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【第二章完結】処刑エンドの悪役令嬢に転生したので破滅回避を目指したら、悪役皇子に溺愛されました  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)
第二章 皇子との婚約からの家族とさよならします!

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46 俺の傍にいろ

中へ入ってきたのは、黒い軍服に赤いマントを羽織ったレイドだった。



(あら、何て美しいのかしら)



今日のレイドは何だか雰囲気が違った。

いつも下ろしている前髪を上げているからだろうか。

それに最近は軽装の彼ばかり見ていたし……軍服を着ているとやっぱり様になる。



皇族の証である赤いマントは、彼の瞳の色とそっくりでとても似合っていた。

チェリシアは、扉の前で立ち止まって微動だにしないレイドにゆっくり近付いた。



「レイド殿下、素敵なドレスをありがとうございます」

「……」



レイドは何も言わずに、チェリシアを見つめていた。

今日の彼女は誰から見ても美しかった。

彼が贈ったドレスは彼女によく似合っていて、いつもと違うオーラを醸し出していた。



(あなたが贈ったドレス……似合っているかしら?)



チェリシアはドキドキしながら、レイドの言葉を待っていた。

上から下までじっくりと彼女を眺めた彼が、表情を変えることなく口を開いた。



「今日はまだマシな方だな」

「ど、どういう意味ですか……それ」



レイドの口から飛び出した言葉は、いつもと変わらなく棘のあるものだった。

チェリシアはムスッと頬を膨らませた。



(いつも一言余計なのよね、レイドって)



良い男なんだから、綺麗だの一言でも言ってくれればいいのに。

チェリシアは背を向けた彼をからかうように、肩をツンツンと指で叩いた。



「美しいって思ってるなら素直に言った方がいいですよ、殿下!」

「誰がそんなことを思ってるって?」



振り返ったレイドが眉をひそめて彼女を見下ろした。



「着飾った婚約者に対して綺麗だの一言も無いんですか?」

「言う必要があるか?」

「言われると女の子は誰でも嬉しいんですよ。逆に言われないと、とても悲しい気持ちになります」



レイドは理解できないとでもいうかのように、きょとんとした顔で彼女を見た。

チェリシアはそんな彼を真っ直ぐに見上げた。



「――だから、一言でいいんです。綺麗だなって言ってくれませんか?」

「……」



あなたがそう言ってくれたのなら、私はきっと変われる。

見た目が変わったかのように、未だに自分に自信が持てないという内面もきっと変えることができる。



しかし、何を考えているのかレイドは意地悪な顔でニヤリと笑った。



「言わない」

「ど、どうしてですか!?」

「言わないものは言わない」



レイドは腹黒い笑顔でチェリシアを見下ろした。

せっかく私が勇気を出して言ったのに!

婚約者に対して褒め言葉の一つも言わないだなんて!



チェリシアはレイドの背中に向かって叫び続けた。



「意地悪!最低!冷酷人間!」

「皇族相手だとは思えない発言だな」

「全て本当のことですよ、殿下」

「そんな顔で婚約式に参加するつもりか?」

「殿下のせいです!」



拗ねたようなチェリシアに、レイドは参ったな……と頬をかいた。



(ほんのちょっとでも期待した私が馬鹿だったわ!)



そんな彼女を宥めるように、彼はそっと手を差し出した。

黒い手袋を嵌めた大きな手が、俯いていたチェリシアの視界に入った。



顔を上げると、レイドが口元に微笑を浮かべながらこちらを見つめていた。



「――もうすぐ婚約式が始まりますよ。早く行きましょう、令嬢」

「……」



チェリシアの機嫌を取るための行動だとわかっていたが、彼女は高鳴る胸を抑えきれなかった。

コホンと一つ咳払いをすると、気を取り直したように彼の手を取った。



「……ええ、そうですね――皇子」

「殿下ではなく皇子だなんて、まるでどこかの国の姫みたいだな。俺より上に立った気か?」



レイドはハハッと声を上げて笑った。



(無礼な態度を取られて嬉しそうなのは何故?)



恋愛系の物語の中でよくあるおもしれー女というやつなのだろうか。

チェリシアとレイドは婚約式が行われる教会へ向かうため、部屋の外へ出た。



「婚約者である以上、私たちは対等な立場になったと思いませんか?ほら、帝国法でも定められているではありませんか。皇帝と皇后は対等な立場にあるという……」

「……お前、皇后になる気があるのか?」



レイドの驚いたような問いに、チェリシアはハッとなって訂正を加えた。

彼の前で婚約を解消すると堂々と宣言したのを忘れていた。



「あ、いえ、違います。ただ、今は婚約者であることに変わりは無いので……今だけの話です」

「…………そうか」



レイドは複雑な目で横を歩くチェシリアを一瞥した。

そんな彼の様子を、彼女は不思議に思いながらも声をかけた。



「今日の婚約式、何事も無く終わるといいですね」

「……ステインや皇后がいるってのに、何事も無く終わると思うか?」

「そ、それは……」



不安げに視線を下げたチェリシアに、レイドはボソッと囁いた。



「俺がいるのに、何がそんなに心配なんだ?」

「殿下……?」



突然立ち止まったレイドに、チェリシアは彼を見上げた。

ほんの少し、苛ついたような赤い瞳が彼女を捉えていた。



「――俺が婚約者すら守れないような無能な男だとでも?」

「い、いえ……そういうわけでは……」



レイドはチェリシアが不安に思うわけがわからなかった。

この帝国で最も強いと言っても過言ではない彼がいるというのに、何がそんなに心配なのか。



レイドは言い聞かせるように、彼女の肩を両手で掴んだ。



「いいか?何があっても俺の傍から離れるな。不安ならなおさらだ」

「殿下……」

「――お前が横にいる限り、いくらでも俺が守ってやる」



チェリシアは不思議な気分だった。

自身に触れるレイドの大きな手が、とても頼もしく感じる。

この世の全てから彼が守ってくれるような、そんな気がしてならない。



「……はい、殿下」



チェリシアはゆっくりと頷いた。

胸に残っていた彼女の不安感が、一瞬にして払拭されていった――




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