23 双頭の山猫の夢
時を遡ること少し前。
エドワードは自分の秘書兼ボディーガードのキールから報告を受けていた。
「エドワード様。オリビア様は本日波戸場浩人と秋葉原に出かける予定のようです」
「そうか。今日はアキバデートか。ちょうどいい、俺もアキバで買い物したいと思っていたんだ」
エドワードは波戸場浩人と接触する機会を狙って部下にオリビアの動向を探らせていた。
なるべく自然な形で接触をして波戸場浩人の素顔を知りたいと思っている。
オリビアの恋を応援したい気持ちは本当だがオリビアの相手はドレイクヴァロの組織の重要人物になる予定だ。
感情だけで選べる相手ではない。
ドレイクヴァロはそんな甘いマフィア組織ではないのだ。
「キール。車の準備をしろ。俺もアキバに向かう」
「承知しました」
キールはエドワードに一礼すると部屋を出て行く。
「エド。オリビアの彼氏に会いに行くの?」
エドワードに尋ねてきたのはエドワードの妻の花音だ。
「ああ、アラン兄さんからもどんな人物か確かめるように言われているしな」
「そう。でもオリビアも彼氏ができる年齢になるなんて月日は早いわね」
「俺たちなんて中学の頃から付き合ってたじゃないか」
「それはそうだけど」
エドワードと花音は中学生の頃に知り合いお互い初恋の相手だった。
花音が日本で生活することを選んだためエドワードはアメリカから日本に移住した。
元々エドワードはゲームが好きで日本に自分のゲーム会社を設立するのが夢だったことも移住の理由の一つだ。
そして今はエドワードはブラックウェル貿易会社の日本支社の会長をやりながら自分で起業した「BWグループ」を経営している。
最初はゲーム会社だったがエドワードが開発したゲームが大ヒットしてその他の産業にも手を広げ、今や「BWグループ」は日本でも有名な大手企業になった。
もちろんそれは表向きの仕事でエドワードの本業はドレイクヴァロのナンバー2の「双頭の山猫」の仕事である。
アランの異母弟として育ちアランの役に立ちたくてドレイクヴァロのナンバー2になったがアランの息子のルーカスがもう少しドレイクヴァロの仕事に慣れたらナンバー2の座はルーカスに譲るつもりでいた。
そうすればエドワードとしても自分の「BWグループ」の経営に専念できる。
それでも完全に自分がドレイクヴァロの組織と縁が切れる訳ではないが。
「それはそうと、エド。アキバで買い物するなら「家訓」を守ってよ」
「分かってるよ。花音。アキバでの買い物は月に三万円までだろう」
どんなにエドワードが「BWグループ」の業績を上げて売り上げを増やしてもこの家訓が変わることはなかった。
だがエドワードはそのことに不満を持っていない。
「そうよ。三万円でも多いくらいだけど、ひかり姉と決めたことだからね」
「昔から花音は厳しいよなあ」
「エドがお金の使い方が派手なだけよ」
花音がそう言うとエドワードは花音に近付きキスをする。
「約束は守るよ」
「それよりオリビアの彼氏が極道って本当なの?」
「ああ、十和麗月会の三次団体の若頭をやっているらしい」
「十和麗月会系の極道なら大丈夫かしら」
少し不安そうに花音の表情が曇る。
花音もオリビアの恋は応援したがドレイクヴァロの組織に関わることは花音が口を出せることではない。
総帥のアランがオリビアの相手に相応しくないと判断されればオリビアの恋が実ることはないだろう。
「どうだろうね。十和麗月会にもいろんな人間がいるから」
「そうね。オリビアが変な男にひっかかってなければいいけど」
「それを確かめに行くんじゃないか」
エドワードは苦笑する。
「変な男だったら私が殴り飛ばしてやるわ」
「花音は過激だなあ」
花音の実家は武術を教えている家柄だ。
そのため花音も身体を鍛えているので並みの男では花音を倒すことはできない。
「じゃあ、気をつけていってらっしゃい」
「ああ」
そこへキールが戻って来た。
「エドワード様。車の手配ができました」
「分かった。すぐ行く」
「はい。承知しました」
エドワードは花音にお出かけのキスをするとキールを連れて車に乗り込む。
エドワードを乗せた車は秋葉原を目指して走り始めた。




