22 アニメグッズは三万円まで
アキバデート当日。
浩人は車でオリビアのマンションまでやって来た。
オリビアはマンションの入り口で待っている。
「待たせたか?」
「いえ、大丈夫です」
「別に律儀にマンションの前で待ってなくていいんだぞ。着いたらインターホンで報せてやるから」
「ヒロには一秒でも早く会いたいもの。部屋で待ってるなんてもったいないわ」
「でも暑いだろう」
「最近は少し涼しくなったわ」
季節は10月に入っていた。
だが最近の日本は10月でもまだ暑い日はある。
特に今日のような快晴の日は。
浩人は秋葉原に向かって車を走らせた。
「ねえ、ヒロ。日本には『秋』があるのでしょう? 秋になるとどうなるの?」
「まあ、一番分かりやすいのは木が紅葉するってことかな」
「写真で見たわ。葉っぱが黄色や赤くなるんでしょう?」
「そうだな。銀杏並木の紅葉とかだったら都会でも見れるぞ」
「楽しみだわ。今度、紅葉を見に行きましょう?」
「ああ、もう少ししたらな」
浩人にとっては四季があるなど当たり前だがアメリカ人のオリビアは「秋」を楽しみにしているらしい。
「今日はアキバのどこに行くんだ?」
「別に決めてないけど……。アイドルナ〇トの最新刊が発売されるはずなの。それは何が何でもゲットしないと」
「ああ、あのアニメか」
アニメに興味はない浩人だががアイドルナ〇トのことは白石のことがあるので名前は知っている。
(なんであんなアニメが好きなのかはいつまで経っても理解はできんが)
だがそのことを白石に言ったりしたら白石に締められるため言えない。
「それにアイドルナ〇トのグッズも買わないと。でも予算は三万円なのよねえ」
「三万!? そんなに買うのか?」
(アニメグッズってそんなに高いもんじゃねえだろ?)
「あら、三万円なんてすぐ無くなるわ。でも我が家の家訓で『アニメグッズに使うお金は月に三万円まで』って決まってるのよ」
「……なんだ? その変な家訓は?」
「昔、私の叔父様がアニメ好きでアキバでグッズを買うのに無駄遣いをしないようにって私のお母様と叔母様が決めて家訓にしたらしいわ」
「どういう家庭だよ……」
浩人は呆れて言葉が出て来ない。
「私のアニメ好きは叔父様の影響もあるのよ。アメリカの自宅に叔父様が日本に移住する時に残していった漫画本が大量に図書室にあったからそれを小さい頃から読んでいたの」
「ふ~ん。それでアニメ好きになったのか」
「ええ。そうよ」
浩人は何気なくオリビアの話を聞いていたが「図書室」という言葉にひっかかった。
(自宅に図書室があるのか?)
「オリビア。アメリカの自宅には図書室があるのか?」
「ええ。叔父様が暮らしていた西棟にあるわ。私と兄は東棟に住んでいたんだけど西棟にはゲーム部屋もあってね。よく遊んだわ」
オリビアは普通のことのように話す。
「ちょっと待て。西棟と東棟って何だ? 屋敷が分かれているってことか?」
浩人が驚いて確認するとオリビアは浩人の顔を見ながら答える。
「アメリカの本宅は本館を中心にして北棟、南棟、東棟、西棟に分かれているわ。両親が使うのは北棟で私たち子供が使うのは東棟だったわ」
「何だ!? その豪邸は!?」
「あら、これぐらいの広さがないと一族が集まった時に対応できないのよ」
オリビアは浩人の驚きの意味が分からないらしい。
(こいつ、とんでもない大金持ちの娘か?)
内心浩人は焦る。
(もしそうなら一般的なことに疎いのも頷ける。だがそんな大金持ちの娘が極道と付き合うことを親は許すか?)
浩人にそんな気はないが極道によってはオリビアから金をせしめようと思う奴もいるだろう。
いや、そう思わない極道の方が稀なことだ。
(だからわざと俺を試すために付き合わせたのか?)
疑問は深まるばかりだ。
「だから予算内に納めないといけないから今日の買い物はよく選んで吟味しないと」
オリビアは真剣な顔で悩んでいる。
まるでこれから戦いに行くような鋭い目つきで思案するオリビアに思わず浩人は嫌な汗が背中に流れた。
(アニメグッズは月に三万円までか……。なんでその家訓ができたか分かる気がするな)
そう思いながら浩人は運転をする。
やがて車は秋葉原に着いた。




