人間なのだから。
さすがにドレイクヴァロも総帥の娘を殺した相手が所属していた組織と良好な関係を保つのは難しい。
そこを脅征威連合が狙ったということなら頷ける。
昔から脅征威連合は十和麗月会と抗争してきた歴史があるからだ。
「黒幕は脅征威連合か?」
「新しい会長の安木は反十和麗月会の思想の持ち主だということは分かっています。会長が代替わりしてのこのタイミングでの襲撃を思えば黒幕は安木会長かと」
「なるほどな。おそらくクロの言うことは間違いないだろう」
「いかがいたしましょうか?」
エドワードは少し考えて答える。
「そのサイラス・マオンの所属する香港マフィア組織は壊滅させろ。組織に属する者は皆殺しだ」
「はい。分かりました」
「脅征威連合の方は安木会長の首を取れ。方法はクロに任せるが安木会長を殺したのはドレイクヴァロだと気付かせるな。事故を装え」
「事故に見せかけるのですね?」
「ああ。脅征威連合を潰すと日本の極道のパワーバランスが崩れる。それは避けたい」
脅征威連合を潰すのは簡単だがエドワードとしても無駄に日本の裏社会のパワーバランスが崩すのは得策ではないと判断する。
「分かってると思うが虫は一匹でも残すとまた増える。サイラス・マオンの組織は徹底的に排除しろよ」
「はい。承知いたしております」
黒の鷹は口元に僅かに笑みを浮かべる。
「何か言いたそうな顔だな、クロ」
「いえ、双頭の山猫様が先代の双頭の龍様に似ているなと思っただけです。失礼いたしました」
双頭の龍とはエドワードの父親の先代ドレイクヴァロ総帥のクラウドのことだ。
クラウドは裏社会で『魔王』と呼ばれた人間だ。
「双頭の龍に似ていると言われるのは褒め言葉と受け取ろう。だけど今の総帥の双頭の鷲の方が双頭の龍より遥かに怖いと私は思っているが」
エドワードは自分の兄のアランのことを思い出す。
アランは身内には優しい。
だがそれはドレイクヴァロに従っているという条件が付く。
たとえ身内でもドレイクヴァロに必要ない、もしくはドレイクヴァロを裏切るなんてことをしたらエドワードでも命はないだろう。
「承知いたしております。双頭の鷲様のお力は双頭の龍様を既に超えていらっしゃると私も思います」
「フッ、それが分かっているならお互いに自分の命は大事にしないとな」
エドワードも笑みを浮かべる。
だが別にエドワードも黒の鷹も総帥のアランが怖くて従っている訳ではないのはお互いに分かっていた。
アランはカリスマと呼ぶに相応しいほど人を魅了する漢なのだ。
この漢の創る世界を共に見たいと思わせる強烈な存在感を放ちドレイクヴァロの幹部たちはそれに魅了されてしまっている。
だからこそ普通のマフィア組織とは比べようもない固い結束で組織は運営されていた。
「はい。双頭の鷲様にお仕えできることは喜び以外の何ものでもありません」
「私もだよ。兄の役に立つことは私の生きる全てだからね」
「では双頭の山猫様の指示通りにさせてもらいます」
「ああ、よろしく」
黒の鷹との通信は切れた。
「そうとも俺はアラン兄さんの役に立つ人間であることが俺の人生そのものなんだから」
エドワードにとってアランは子供の頃から尊敬と憧れを抱いた存在だった。
アラン兄さんに少しでも近付きたい。役に立つ人間になりたい。
そう思ってエドワードは努力してドレイクヴァロのナンバー2の地位を手に入れた。
全てはあの兄のため。
エドワードはアランに自分の全てを差し出してもいいと思っている。
それはアランが持つ強烈なカリスマ性のせいかもしれないが別に理由などエドワードは知ったことではない。
「ブラコン」と笑う者は笑ってもかまわない。
そういう奴らもアランに会えば魅了されていくに違いないからだ。
自分の兄がドレイクヴァロの総帥として君臨する限りエドワードはドレイクヴァロの為に全力で働くだろう。
それこそがエドワードの幸せなのだから。




