20 運命の相手は日本人
エドワードはブラックウェル貿易会社の日本支社にいた。
このビルは20階建てで最上階に会長室がある。
エドワードはパソコンを取り出す。
このパソコンはドレイクヴァロの幹部専用のパソコンだ。
オリビアが持っているパソコン同様に特殊な通信方法を使っているため盗聴などの心配はない。
「さて、アラン兄さんに一言言っておくか」
そう言ってエドワードは自分の兄でもありドレイクヴァロの総帥でもあるアランに通信を繋げる。
しばらくすると画面にアランの顔が映し出された。
「やあ、アラン兄さん、元気?」
「エドか。どうかしたのか?」
アランはエドワードが自分のことをアランと呼んだことでプライベートな通信だと判断する。
ドレイクヴァロの仕事の話をする時はお互いをドレイクヴァロの組織内での呼び名「双頭の鷲」と「双頭の山猫」という名前で呼ぶからだ。
「オリビアのことだけどさ」
エドワードがオリビアの名前を出すとアランは僅かに目を細める。
「オリビアの交際相手について何か分かったのか?」
「ううん、まだ『波戸場浩人』には接触してないけど、アラン兄さんはオリビアとの交際を認めてあげたんでしょ?」
エドワードの言葉にアランは頷く。
「十和麗月会系の組の者だったからな。一応、交際は認めたがまだ本気でオリビアの相手として認めるかは決めてない」
「まあ、そうだろうね。オリビアの相手は慎重に選ばないとだから」
「それがどうかしたのか?」
「う~ん。一応波戸場浩人には直に会ってみる予定だけどさ。オリビアももう20歳なんだし、オリビアの気持ちを優先させてあげたいんだよね」
エドワードがそう言うとアランは渋い顔になる。
「オリビアの相手はいずれドレイクヴァロの中でも重要ポストを用意するつもりだ。その実力が波戸場浩人にあればの話だがな」
「まあね。事前の調査では波戸場浩人はなかなか真面目に若頭の仕事をしているみたいだけど」
「それでも性格等の調査も必要だ。ドレイクヴァロの幹部は仕事ができるだけでは務まらない」
「ああ、そうだね。でもオリビアもそろそろ独り立ちさせないと。そのために日本に留学させたんでしょ?」
アランは溜息をつく。
「そうだ。そのために二年間の「自由」を与えたんだ」
「だったら俺はオリビアの恋を応援してやりたいよ。恋は独り立ちするのにいい機会だもの」
「確かにエドの言うことも一理あるがこんなに早くオリビアが恋人を見つけるとは俺も予想外だった」
「それは俺たちと同じ血を引いてるんだもん。日本人を好きになっても仕方ないんじゃない?」
アランもエドワードも妻は日本人だ。
エドワードの母親は英国人だったがアランの母親は日本人だった。
そのせいか二人とも若い頃から日本に興味があり日本に来た時に今の妻たちと出会っている。
アランもエドワードも紆余曲折はあったものの愛する相手と結婚できたことは幸いだと考えていた。
「俺たちブラックウェル一族の本家の者が日本人を好きになるのは運命だよ」
「運命ねえ……」
アランは諦めムードだ。
確かにそう言われても仕方がないくらいにアランもエドワードも自分の日本人の妻を溺愛している事実はある。
「だけど、もちろんオリビアの相手に相応しい男かどうかはこれから調査を入れるよ」
「ああ、頼む。俺としてもオリビアにはなるべく自由にさせてやりたいからな」
ブラックウェル本家に生まれたオリビアは将来はドレイクヴァロで働くかブラックウェル貿易会社で働く以外の選択肢しかない。
どちらを選ぶか本人の自由だがオリビアの夫になる人物にはドレイクヴァロで働いてもらう予定だ。
ましてや波戸場浩人が極道ならばドレイクヴァロにとっては好都合だ。
だが実力の無い者をドレイクヴァロの幹部にするつもりはない。
だからアランはエドワードに波戸場浩人がドレイクヴァロの幹部に相応しい人物かを見極めるのを任せたのだ。
「そうだね。オリビアも大学卒業したらそう簡単に「自由」を謳歌できないもんね」
「それはブラックウェル一族に生まれた宿命だ」
アランはそう言い切る。
「それについては俺も仕方ないとは思うよ。ブラックウェル本家の者は他の一族の者の模範にならないとだからね」
「オリビアに足りないのは経験だ。この二年間でいろんな経験をしてもらいたいと思ってるんだが」
「確かに。いつまでも箱入り娘じゃ困るもんね」
エドワードは真面目な顔になる。
ブラックウェル一族は実力主義の一族だ。
オリビアも独り立ちできないようでは困る。
「それじゃあ、また進展があったら報告するよ。アラン兄さん」
「分かった。頼むぞ、エド」
アランとの通信を終えるとエドワードは溜息を吐く。
「さてと、では波戸場浩人に探りを入れてみるか」
パソコンを閉じて紅茶を飲みながらエドワードは呟いた。




