27 おいしい白ワイン
浩人とオリビアは夕方まで秋葉原をぶらついた後に夕飯は夜景が見えるレストランに行った。
ホテルの最上階にあるレストランは浩人も何回か来たことがある。
仕事で来たこともあるし昔の女とも来たことがあった。
「ヒロがこんな素敵なお店知ってるとは思わなかったわ」
「俺だってそれなりの店にたまに来ることはある。オリビアはワインが飲めるか?」
「そうね。飲んだことはあるわ」
「ここは白ワインが美味しい店だ。俺は車だから飲まないがオリビアは飲んでみるといい」
「ありがとう」
浩人はオーダーを済ます。
やがて白ワインが運ばれて来た。
「綺麗な色ね。いただきます」
オリビアは白ワインに口をつける。
甘口で飲みやすい。
「とても美味しいわ。ヒロも今度は車じゃない時に一緒に飲みたいわね」
「ああ、そうだな。ここのは飲みやすいから飲み過ぎるなよ」
「分かってるわ」
そう言いながらオリビアは白ワインをお代わりする。
今日は一日浩人とアキバデート出来て嬉しかった。
オリビアは今まで個人的にお付き合いした男性はいない。
オリビアの地位に群がる男たちはいたが兄のルーカスやマテオがそんな男たちを撃退していたからだ。
それにオリビア自身が好きと思える人物はやっぱり浩人しかいない。
(やっぱりヒロが一番よね。私が最初に感じた運命は間違いないわ)
だが浩人を自分の父親に認めてもらう為にはたくさんの壁があるのは事実だ。
ドレイクヴァロの組織はただのマフィア組織ではないのだから。
これからどうやって浩人のことを父に認めてもらえるようにするか考え込んでいると浩人が話しかけてきた。
「でもせっかくの予算を親父のお土産に使ってしまって良かったのか?」
白石組長のために買ったレアカードの値段は二万円。
そのカードを買ったおかげでオリビアが欲しいグッズは買えなかった。
アニメグッズを買う為の予算は月に三万円までという家訓があるのでそれを破る訳にはいかない。
そんなことをすれば母に「お仕置き」をされること間違いなしだ。
ちなみに母の「お仕置き」は武術有段者の母に道場に呼び出されてみっちりしごかれるというもの。
オリビアも家の方針で幼い頃から武術等を習っているが父や母には未だにかなわない。
でもオリビアは今回の予算でレアカードを買ったことを後悔していない。
白石組長はオリビアに優しいし、なにより浩人と付き合うことを応援してくれている。
浩人が組事務所にいない時に白石組長はオリビアに浩人の過去を教えてくれた。
浩人が喧嘩して怪我をしていたところを偶然通りかかった白石が助けた。
その時に浩人に懐かれて極道の道を浩人は選んでしまった。
『浩人が極道になったのが良かったのかどうか私にも分からんのだ。仕事ができるから組としてはありがたいが』
そう言った白石組長は少し寂しげな顔をしていた。
だがオリビアは浩人が極道になってくれて良かったと思っている。
極道になっていなかったら自分との出会いはなかったし、裏社会を全く知らない人間にドレイクヴァロの仕事は無理だろう。
表の仕事のブラックウェル貿易会社で働くことも考えられたがオリビアはドレイクヴァロの組織で働きたいと思っている。
まだ父のアランにはハッキリとドレイクヴァロで働きたいとは伝えてないが。
「あれは必要経費よ。だってあのレアカードはアイドルナ〇トのファンだったら絶対に欲しいカードだもの。白石組長さんも喜んでくれるわ」
「そうなのか。俺にはよく価値が分からんが、親父の為に買ってくれたのなら礼を言っておく」
「そんなのいいわよ。白石組長さんと私は「同志」なんだから」
「同志ねえ…」
少し呆れたような浩人にオリビアはニコリと笑みを向けた。
そして食事しながら白ワインを何回もお代わりする。
浩人と一緒にいると思うだけでお酒が美味しく思えた。
「おい、そんなに飲んで大丈夫か?」
浩人が心配そうな声をかけてきた。
「大丈夫よ。この白ワイン、とても美味しいもの」
オリビアはほんのり頬を赤くしながら答える。
「まるでおじい様の農場のワインみたい」
「おじい様の農場?」
「うん。私のおじい様はワイン農場を経営してるの」
「へえ、そうなのか」
ドレイクヴァロの三代目総帥でオリビアの祖父のクラウドはドレイクヴァロを引退した時に表向きは死亡したことになっている。
だが実際は生きていてキース・フレッドという別人になり今はのんびりワイン農場を経営している。
そのことを知っているのはオリビアの家族だけだ。
オリビアも祖父の農場には遊びに行っていたがそこで働くキースという人物が自分の祖父だと知ったのは数年前だった。
それだけクラウドが生きていることは秘密にされている。
ドレイクヴァロにとって人一人を別人に仕立て上げるなど朝飯前なのだ。
「情報」というモノを操っているドレイクヴァロの力は凄い。
各国の国家機密を集め、その国の弱みを握っているため、ドレイクヴァロに逆らえる国は殆どいない。
どんな国の大統領や首長だって、ドレイクヴァロの総帥の父の顔色を伺っているのが現実だ。
それでもドレイクヴァロに敵がいない訳ではない。
中にはドレイクヴァロの敵対組織のマフィアに手を貸して総帥のアランを暗殺しようとする国もある。
そういう輩は同時にドレイクヴァロを恐れていて自分たちの国が関わっていることを隠す為にマフィア同士の抗争に見せかけて襲ってくる。
ドレイクヴァロは証拠があればそういった国には制裁を与えてきた。
昔、聞いた話ではドレイクヴァロを怒らせたある国の大統領は大統領の汚職の情報と国家機密をドレイクヴァロに暴露されて失脚して獄中で病死したという。
その病死も公に病死と発表されただけで本当に病死だったかは謎だ。
「今度、ヒロにもおじい様の農場で作ったワインをご馳走するわ」
「そうか。それは楽しみだ」
浩人は笑みを浮かべる。
オリビアは浩人の笑顔を見て幸せな気分になり白ワインを飲んだ。




