49 ドレイクヴァロとの関係
十和麗月会の臨時幹部会が開かれた。
招集された幹部たちは何事が起ったのかと緊張した顔だ。
そこへ十和麗月会六代目会長の鹿沼と舎弟頭の舘が部屋に入って来る。
幹部は皆立ち上がり二人に頭を下げた。
鹿沼は席に着くと皆に「座れ」と指示する。
「これから十和麗月会の臨時幹部会を開く」
鹿沼がそう言って幹部の顔を見渡す。
皆は息を呑んで鹿沼の次の言葉を待つ。
「忙しいところ集まってもらってすまぬな。実は最近脅征威連合が不審な動きを見せているとの情報が手に入った」
「脅征威連合ですか? 最近は大人しくしていると思いましたが」
幹部の一人がそう言うと鹿沼は頷く。
「確かに。ここ最近は脅征威連合も昔のように十和麗月会にちょっかいを出してくるようなことはなかったが今の安木会長に代替わりしてから水面下で十和麗月会の情報を集めているらしい」
「本当ですか?」
「確かなスジからの情報だ」
鹿沼の代わりに舎弟頭の舘が答える。
舘がドレイクヴァロの総帥と親密な関係にありドレイクヴァロから『双頭の朱雀』の称号を貰っていることは十和麗月会では有名な話だ。
その舘が情報源と言うのなら間違いない情報だろう。
世界の情報を牛耳っているドレイクヴァロが舘の後ろには控えているのだから。
「それで我々を集めたのはなぜですか?」
「ああ。脅征威連合が何をしようとしているのかはまだ分からない。なので各自でいつでも脅征威連合に対応できるように準備だけはしていてもらいたい」
「承知しました」
幹部たちは皆頷く。
「それと何か脅征威連合の動きを掴んだらすぐに報告しろ」
「分かりました」
「では今日の幹部会は以上だ」
鹿沼がそう言って臨時幹部会は終了した。
鹿沼と舘は部屋を出て二人で別の部屋に行く。
鹿沼は舘と二人になるとタバコに火を点けた。
「今回の情報は双頭の鷲殿からの情報で間違いないな?」
「はい、会長。脅征威連合が武器を集めているとのことは間違いないとのことです」
「ふう。せっかく生かしてやってるのにいつまでもうるさい奴らだな」
鹿沼は過去の脅征威連合との対立の歴史を思い出す。
正直鹿沼が会長に就くまでは脅征威連合は十和麗月会とも対等な程の力を持っていたがそれも舘とドレイクヴァロの総帥との親密な関係のおかげで今では十和麗月会の方が勢力は上だ。
十和麗月会としては脅征威連合を潰すとの選択もあったのだが組織は巨大になり過ぎてもコントロールが難しくなる。
なので鹿沼は脅征威連合を敢えて潰すことはしなかった。
もちろん実際に全面戦争になれば十和麗月会の方もある程度の犠牲が出るのが分かっているから無駄に自分の組織の人間を死なせたくないという思いもあった。
「しかし会長。脅征威連合も馬鹿じゃない限り表立って争いをする気はないと思いますが」
「まあな。負け戦は仕掛けねえだろうよ。だがそうすると逆に何をしでかすか分からねえ」
「そうですね。用心に越したことはないでしょうね」
鹿沼の言葉に舘は頷く。
「そういえば双頭の鷲殿の娘が今留学して日本にいるというのは本当か?」
「ああ。そうらしいですね。こないだ双頭の山猫が言ってました」
「ふむ。まあ、何事もなく留学期間が終わってくれればいいがな」
鹿沼はタバコの火を消した。
「ドレイクヴァロを敵に回すことは何があっても避けなければならない。ドレイクヴァロとはお互いの組織に口は出さないとの約束だが実際はドレイクヴァロがこちらに協力してくれて助かってるからな」
「ええ。今やドレイクヴァロは名実ともに世界最大のマフィア組織ですからね」
「そうだな。あのアランの坊やが『魔王』と呼ばれた父親の跡を継いでからさらにドレイクヴァロは勢力を大きくしたからな。いったいどこまで巨大な力になるやら」
鹿沼も昔個人的にアランと会ったことがある。
その時はドレイクヴァロの総帥の息子だとは知らなかったが。
そして舘とアランは兄弟盃を交わした仲だ。
舘とアランは若い頃にお互いの正体を知らぬまま武術を通して交流を持っていた。
それがきっかけで兄弟盃を交わすことになったのだ。
だが普通の兄弟盃とは違い二人の個人的な繋がりを深めるためだけのものということで十和麗月会とドレイクヴァロはお互いの組織には干渉しないという取り決めをした。
それでもアランは事あるごとに十和麗月会へ舘を通して情報を流してくれるのだ。
十和麗月会としてはありがたい存在だ。
「ドレイクヴァロの夢が叶うまでドレイクヴァロの成長は止まらないでしょう」
「ドレイクヴァロの夢?」
「ええ。これはドレイクヴァロの幹部しか知らないモノなので会長にも言えませんが」
舘は僅かに口元に笑みを浮かべる。
ドレイクヴァロからアランの相談役として双頭の朱雀の地位を貰っているの舘がドレイクヴァロの幹部しか知らない情報も知っていても不思議ではない。
「まあ。あのドレイクヴァロが目指す夢なら途方もない夢なんだろうな」
舘は無言のままだ。
鹿沼は二本目のタバコに火を点けた。




