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ドレイクヴァロの娘~極道の男はマフィアの娘に囚われ堕ちていく~  作者: リラックス夢土


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10 初めての遊園地




 次の日。浩人はオリビアのマンションまで車でやって来た。

 マンションの前にはオリビアの姿がある。


 オリビアの前に車を停車させるとオリビアが助手席に乗ってきた。

 デートを意識したのかオシャレな服を着ている。



(姿だけはそれなりにいい女ではあるんだが)



 そんな感想を持ちながらも浩人はオリビアに声をかけた。



「悪い。待たせたか?」


「いえ。今がちょうど約束の10時ですよ。私も今さっきマンションから出てきたところです」



 オリビアは浩人に会いたくて30分前からマンションの前で待っていたのだがそんなことは言わない。



「それで〇✕遊園地でいいんだよな?」


「はい」



 浩人は車を発進させた。



「ヒロは遊園地デートしたことありますか?」


「いや、ねえよ」


「それじゃあ。遊園地に行ったことは?」


「無いな。俺は遊園地で遊ぶような子供時代を送ってねえからな」



 両親が亡くなった後に施設で育った浩人にはあまり子供の時の良い記憶はない。

 別に自分ではそれも運命のひとつだったと思っているので浩人自身は気にしてない。

 少なくとも今は白石組の若頭としてそれなりに満足のいく生活を送っているのだから。



(こいつには分からねえ世界だろうが…)



 チラリと浩人はオリビアを横目で見る。

 多少不可解な女ではあるが高級マンションに住んでいる生活を送っているオリビアに自分のような人間たちの気持ちは分かるまいと思う。


 一方オリビアは浩人の言葉で父からもらった情報に浩人が「施設で育った」というのを思い出した。

 日本の親のいない子供たちの施設がどの程度の生活環境かは知らないが普通の家族が行うようなことができなかった可能性は高い。


 オリビアもとてもではないが普通の家庭環境だったとは言えないのでなんとなく子供の頃に自分が感じていたことを浩人も感じていたのではと推測する。



「じゃあ、私と同じですね。私も遊園地は初めて行くんです」


「初めて? 親に連れて行ってもらったことねえのか?」


「ええ。両親はとても忙しかったので」


「そうか……」



(金持ちの家に生まれても満足に親の愛情をもらって育ったってわけじゃないんだな)



 オリビアの親が何をしている人物かは分からないがもし両親とも「仕事人間」のような親ならこのオリビアも子供時代は寂しい思いをしたのかもしれない。

 そう考えると同情する気持ちが湧いてくるが次の瞬間には頭を切り替える。



(何考えてるんだ、こいつがまともな金持ちのお嬢様って決まったわけじゃないだろ。お嬢様のフリをしているだけかもしれないし)



 ただの金持ちならば極道だって金を持っている人物はいる。

 オリビアがそう言った白石組に敵対するような組織の人間の身内である可能性は捨てきれない。

 油断は禁物だ。


 浩人はアクセルを踏み込む。

 車は高速を使って一時間ほどで〇✕遊園地に着いた。



「わあ! ここが遊園地なのね!」



 オリビアは歓声を上げる。

 浩人はチケットを二人分買って遊園地に入った。



「何か乗るか?」


「ジェットコースターに乗りたいです!」


「分かった。ここのジェットコースターは怖いって有名だから泣くなよ」


「大丈夫です。銃弾に当たって死ぬことを思えば怖くありません」



 オリビアの物騒な言葉に浩人は思わずギョッとする。

 アメリカは銃社会ではあるが一応一般人のはずのオリビアが銃弾を警戒しなければならないほど危険なところなのだろうか。

 日本を出たことのない浩人には分からない。



「アメリカってのはそんなに日常に銃弾が飛び交っているのか?」


「え? ああ、そうですね。犯罪は多いですから」



 オリビアは笑って誤魔化した。

 まさか敵対組織に襲撃されて銃撃戦に巻き込まれた経験があるなんて話せない。



(いけないいけない。ヒロにはまだ私の正体を知られるわけにはいかないもの。気を付けないと)



「物騒なところだな」



 浩人はそう言いながらジェットコースターの列の方に歩いていく。

 なんとかうまく誤魔化せたようだ。


 オリビアもその後をついて行った。


 列に並んで10分ほど待つと順番がやってくる。

 ジェットコースターは勢いよく走り出す。



「キャー!」


「うわー!」



 オリビアと浩人は悲鳴を上げた。

 噂通りの絶叫マシーンだ。


 ジェットコースターに乗り終わると浩人はぐったりとなった。

 浩人も生まれて初めてジェットコースターに乗ったのだ。



(まったく、これなら敵と喧嘩してる方がマシだ)



 自分がジェットコースターに乗って無様な姿をさらしたなど白石組の組員にバレたらいい笑いものだ。



「大丈夫? ヒロ?」



 オリビアが心配してベンチに座ってぐったりしている浩人に水を差し出す。

 自分を心配して揺れる緑の瞳にまた吸い込まれそうになった。


 一瞬酒を飲んだ時のような心地いい酩酊感のような感覚になる。

 まるでずっとその緑の瞳に見つめられていたら「幸せ」になれるのではないかという思いが浩人の心に湧き上がった。


 浩人は自分の頭をブルッと横に振る。



(しっかりしろ! これぐらいで弱っているからこいつの瞳に妙な想いを感じるんだ! 組同士の抗争に比べたらジェットコースターぐらいたいしたことねえだろ!)



 浩人は自分に活を入れた。






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