34 地域リーダーの黒の鷹
黒の鷹はドレイクヴァロの所有するビルにやって来た。
黒の鷹は日本や中国、韓国などを支配下に置くドレイクヴァロの地域リーダーの一人だ。本拠地は中国にある。
地域リーダーはその支配下にある地域で起こったことに対して全責任を持つ立場だ。
今日は双頭の山猫であるドレイクヴァロのナンバー2のエドワードに呼び出されて来た。
黒の鷹は現在50代後半の黒髪に黒い瞳だ。
若い頃は「アビスブレイド」という殺し屋だったが先代のクラウド総帥の時に紆余曲折を経て黒の鷹となった。
その後エドワードが双頭の山猫として日本に移住することが決まったので黒の鷹の本拠地は中国だが最近は日本にいることが増えた。
日本でエドワードに何かあれば黒の鷹の責任も問われる。
ドレイクヴァロでは総帥の一族を危険に晒すことは最も重い罪とされている。
黒の鷹はビルに入るとエドワードがいる部屋まで来て扉を叩く。
「誰だ?」
「双頭の山猫様。黒の鷹です」
「入れ」
入室許可を得て黒の鷹は部屋に入る。
「クロ。忙しいところ呼び出して悪かったな」
「いえ。双頭の山猫様のためならいくらでも予定を空けますよ」
「それは助かる」
エドワードは執務机の椅子から立ち上がりソファへと移動する。
「クロも座れ」
「はい。失礼します」
黒の鷹もソファに座った。
エドワードの秘書兼ボディーガードのキールが二人分の紅茶を淹れてくれる。
「今日の御用はなんですか? 双頭の山猫様」
「うん。今双頭の鷲の娘であるオリビアが日本に留学中なのは知ってるだろ?」
「はい。存じております」
黒の鷹は頷く。
「オリビアに彼氏ができたらしくてさ。相手は十和麗月会の三次団体の白石組の若頭をやっている波戸場浩人って男だ」
「十和麗月会の? そうでしたか」
「俺は波戸場浩人に会ったがなかなか使えそうな男だと感じた。だがオリビアの恋がこれからどうなるかは分からない」
「そうですね。オリビア様のお相手となるとドレイクヴァロとしても重要人物ですね」
「そうなんだ。俺の部下も監視にはつけてるけど、クロもオリビアの動向に気を配って欲しいんだ」
「分かりました」
黒の鷹はエドワードに返事をする。
もしオリビアに何かあったら黒の鷹も双頭の鷲に申し開きができない。
「だがあくまで秘密裏に頼む。オリビアの留学中は本人の意思を尊重したいんだ」
「なるほど。承知しました」
「ではよろしく頼む」
「はい」
黒の鷹はエドワードに一礼すると部屋を出た。
「飯でも食べるか?」
浩人は本日の仕事を終えて組事務所に来ていたオリビアを連れて外に出る。
「そうね。お腹空いたわ」
オリビアが返事をする。
「じゃあ、近くのイタリアンレストランに行こう」
「ええ。分かったわ」
二人は組事務所の近くのイタリアンレストランに入る。
注文を済ますとオリビアが白石組長がお土産を気に入ってくれたことを嬉しそうに話す。
浩人もオリビアの話を聞きながら料理が来るのを待つ。
浩人たちから少し離れた席に外国人が一人座っていた。
「オリビア・ブラックウェルか。白石組の組員と仲がいいとは好都合だな」
その外国人はサイラスだった。
脅征威連合から十和麗月会とドレイクヴァロの繋がりを壊すように依頼されている。
サイラスは浩人たちを確認した後に会計を済ませてレストランを出る。
サイラスの部下が車で待っていた。サイラスが車に乗り込むと車は発車する。
「いかがでしたか?サイラス様」
部下の言葉にサイラスは笑みを浮かべる。
「いい作戦を思いついたよ。オリビア・ブラックウェルには可哀想だが犠牲になってもらおう」
「ドレイクヴァロの総帥の娘を殺るんですか?」
「そうとも。でも犯人は私たちではない。オリビアを殺したのが波戸場浩人ってことにすればいい。白石組は十和麗月会の三次団体だ。十和麗月会の者が娘を殺したことになればドレイクヴァロも黙ってはいまい」
「なるほど。それで十和麗月会とドレイクヴァロは対立するというわけですね」
「そういうことさ。実行犯には殺し屋を雇おう」
「分かりました。手配します」
「ああ、頼む」
サイラスの調査でオリビア・ブラックウェルが日本に留学中なのを知ってオリビアについて調べていたのだ。
その情報を得るだけで優秀な情報屋を何人か失った。ドレイクヴァロに気付かれて始末されたのだ。
だがようやくオリビアの情報を掴むことができた。多少の犠牲は仕方ないだろう。
サイラスは武器商人だ。しかしドレイクヴァロの勢力に押されて商売は難しくなっている。
日本での武器密売のルートが手に入ればサイラスの組織も大きくなる。
サイラスは車窓を見ながら呟く。
「ドレイクヴァロなどに負けるものか」
サイラスを乗せた車は闇に溶け込んで行った。




