44 なまはげの襲撃
ハロウィンパーティーも無事終わり季節は11月に入った。
今日もオリビアは白石組の組事務所に来ている。
「お前も飽きずによく来るよなあ」
浩人が目の前に座っているオリビアに言うとオリビアは不思議そうな顔をした。
「好きな人に会いに来るのに何で飽きるの?」
「だから! その好きって言葉は皆の前で言うな!」
事務所内には他に京介を始め組員たちがいる。
皆、浩人を生温かい目で見ていた。
(たく、俺の立場も考えろよ……)
オリビアは浩人が好きということを事あるごとに口にする。
もはやオリビアと浩人は結婚秒読み段階と誤解している奴もいるぐらいだ。
「兄貴だってオリビアさんが来る時間帯になると窓から外を見てるじゃないっすか」
京介はにやけながらオリビアにバラす。
「え、そうなの?」
「京介。お前、後でシメルからな」
「すみませんでした、兄貴! 勘弁してください!」
ジロリと浩人に睨まれて京介の泣きが入る。
その時テレビで都内の銀杏並木の紅葉の話題が流れてきた。
「あら、綺麗な紅葉ね。ヒロ、紅葉見に行かない?」
オリビアはテレビを見ながら浩人を誘う。
「ああ、そろそろ季節だな」
「行きましょうよ。そんなに遠くない場所でしょ?」
「ん? そうだな。じゃあ、ちょっと行ってみるか」
今日は急ぎの仕事は無いし浩人は手持ち無沙汰だったのでオリビアの誘いに乗ることにした。
「じゃあ、行きましょう」
「ああ。京介。留守は頼んだぞ」
「はい。兄貴。分かりやした」
京介は元気よく返事をする。
浩人とオリビアは事務所から歩いて紅葉の見える場所まで向かう。
「久しぶりにヒロと街を歩くわね」
「ん? そういえばそうだな」
前にナイフを持った女にオリビアが襲われてからしばらく浩人はオリビアと街を歩くことはしていなかった。
結局誰がオリビアの命を狙い誰がその刺客を銃で狙撃したのかは分からずじまいだった。
犯人がまた襲撃してこないとも限らないので警戒は続けているがこうやってオリビアと街を歩くだけでも浩人の心は和む。
(俺もこいつと出会ってから変わったかもしれねえな)
心で呟きながらオリビアと一緒に歩いて行く。
二人は銀杏並木のある場所の近くの交差点まで来た。
青信号になったので横断歩道を渡る。
横断歩道を渡れば銀杏並木の歩道だ。
オリビアは早く見たくて浩人より先に横断歩道を渡り始めた。
「ヒロ! 早く早く!」
「おい。オリビア。そんなに急がなくても……」
その時一台の車が猛スピードでオリビアに向かって突っ込んで来た。
「オリビア!!」
浩人はとっさにオリビアに抱きつき道路に転がる。
間一髪で車は浩人たちの横をすり抜けて行きそのままどこかに走り去った。
「大丈夫か!? オリビア」
「ええ」
浩人は自分の腕の中にいるオリビアに声をかけたがオリビアは無事なようだ。
(今の車は確実にオリビアを狙っていたな。クソ! いったいどこの誰がオリビアを狙っているんだ!)
ブレーキを一切かけずに走り去った車が消えた方角を見る。
普通は人を轢きそうになったらブレーキを踏むはずだ。しかし今の車はブレーキを踏む気配がなかった。
それは故意にオリビアを轢き殺そうとしたということだ。
「ヒロは大丈夫?」
オリビアは立ち上がりながら浩人に声をかける。
「ああ。大丈夫だ」
浩人も立ち上がった。
「お前といると寿命が縮むな」
「ごめんなさい。ヒロ。また迷惑かけてしまったわ」
オリビアはシュンとなって落ち込む。
自分が何者かに狙われていることの自覚はオリビアにもあるが浩人の身を巻き込むことは本意ではない。
「かまわねえよ。お前が無事なら」
(何度オリビアが狙われようが俺が守ってやるさ)
浩人はオリビアの頭を撫でながらそう誓った。
二人が銀杏並木の歩道に辿りついた時に道路に停めてあった車が動き出す。
車に乗っているのは黒の鷹だった。
「オリビア様は無事だったか……波戸場浩人っていう人物が優秀で助かる。さてなまはげを追うか」
さっきの車での襲撃は予測されていたもので現在黒の鷹の部下がオリビアを襲った車を上空のヘリで追跡している。
オリビアが本当に危なかったら黒の鷹はなまはげの運転する車のタイヤを銃で撃つつもりで準備していたが波戸場浩人がオリビアを庇ったのを確認して撃つのは止めた。
エドワードからはなるべくオリビアや波戸場浩人には気付かれずになまはげを始末しろと言われている。
なまはげの車の位置は黒の鷹のスマホに位置情報が送られてきていた。
黒の鷹はそれを見ながら車のスピードを上げた。




