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【第二章完結】処刑エンドの悪役令嬢に転生したので破滅回避を目指したら、悪役皇子に溺愛されました  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)
第二章 皇子との婚約からの家族とさよならします!

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59 チャリティーパーティー③

ステインとアンリーシェが到着してからすぐ、主催者である神殿長が姿を現した。

彼は壇上へ上がると、開式の挨拶を始めた。



「皆様、今日はパーティーにお越しいただき誠にありがとうございます」



神殿長は一言で言うと神殿のトップ――神殿で最も権力を持つ存在だ。

年齢は六十歳ほどだろうか、いつも真っ白なローブに身を包んでいる。



「今日のパーティーは、昼はダンスパーティー、夜はオークションの二部で構成されております。皆様にとって、楽しい時間となることを願っております」



その一言で、年に一度のチャリティーパーティーが幕を開けた。

人々が緩やかに談笑を始め、ダンスをするために手を取り合った男女がホールの中央へと歩き始めた。



その中にはステインとアンリーシェの姿もあった。

一見穏やかに見えるものの、実は全員、気が気ではなかった。



(今から始まるダンスパーティーはただの余興に過ぎないわ。貴族たちの本命はその後……)



夜のオークションになれば、ここにいる全員が一瞬で敵となるのだ。

嵐の前の静けさというやつだろう。



チェリシアは慎重に、ホール内を見回した。

チャリティーパーティーに来ている人たちの中には、見知った顔の貴族たちも多くいた。



(今ここにいる全員が時空の杖を狙っているんだと思うと、何だか恐ろしいわね……)



「――麗しいレディー、よければ一曲踊ってくださいますか?」

「……!」



背後から男性の柔らかい声が聞こえ、チェリシアは振り返った。



「はい、私でよければ是非……」

「――エルンバッハ令嬢」

「……」



しかし、紳士的な彼がダンスを申し込んだのはチェリシアではなくすぐ近くにいたアルセリアだった。



「あ……」

「……」



チェリシアの顔から笑みが一瞬で消え去った。

彼女は気まずそうなアルセリアに目で行ってきていいわよ、と合図をした。



「……はい、私でよければ喜んで」



アルセリアは彼の手を取り、ホールの中央へ向かった。



(穴があったら入りたい……)



チェリシアは勘違いしていた自分が何だか恥ずかしくなり、ササッと壁際に移動した。

アルセリアをダンスに誘った貴族男性は、彼女を丁寧にエスコートし、軽やかにリードした。



「あら、とっても素敵。絵になるわ」



チェリシアはダンスをする二人の姿を、遠くから微笑ましそうに眺めていた。



ちょうど横ではステインとアンリーシェがダンスをしていた。

しかし、つい最近まで平民だったアンリーシェはダンスがあまり上手くなく、ステインの足を既に五度ほど踏んでしまっている。

そのせいか、彼の顔は真っ青になっていた。



「わぁ……大変ねぇ……」



でも仕方ないよね。

アンリーシェはまだ聖女になって日が浅いんだから。愛する女性なら、それくらいの痛み我慢できるでしょう?



しかし、とうとう我慢の限界を迎えたのか、彼はダンスを途中で中断してしまった。

足の痛みで歩けない彼を、アンリーシェが咄嗟に支えた。



(よかったわねぇ、リーシェが聖女で)



すぐに光の魔法で治してしまうから、どれだけ足を踏まれても平気だ。

チェリシアはしばらくの間、壁際からパーティーの様子を静かに眺めていた。



元々目立つ美人であるアルセリアは相当人気なようで、何度もダンスに誘われているせいでなかなか戻ってくることができなかった。



(というか、チェリシア人気無くない?さっきから誰もダンスに誘ってくれないんだけど)



チェリシアもかなりの美人なのに、どうして……

誰からも話しかけられず、ショックを受けた。



しかし、このときの彼女は知らなかった。

レイドがチェリシアに近付くなと、男たちに圧力をかけていることを。



(誰からもダンスに誘われないからつまらないわ!ちょっと外の空気を吸いに行きましょう)



完全に壁の花となっていたチェリシアは一人、ホールを出て行った。



***



外へ出ようと思っていたチェリシアだったが、途中でお手洗いへ行きたくなった彼女は一旦神殿の中を歩き回った。目的はお手洗いを探すことだったが……



「……どっちへ行けばいいんだっけ?」



――チェリシアは何と、神殿内で迷子になってしまったのである。



元々神殿は閉鎖的な場所で、貴族が訪れることはほとんどない。それに加えて、宮内は迷路のように複雑な構造になっている。

そのため、チェリシアが道に迷ってしまうのも仕方のないことだった。



「こっちで合ってるのかな?」



彼女はとうとう歩いているうちに知らない場所まで来てしまった。

見張りの騎士や神官たちもいない、神殿内の一角だった。



「流石に戻った方がいいかしら?」



チェリシアが来た道を戻ろうとしたそのとき、すぐ傍にある部屋から声が聞こえてきた。



「――あぁ、全てが上手くいっているよ」

「……!」



聞こえてきた声に、彼女は思わず足を止めた。



チェリシアは近くにある部屋の前に移動し、そっと中を覗き込んだ。

部屋の中には、見覚えのある人物が座っていた。



(神殿長……?と、誰かが話している……?)



中にいたのはさっきまでパーティーで挨拶をしていた神殿長だった。

彼は部屋にある水晶玉に向かって何かを話している。

おそらくあれは、何かの魔道具だろう。その証拠に、水晶の表面に紫色の魔力がうごめいている。



「もうすぐ私たちの計画は成し遂げられる……――このベレニウム帝国が、私たち神殿のものになる日も近いということだ」

「!?」



チェリシアは驚きのあまり、後ずさりをした拍子に足音を鳴らしてしまった。



「誰だ!!!」



静寂の中に響いたカツン……という音に、神殿長が反応した。



(マ、マズイ……)



恐怖で動けなくなっているチェリシアをよそに、神殿長は一歩一歩確実にこちらへと近付いてくる。

絶体絶命の状況の中、後ろから伸びてきた手が彼女を柱の影へ押しやった――




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