2 オリビアの来日
羽田空港に一機のプライベートジェット機がアメリカから到着した。
飛行機から出て来たのは黒髪に緑の瞳の女性だ。
「ここが日本ね。まったくルーカス兄さんったら最後までうるさいんだから」
彼女の名前はオリビア・ブラックウェル。20歳。
父はドレイクヴァロ四代目総帥のアラン・ブラックウェル。母は日本人のひかりだ。
ドレイクヴァロは世界最大のマフィア組織でアメリカのシカゴに本宅がある。
ドレイクヴァロは最初はシカゴを中心に活動していたマフィア組織だったが二代目のカークとその双子の弟ダニエルの時代に勢力を急拡大した。
カークは自らを「双頭のグリフォン」と名乗り、『情報』というものの価値をいち早く見出し、武器の密輸とともに世界各国にドレイクヴァロのスパイを送り込み国家機密さえ手に入る情報網を作り出した。
カークの弟のダニエルは表向きの貿易会社「ブラックウェル貿易会社」を設立してドレイクヴァロのスパイの送り込みや武器の密輸を手助けした。
ダニエルには商才があったらしくブラックウェル貿易会社は今や世界の大手企業でその名前を知らない者はいないくらいあらゆる分野で成功を収めている企業である。
ブラックウェル貿易会社はブラックウェル一族が取締役を独占するファミリー企業だ。
ドレイクヴァロはその勢力が世界規模になったため各地域に地域リーダーを置いて運営している。
南米を治める『赤の蛇』、日本を含む東アジアを治める『黒の鷹』、ロシアや東欧を治める『白の狼』、西欧を治める『緑の虎』、中東を治める『金の獅子』、東南アジア・オセアニアを治める『銀の豹』、アフリカを治める『青の熊』。
そして代はオリビアの祖父クラウド・ブラックウェルの時代になりドレイクヴァロの力はさらに強固なモノになる。
闇社会ではクラウド総帥は「魔王」と呼ばれた。そしてその一族であるブラックウェル一族は「魔王の一族」である。
ドレイクヴァロもブラックウェル貿易会社も実力主義の団体だ。
ただブラックウェル一族だということだけで実力のない者は排除される。
厳しい一族だがそれが現在のブラックウェル一族の繁栄に繋がっている。
そして現在のドレイクヴァロの総帥はオリビアの父のアランだ。アランはドレイクヴァロの組織の中では「双頭の鷲」と名乗っている。
父親であるアランも日系アメリカ人で母親が日本人のオリビアは祖父譲りの緑の瞳を除けば日本人と言ってもおかしくない顔立ちをしている。
そして彼女が来日した理由は二年間の大学留学のためだった。
彼女には双子のルーカスとマテオという兄がいる。
兄たちはもっと若い頃日本に留学していたのだがオリビアは女ということもあり20歳になってようやく日本に留学できることになった。
しかも父親のアランから「二年間は何をしてもいい」という言葉をもらった。
ブラックウェル一族のドレイクヴァロの総帥の娘として育った彼女に与えられた初めての「自由」だった。
嬉しくないわけがない。
それでも妹に甘い兄のルーカスは最後まで「何かあったらすぐに俺に言うんだよ」とオリビアの耳にたこができるくらいにオリビアを心配していた。
「私だってもう20歳なんだから一人で何でもできるわ」
オリビアはそう言ってプライベートジェット機専用の出口から出ると日本で世話になるオリビアの叔父のエドワードが待っていた。
「オリビア! 久しぶりだね。元気だったかい?」
エドワードはアランの異母弟にあたり日本人の花音叔母さんと結婚するために日本に移り住んだ。
ドレイクヴァロの中では「双頭の山猫」と呼ばれる事実上のナンバー2の人物だ。
エドワードはオリビアと同じ黒髪に緑の瞳をしている。
「エドワード叔父さん。お世話になります」
「いやいや、オリビアが快適に二年間暮らせるように手伝いをさせてもらうよ」
「ありがとうございます」
「とりあえずオリビアの住むマンションに送って行くよ」
エドワードは日本で起業して今はブラックウェル貿易会社の日本支社の会長を務めながら「BWグループ」という会社を運営している。
ゲーム会社や外食産業、ホテルや不動産業も行っているのがBWグループだ。
エドワードと車に乗りオリビアはマンションへと向かう。
車窓から見える景色がオリビアには輝いて見える。
車はやがて高級マンションの前で停まる。
エドワードがオリビアに用意したのはこのマンションの最上階の部屋だ。
エドワードの部下がオリビアの荷物を運んでくれる。
「それじゃあ。明日からの日本での生活を楽しんでね。アラン兄さんからはなるべくオリビアには自由にさせろって言われてるからさ」
「ありがとう。エドワード叔父さん」
「じゃあ、またね」
エドワードはそう言うと部屋を出て行った。
マンションにはキッチンもついているし自炊もできるようだ。
「ここが私のお城ね!」
オリビアは明日からの生活に胸を躍らせた。




