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【第二章完結】処刑エンドの悪役令嬢に転生したので破滅回避を目指したら、悪役皇子に溺愛されました  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)
第二章 皇子との婚約からの家族とさよならします!

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68 プレゼント

外でアルセリアを待っていたチェリシアは、アンリーシェの言葉に強いショックを受けた。

アンリーシェは相変わらず無表情だった。どのような真意で言ったのか、全くわからない。



「……神殿長を、操った人がいる?」

「……チェリシア、忘れないでください」



アンリーシェはチェリシアに近付き、顔をグッと彼女に寄せた。

額が合わさり、彼女の金色の髪がこめかみに当たった。



「――私は私であって、私ではないのだということを。あなたのように」

「アンリーシェ?何を言っているのですか?」



その瞬間、アンリーシェは人が変わったように笑顔になった。

チェリシアを押し退けると、そのまま駆けて行った。



「――ステイン殿下!」

「……殿下?」



チェリシアが振り返ると、アンリーシェがステインに抱き着いていた。

ステインはそんな彼女を受け止め、愛しそうに微笑んだ。



「リーシェ、どこへ行っていたんだ?心配しただろう」

「えへへ、すみません。ちょっとお手洗いに行っていたら迷っちゃったんです」

「そうか、君は本当にドジだな」



ステインはヘヘッと照れたように笑うアンリーシェの頭を優しく撫でた。

今の二人は、チェリシアのことなど目にも入っていないようだった。



「さぁ、帰ろう。今日は父上と母上と夕食を共にする約束だろう?」

「ええ、そうでした」



彼女はステインの差し出した手を取り、二人で皇家の馬車へ乗り込んでいった。

皇家の紋章が刻まれたその馬車が見えなくなるまで、彼女は二人を見つめ続けた。



「――リシア!こんなところにいらしていたのですね!」

「……リア?」



放心状態だった彼女に声をかけたのはアルセリアだった。



「もう、探したんですのよ!リシアったら何も言わずに突然どこかへ行かれるものですから……」

「……すみません、道に迷ってしまって」



チェリシアは思考回路が上手く回っていなかったが、何とか言葉を紡いだ。



「それよりリア、オークションは終わったのですか?」

「ええ、無事に終わりましたわ」



ちょうど入口に目を向けると、会場から多くの貴族たちが出てきているところだった。

アルセリアは機嫌が良さそうにウフフと笑った。



「……何か、嬉しいことでも?」

「いえ、そういうわけではありません……ですが、とっても面白いものが見れましたのよ」

「面白いもの……?」



きょとんと首をかしげたチェリシアに、アルセリアは笑いを抑えることができなかった。



***



アルセリアとの会話を終え、帰りの馬車に乗り込もうとしたチェリシアは突然後ろから腕を引かれた。



「キャアッ!」



腕を引っ張られた彼女の体は宙に浮き、そのまま誰かに抱きかかえられた。

いわゆるお姫様抱っこというやつだ。



チェリシアは思わずその体にしがみついた。

肩に手を置いて顔を見下ろすと、宝石のような赤い瞳と目が合った。



「…………レイド殿下?」

「婚約式ぶりだな」



レイドはチェリシアを抱いたままクルクルとその場で回った。



(ちょ、ちょっと恥ずかしいからやめてよ!)



恋愛物の小説でよくありそうなこのシーン。

前世、観劇か何かで見たような気がする。あのときは素敵と思いながら見ていたが、実際やる側になるとこんなにも恥ずかしいのか。



「それよりお前……」



レイドがチェリシアの体を抱いたまま、揺らした。



「――何か前に比べて重くなったか?」

「ド、ドレスの重みですよ!今日はいつもよりゴージャスなドレスを着てるんです!装飾品もたっぷり!」

「いや、そんなレベルじゃないような……」

「も、もう下ろしてください!誰か見てたらどうするんですか!」



レイドは顔を真っ赤にするチェリシアをゆっくりと地面に下ろした。

どうしてそんなに紳士的に下ろすのか。



(ついさっきまで重いとか言ってたくせに……)



チェリシアは勝手にときめいた自身の胸を恨んだ。

レイドは何かを感じたのか、距離を取ろうとしたチェリシアの腕を掴んで引き寄せた。



「お前、この傷は何だ?」

「あーそれは……」



レイドは彼女の腕のアザに気付き、問い詰めた。きっと神殿長との戦いのときに付いたアザだろう。

鋭い目で見つめられ、チェリシアは彼に今日あったことを一から説明した。



「神殿の地下室に囚われている少女たちを救いに行っただと?」

「か、勝手な行動をして申し訳ございません殿下……」



第二皇子の婚約者がそのようなことをして何かあれば、醜聞どころではすまない。



(さすがのレイドも、呆れたわよね……)



俯いたチェリシアの顎を、レイドが持ち上げた。



「何故俺に言わなかった?」

「……え?」



レイドが拗ねたような顔でチェリシアを見つめていた。

何故言わなかったかって?そりゃあ決まってるでしょう。



「レイド殿下はお忙しいですし……そのようなことに割いている時間は無いのだと……」

「俺なら、婚約者を一人でそんなところに行かせたりはしない」



真摯な彼の瞳に、チェリシアは何故か胸が締め付けられた。



「殿下……」

「次からそういうときは俺に言え。前に言っただろう、婚約者に会いに来る時間くらいはあるって」



そういえば、そんなことを言っていたような記憶がある。

チェリシアは頷き、彼の腕をそっと掴んだ。



「殿下、今日は……チャリティーパーティーにいらしていたのですか?」

「ああ、一部には参加できなかったが……オークションには間に合った」



仕事を早めに切り上げてオークションに来るだなんて、レイドにそこまで欲しいものがあったとは驚きだ。

一体何のためにそこまでして来たんだろう。疑問に思っていたチェリシアの前で、レイドは懐から何かを取り出した。



「お前にプレゼントを渡しに来たんだ」



そう言うと、レイドはあるものをチェリシアの手に持たせた。



「……杖?」



茶色く、所々が錆びている杖。ただの古びた杖であるはずなのに、何故か妙なオーラを纏っている。

目にした者の心を掴んで離さない……杖を手にしたチェリシアは不思議な感覚に陥った。



「……これは?」

「それは時空の杖だ。お前にやるよ」

「…………………時空の、杖」



チェリシアは叫び声と同時に、杖を手から離した。




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