19 射撃訓練
バン!バン!バン!
オリビアの放ったハンドガンの弾は的に全て命中している。
「さすが、オリビア様。なかなかの腕前ですね」
そう言ったのはエドワードの直属護衛チーム「コンドル」のリーダーのメイソンだ。
今日はオリビアはドレイクヴァロの所有するビルの地下に秘密に作られた射撃訓練場でハンドガンの訓練をしていた。
アメリカにいる時もオリビアは定期的に銃の訓練をしている。
日頃から撃っていないと射撃の腕が鈍るからだ。
メイソンは今日は仕事がないらしくオリビアの銃の訓練に付き合ってくれていた。
メイソンがリーダーを務めるエドワードの直属護衛チームの「コンドル」は常にエドワードと共にいるわけではない。
エドワードには通常時はちゃんと別のボディーガードがついている。
「コンドル」はエドワードが危険な地域に行く時に付く特別な護衛チームなのだ。
コンドルのメンバーは皆、元特殊部隊の隊員だったりした者や世界トップレベルの傭兵出身者だ。
ドレイクヴァロはその豊富な資金力で各国の特殊部隊から隊員の引き抜きをする。
コンドルは給料制ではなく仕事をして報酬を得る報酬制だ。
それも一回の仕事の報酬額はとんでもなく高い。それ故に特殊部隊からドレイクヴァロに引き抜かれて来る人間も多い。
特殊部隊は命の危険と隣り合わせの仕事をすることが多いがどうせ自分の命を懸けるなら、より報酬の金額が高い方を取るのは自然なことかもしれない。
コンドルは現在20名のメンバーが所属している。
それを仕切っているのがメイソンだ。
ちなみにドレイクヴァロの総帥のアランにも直属護衛チームはいる。そちらの名前は「リトルドレイク」という。
リトルドレイクは約50名のメンバーが所属している。
リトルドレイクももちろん報酬制だ。だが、ドレイクヴァロの資金力はそんな人間たちを雇っていてもビクともしない。
世界最大のマフィア組織の資金は途方もない巨大なモノなのだ。
しかも表の顔であるブラックウェル貿易会社の利益も物凄い金額になる。
その頂点に立つ総帥の娘がオリビアなのだ。
だからオリビアやオリビアの兄たちの金銭感覚はどこかずれていても仕方のないことなのかもしれない。
でもオリビアたちは母親の影響でまだまともに育った方だとオリビア自身は思っている。
「銃の訓練を怠るわけにはいかないものね」
オリビアはメイソンに答える。
「まあ、比較的日本は平和な国ですがドレイクヴァロの敵はいつ襲って来てもおかしくないですからね」
メイソンはそう言いながらオリビアからハンドガンを受け取った。
「今日はこのくらいにしとくわ。大学のレポートを書かないといけないの」
「分かりました。では部下の者にマンションまで送らせましょう」
「よろしくね」
地下室から出てビルの中の部屋でオリビアは休憩する。
「ヒロは私が銃を扱えると知ったらどう思うかしらね」
浩人だって極道だから銃を撃ったことぐらいはあるだろう。
でも日本では銃の所持の規制が厳しくて一般人は銃を持ってないと聞いている。
そのことがアメリカ育ちのオリビアには驚きだ。
自分がドレイクヴァロの総帥の娘でなくてもアメリカでは銃は日常生活の中にある。
「私が銃を撃てるって言ってももしかしたらヒロは驚かないかしら」
オリビアは暇さえあれば浩人のことを考えている。
だが日本に来たのは大学で勉強するためだ。
今日は浩人に会いに行けないが仕方ない。勉強を疎かにするわけにもいかない。
週末は浩人とアキバデートを約束している。
それを励みに頑張るしかない。
するとオリビアの携帯電話が鳴った。
着信を見ると浩人からだ。
オリビアは急いで電話に出る。
「もしもし、オリビアか?」
「そうよ。どうしたの、ヒロ」
「いや、今日は組事務所に来ないからどうかしたのかと思って」
「今日は大学のレポート書いてるのよ。終わったらまた顔を出すわ」
「そうか。勉強の邪魔して悪かったな」
「ううん、ヒロの声が聴けて嬉しいわ」
「勉強頑張れよ」
「うん、また連絡するね」
「ああ。俺もシマの見回りに出るから」
「分かった。気をつけてね」
「ああ」
そこで電話は終わった。
今日は会えないと思っていたから浩人の声が聴けてオリビアは嬉しかった。
「オリビア様。車の手配ができました」
「分かったわ。今行く」
オリビアは自宅まで車で送ってもらった。




