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【第二章完結】処刑エンドの悪役令嬢に転生したので破滅回避を目指したら、悪役皇子に溺愛されました  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)
第二章 皇子との婚約からの家族とさよならします!

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70 父と娘

その後、予期せぬ怪我を負った父は部屋へと運ばれた。

チェリシアはそんな父について行った。



「お父様、大丈夫ですか?」

「ああ、このくらい何ともない」



頭に包帯を巻いた父が答えた。

それほど重傷ではなさそうなのが、不幸中の幸いである。



医者が出て行ったあと、二人きりになったチェリシアは尋ねた。



「どうして、あのとき前に出たんですか?」



彼女は父の行動を理解できなかった。

何故、自分を守ったのか。ただの気まぐれだと思いたかったが、別の意味が隠されているような気がしてしまって、どうしても真意を聞かずにはいられなかった。



「……親として、子を守るのは当然のことだろう」

「……」



チェリシアは黙ったまま、顔を上げた父親と目を合わせていた。



「……今になってそのようなことをおっしゃるのが、理解できません。お父様は私やお母様を……」

「――私は別に、お前の母親を嫌っていたわけではない」



その言葉を皮切りに、父は懐かしむようにチェリシアの知らない昔のことを語った。



「政略結婚ではあったが……彼女のことはなかなか気に入っていたよ。穏やかで、明るい人だった」

「……」



――それを、あなたが壊した。

父から聞く母の話は、チェリシアの記憶に残る母親からは想像もつかないものだった。

母はチェリシア相手に穏やかに笑いかけてくれたことなど、数えるほどしかなかったから。



「百合の花をプレゼントすると、いつもとても喜んでいた。そのときの彼女の顔は……今でも鮮明に思い出すことができる」



気のせいか、父の表情が柔らかくなった。

どうしてそんな顔をするのか。まるで愛する人を思い起こすときみたいだ。



「母を、愛していたんですか?」

「少なくとも……彼女のことを幸せにしたいと、当時は思っていた」



しかし、結局彼はそれを成し遂げられなかった。

心を病んでしまった母から逃げた先で愛人と出会い、余計に彼女を不幸にした。



しばらく俯いたあと、罪悪感でいっぱいになった瞳がチェリシアを捉えた。



「……チェリシア、辛い思いをさせてすまなかったな」



愚かな男の、悔恨だった。

今になって母を、娘を捨てたことを後悔しているのか。しかし、そのような気持ちが意味の無いものであることに変わりは無い。



「……お父様がどれだけ後悔したところで、母や私の心の傷が消えるわけではありません」



チェリシアの答えは、父親への拒絶を表していた。

予想通り、というように父は彼女から目を逸らした。



「ですが……そうですね、死に目くらいには会いに行ってあげてもいいでしょう」

「……!」



父は目を見開いて顔を上げた。

先ほどと違って、僅かに宿った希望。こんなにも感情を露わにする人だっただろうか、とチェリシアは笑いそうになった。



「私はマリーナのように優秀ではありませんので……そのくらいしか親孝行できなさそうです」

「親孝行だなんて……それだけで私にとっては贅沢すぎるくらいだ」



チェリシアはそれ以上、希望に満ち溢れた父を見ていたくなかった。



「では、そろそろ失礼しますね。お大事になさってください」

「ああ」



最後に挨拶をすると、彼女は部屋を出て行った。




第二章完結となります!

第三章からはアンリーシェが深く関わってくる予定です!

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