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【第二章完結】処刑エンドの悪役令嬢に転生したので破滅回避を目指したら、悪役皇子に溺愛されました  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)
第三章 聖女アンリーシェvs悪女チェリシア

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71 皇帝になる未来

ベレニウム帝国、皇宮からすぐ近くに位置する古びた宮殿。

そこにはこの国の第二皇子が住んでいた。



第二皇子レイドは人を全く寄せ付けないことで有名だ。

しかし、近頃彼の住む宮殿には茶色い髪の美しい女性が頻繁に出入りしていた。



第二皇子宮内の書斎にて。

一人の少女が顔を覗かせながら尋ねた。



「――殿下、いつ皇帝になるんですか?」

「……」



椅子に座って書類作業をしていたレイドが顔を上げた。

彼にこんなにもフランクに接することができるのは、おそらくこの国では彼女くらいだろう。



「お前、それ誰かに聞かれたら処刑だぞ」

「処刑だなんて……私はただ、殿下が皇帝になる未来を信じているだけです」



レイドが皇帝として、ベレニウム帝国に君臨する未来。

チェリシアはその日が来ることを確信していた。



気のせいか、彼女を視界に入れたレイドの瞳が柔らかくなった。

呆れてはいるものの、内心嬉しいのだろう。そんなことを言ってくれる人はチェリシアだけだから。



「……まるで未来が見えているかのように言うんだな」

「私は未来が見えるんです!殿下が皇帝になる未来が、今でも見えますから!」

「頭がおかしくなったようだな」



レイドはクスリと笑みを零した。

彼はそのままチェリシアの腰を抱き寄せ、彼女はその反動で彼の膝に座った。



「で、殿下……」



すぐに立ち上がろうとするチェリシアの腰を、彼は強く抱きしめた。



「俺が皇帝になると思っている人間は多分この世でお前だけだぞ」

「あら、殿下自身は思っていらっしゃらないのですか?皇座を手に入れることを目標にしているのでしょう?」



チェリシアは膝に乗りながら、彼の顔をじっと見つめた。

レイドはその視線を受けながら、そっと口を開いた。



「……どうだろうな」

「殿下……?」



歯切れの悪いレイドの返答に、彼女はきょとんと首をかしげた。

彼はチェリシアから視線を逸らし、腰に回していた腕に力を込めた。



「昔はそれだけが目標だったけど……今はよくわからない」

「……」



いつもと違い、弱々しく彼は呟いた。

チェリシアは俯いたレイドの頬に手を添えた。



顔を上げた彼と、再び視線がぶつかった。

何を考えているのか、彼はじっとチェリシアを見つめた。



何かを求めるようなその視線に、彼女は何故か胸が締め付けられた。

どうしてそんな目を私に向けているの?



――私は、あなたから離れようとしているのに。

そんな目を向けられたら、私――



しばらくすると、彼が頬に触れていた手に自分の手を重ねた。



「――お前を見てると、皇帝の座なんてどうでもよくなる」

「殿下……」



ゆっくりと移動した彼の手が、彼女の首の後ろを掴み、そのまま引き寄せた。

唇が触れそうなほど近付いたとき、チェリシアが慌てて彼を押し退けた。



「わ、私そろそろ家に帰りますね!長居しすぎるとお父様が心配するでしょうから」

「……」



チェリシアはレイドの膝から立ち上がると、そのまま彼の前で魔石を発動させた。

彼の瞳にそっくりな赤い魔石がピカッと光り輝き、そのままチェリシアは公爵邸へと転移した。



「……」



あっという間に一人になったレイドの元に、彼女と入れ替わるようにしてラリサが部屋に入ってきた。

彼女が手にしていたトレーには、紅茶とお茶菓子が乗せられていた。



レイドは甘い物が好きではないし、紅茶よりもコーヒー派だ。

チェリシアの好みに合わせ、ラリサに用意させていたのだ。



「――あら殿下、ロクサーヌ令嬢はお帰りになられたのですか?」

「……そのようだ」



見るからに拗ねているレイドに、ラリサは口元を手で押さえて笑った。

チェリシアは彼の心を乱す唯一の存在だった。



「では、紅茶と茶菓子は下げた方がよろしいですね」

「いや……お前がせっかく用意してくれたんだから、食べるよ。こっちに持ってこい」

「殿下……」



ラリサは驚いたように目を見開いた。

チェリシアに出会ってからというもの、レイドは性格が柔らかくなった。



ラリサは言われた通りに、紅茶と茶菓子の皿を彼の机に置いた。



「殿下ったら、甘い物は大の苦手なのに。無理はなさらないでくださいね?」

「俺を誰だと思っているんだ。毒でも死なないのに、菓子相手にやられるわけないだろう」

「……さぁ、それはどうでしょうね」



大きめの丸い皿に、チョコチップクッキーや四分割されたアイスボックスクッキーが並べられていた。

長年侍女として働いていたラリサのお菓子作りの腕は一級品である。



しかし、それらを前にしても彼は全く食欲をそそられなかった。



「……というより、いくら何でも菓子の量が多くないか?どう見ても二人で食う量ではないだろ」

「ロクサーヌ令嬢はかなりの甘党だとお伺いしていましたので、たくさんご用意いたしました」



ラリサはニッコリと笑った。

期待に満ちた眼差しを向けられると、食べないわけにはいかなかった。



「……」



レイドは皿からクッキーを一つ、手に取って口に運んだ。

サクサクとした食感と同時に、口の中にチョコレートの甘さが広がった。



「……」



数分後、レイドは謎の体調不良により執務を中断せざるを得なくなった。




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