36 ハロウィンパーティーの想い出
オリビアは街を歩いていた。
街のショーウィンドーにはハロウィンが近いせいかハロウィングッズが並んでいる。
「可愛いわねえ。そういえばもうすぐハロウィンか」
オリビアはかぼちゃの飾り物を見ながら昔を思い出す。
オリビアの父親はドレイクヴァロの総帥をしていたから敵組織からの襲撃を警戒してアメリカ国内を転々と居場所を変えて生活していた。
母も父について行っていた。
シカゴの本宅にいたのは兄のルーカスとマテオとオリビアだけ。
毎年ハロウィンになると兄たちと仮装パーティーをやった。
毎回ではなかったがそのハロウィンの時は両親が本宅に帰ってきて家族でハロウィンパーティーを開いたこともある。
オリビアにとって数少ない家族全員と過ごした大切な楽しい想い出だ。
父親はどうしても仕事の都合がつかないこともあったが母親はハロウィンパーティーのためだけに本宅に帰ってきたこともある。
オリビアにとってハロウィンとは親に会える数少ない機会だったのだ。
幼い頃はなぜ両親が留守がちなのか疑問に思っていたがドレイクヴァロの仕事を勉強するようになり父の多忙さが分かった。
ドレイクヴァロでは各地に地域リーダーを置いて組織運営している。
基本的に地域リーダーはその地域に関するドレイクヴァロの取引の権限を与えられているのだが、ある一定金額以上の契約や案件に関しては総帥の双頭の鷲の許可を取る必要があるのだ。
そのため総帥の父の元には地域リーダーからの連絡が常に入る。ドレイクヴァロの組織は世界規模のため時差など関係ない。
双頭の鷲に休みはなく常に24時間体制で仕事を受け入れているためその多忙さは凄まじい。
なので総帥になるためにはその激務に耐えられる底なしの体力も要求される。
だからブラックウェル本家では幼い頃から武術で体を鍛えることが奨励されていた。
もちろん自分の身を守るという意味もあるが本当の理由は丈夫な身体作りが目的だ。
オリビアも幼い頃から武術を習ってきた。それだけではなく銃の扱いや戦闘技術も叩き込まれた。
オリビアの兄たちもそんな生活をしていたからその時は自分の家が特別だとはオリビアは最初思わなかった。
それにドレイクヴァロの総帥には総帥の子供が選ばれるとは限らない。
ブラックウェル一族の者の中で最も総帥に適した実力を持つ者が選ばれる。
だから成長してルーカスが次期総帥の指名を受けるまでオリビアも総帥になる可能性はあったのだ。
今はルーカスが次期総帥に指名されたのでオリビアは少し気楽になった。
しかし自分がドレイクヴァロの総帥の娘であることは変わらないし、次期総帥の妹であることも変わらない。
それ故にオリビアの結婚相手は吟味されるのだ。
「ハロウィンパーティーやりたいけど、ヒロと二人でやるのもちょっと寂しいわよね」
ハロウィンパーティーは大人数でやった方が盛り上がる。
「そうだ。いいこと思いついたわ!」
オリビアはにこやかな笑顔を浮かべると白石組の組事務所に向かった。
「ハロウィンパーティー?」
浩人が怪訝そうにオリビアを見る。
場所は白石組の事務所の中だ。
側には白石組長もソファに座っている。
オリビアは組事務所に来るなり「皆でハロウィンパーティーしましょ?」と発言したのだ。
「どこの世界にハロウィンパーティーやる極道がいるんだよ!」
(こいつは馬鹿なのか!)
浩人が大きな声で言ってもオリビアは動じない。
「あら、極道がハロウィンパーティーやったら警察に捕まるの?」
「うっ……そんなことはねえが面子ってもんがあるだろ!」
「ハハハ、ハロウィンパーティーかあ。別にオリビアがやりたいならいいんじゃないか?」
白石は笑いながら浩人に言う。
「組長! オリビアを甘やかさないでください!」
「いいじゃないか、浩人。その日は特に急ぎの仕事は入ってないだろう?」
「た、確かに予定は空いてますが」
「だったら問題ないだろう。私も仮装パーティーには興味がある」
(親父の場合はアイドルナ〇トの仮装したいだけでしょうが!)
浩人は喉まで出かかった言葉を飲み込む。
「俺も賛成しますよ。仮装した飲み会だと思えばいいんじゃないっすか?兄貴」
京介までオリビアの意見に賛成する。
「お前なあ……」
「浩人。準備はオリビアと浩人に任せるから今年はハロウィンパーティーやるぞ」
白石の鶴の一声でハロウィンパーティーをやることが決定してしまう。
(マジか……)
浩人は脱力したがオリビアと白石はどんな仮装にしようか盛り上がっている。
(オリビア……。こいつはもしかしたらとんでもねえ大物かもしれん)
九条会の本部長として泣く子も黙ると言われた白石を手なずけ、しかも京介を始め組員もいつの間にか味方につけるとは。
「ヒロ。ヒロは何の仮装したい?」
「……別に何でもいい」
「そう。じゃあヒロの仮装も私が考えてあげるわ」
オリビアは笑顔で浩人に答えた。




