47 浩人からの愛の言葉
浩人はシャワーを浴びて髪をタオルで拭きながらオリビアの寝室に来た。
オリビアはベッドに横になってる。
「オリビア?」
浩人がオリビアに近付くとオリビアはベッドで熟睡していた。
「ここで先に寝るか、普通」
オリビアの寝顔を見ながら浩人は呆れて呟いた。
だが幸せそうなオリビアの寝顔を見ると起こす気にはならない。
「やれやれ、またお預けか。極道相手にいい度胸してるな、オリビア」
浩人はオリビアの髪を撫でながら言う。
撫でられたのが気持ち良かったのかオリビアの口がふにゃりと笑みを浮かべる。
その様子に思わず浩人も苦笑した。
(だけどこれでいいのかもな……)
浩人はオリビアの横に寝た。
オリビアは熟睡しているようで全然起きる気配はない。
そっとオリビアの額にキスをする。
浩人のオリビアに対する気持ちは強い。
自分が極道から足を洗うことを考えるほどに。
けれど白石には恩がある。
自分の都合だけで足を洗ってもいいものか。
浩人にはまだ迷いがあった。
そして本能的に迷いがあるうちはオリビアを抱くべきではないと浩人は感じていた。
オリビアは禁断の果実。
一度味わってしまえば元には戻れない。
そんな予感がするのだ。
「まあ、お前が何者でも俺はお前を愛してるよ。オリビア」
眠っているオリビアに浩人の本音がでる。
まるでその声が聞こえたようにオリビアは寝ながら再び幸せそうな笑みを浮かべていた。
その様子に浩人の心も温かい気持ちになる。
宝物を抱き締めるようにオリビアを抱きしめると浩人も眠りについた。
オリビアは目を覚ました。
「う~ん」
そして体が動かないことに気付く。
(なんだろう……)
寝ぼけながら自分を拘束する何かを確認した時にまたしてもオリビアは悲鳴を上げるところだった。
オリビアはベッドで浩人に抱きしめられながら寝ていたのだ。
「え!? 私はどうなったんだっけ!?」
オリビアは昨夜のことを思い出すと自分の失態に気付いた。
眠気に襲われてベッドに横になったまでの記憶はあるがその後の記憶がない。ということは浩人をベッドで待っているうちに眠ってしまったのだ。
(なんてこと! せっかくのヒロとの夜が……)
ショックを受けるオリビアが身動きをしたせいか浩人が目を覚ました。
気怠い感じを隠しもせずに浩人はオリビアを見つめる。
普段は感じない大人の男の色気を感じてオリビアの心臓はドキドキが止まらない。
(ど、どうしよう! ヒロが恰好良過ぎるんだけど!)
心の中であたふたするオリビアに浩人が声をかける。
「オリビア。おはよう」
「おはよう、ヒロ。あ、あの、ごめんなさい!」
オリビアは反射的に浩人に謝っていた。
「何がごめんなさいなんだ?」
「だって、だって、せっかくの二人の夜に先に寝てしまって何もなかったなんて……」
オリビアは顔を赤くしながら説明する。
その様子から見てもオリビアに男性経験がないことが浩人にも分かった。
その可愛さに思わずこのままオリビアを襲ってやろうかと思ったがグッと浩人は我慢した。
そして優しくオリビアの体を抱き寄せてキスだけをする。
唇はすぐに離れた。
浩人は真剣な表情でオリビアの緑の瞳を真っすぐに見て昨夜自分自身に誓ったことをオリビアに宣言した。
「俺はオリビアと結婚するまでオリビアを抱かない」
「え?」
オリビアは浩人からの突然の言葉に面食らう。
抱かないと言われたのも驚いたが浩人から「結婚」の二文字が出たことに驚く。
「オリビアは前に言ってたろ? 自分と結婚するなら父親の会社で働かないといけないって」
「ええ。そうね……」
「極道が足を洗うのはいろいろと大変なんだ。それに白石の親父には恩もある。だから俺が組を抜ける決心がつくまで少し時間が欲しい」
「ヒロ……」
浩人の真剣な顔を見ているとそれがどれだけ浩人にとって重い決断なのかが伝わってくる。
「俺はお前を愛してる……たとえお前が何者でもな」
浩人の言葉にオリビアは涙が出てきた。
ようやく浩人から「愛してる」と言われた。
自分が何者でも浩人は受け入れてくれるらしい。
しかも結婚も考えてくれている。
それならオリビアの正体をここで話してもいいだろう。
自分の正体を知っても今の浩人なら受け入れてくれるはずだ。
意を決してオリビアは自分の正体を浩人に打ち明けた。
「あ、あのね、ヒロ。私はマフィアの娘なの」
「え? マフィア?」
「そうなの父は総帥をやっていて。だから私と結婚しても裏社会とは縁を切れないわ」
むしろドレイクヴァロに入ったら今度は世界のマフィアたちを相手にしなければならない分、今より危険な身になるだろう。
その世界に浩人を巻き込むことに多少の不安はあるがオリビアの両親は数々の困難を二人の愛で乗り越えたと聞いている。
両親にできてオリビアと浩人にできないことはないはずだ。
「そうか……マフィアか。それで命を狙われていたのか」
浩人は納得した表情をした。
マフィアも極道のように対立組織と争うことは日常茶飯事だろう。
オリビアがマフィアのボスの娘なら命を狙われるのも当然だと言える。
「それならなおのこと、俺が組を抜けてオリビアのお父さんのマフィア組織で働く決心がつくまで待って欲しい」
「分かったわ。ありがとう、ヒロ」
浩人が自分との将来のことを真剣に考えてくれていることにオリビアの身体は喜びに震えた。
あまりにもそのことが嬉しくてオリビアは気付いていなかった。
自分がマフィアの娘と正体を明かしたことで浩人に全てを話した気になってしまっていた。
オリビアの父のマフィア組織がただのマフィア組織ではなく世界最大のマフィア組織『ドレイクヴァロ』だとこの時浩人に言い忘れていたことに。




