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【第二章完結】処刑エンドの悪役令嬢に転生したので破滅回避を目指したら、悪役皇子に溺愛されました  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)
第一章 悪役令嬢に転生からの悪役皇子との偽装婚約!

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17 ステインの元婚約者

アルセリア・エルンバッハはエルンバッハ侯爵家の長女として生を受けた。

恋愛結婚で結ばれた両親は仲が良く、上には兄が一人いた。

絵に描いたような幸せな家庭で、アルセリアは愛に満ちた幼少期を過ごした。



「お母様、今日はどちらへ行くの?」

「皇宮へ行くのよ。アルセリアも将来よく行くことになるはずだから、今のうちに慣れておきなさい」



アルセリアの母親は皇后陛下の古くからの友人であり、彼女自身も幼い頃から母について皇宮によく出入りしていた。

彼と出会ったのはそのときだった。



初めて彼を見たとき、アルセリアは大きな衝撃を受けた。

こんなにも美しい人がこの世にいたのかと。

銀色の髪は太陽の光を受けて光り輝き、こちらを見つめる赤い瞳に、彼女は釘付けになった。



(とっても綺麗……彼は一体誰なんだろう……)



同年代の貴族令息たちと比べても、彼の美貌は一際輝いていた。



「……ステインだ」

「……ア、アルセリア・エルンバッハです」



そこでアルセリアは初めて、彼が第一皇子ステインであることを知った。

彼女は彼に、一目惚れをしてしまったのだ。



皇宮から家に帰ったあとも、永遠にステインのことが頭から離れなかった。

そんな彼女を見た母親が、何かに気付いたように笑った。



「アルセリア、ステイン皇子が気に入ったようね」

「とっても綺麗だったわ、私あのお方と結婚したい!」

「あら、そう?そうね、なら皇后陛下に頼んでみましょうか」



アルセリアの母親は、元々ステインの母である皇后とは旧知の仲だ。



「そうねぇ……息子の婚約者はまだ考えていなかったけれど、エルンバッハ侯爵家のご令嬢なら身分的にもピッタリだわ」



皇后はステインとアルセリアの婚約には特に反対しなかった。

しかし、ステインは違った。



「たった一度会っただけの令嬢と結婚だなんて、母上は何を考えているんだか……俺はお前が婚約者だなんて認めないからな」

「……」



婚約者として顔合わせをした日、ステインはアルセリアに向かって冷たく言い放った。

ステインはただ一度会っただけの彼女を未来の妻としては認めなかった。



しかし、アルセリアは彼を責めなかった。

この婚約は彼女の一方的な片思いによって結ばれたものであり、ステインは彼女のことが好きではない。

そんなことは誰よりもアルセリア自身がわかっていた。



「殿下、殿下が私を認めてくださらなかったとしてもかまいません。私は必ず、立派な妻になれるように努力しますから」

「……」



強い意志のこもったその言葉にステインは不快そうに眉をひそめ、ぷいっと顔を背けた。



結局、二人の婚約は内定はしたものの、世間一般に公表されることはなかった。

後に聞いた話によると、ステインが内密にすることを望んだのだという。

アルセリアはそのことに軽くショックを受けたが、彼と結ばれるという未来は変わらない。

努力し続けていれば、いつかはきっと認めてくれるはずだ。



そのような思いから、彼女は六歳の頃から厳しいお妃教育に励んだ。

皇后陛下は友人の娘でも容赦はせず、教育係たちも執拗にアルセリアを責め立てた。



それでも彼女はめげなかった。

ステインに認められたい、彼と結婚したいというその一心で努力し続けた。



アルセリアはその間、ステインの後ろ姿だけを眺め続けていた。

そんな二人の関係性が変わったのは、彼女が妃教育を始めて五年が経った頃だった。



「殿下、どうして鏡を見ながら怖い顔をしているんですか?」



ある日の昼、アルセリアは部屋で鏡の前に立つステインに声をかけた。

彼はどこか浮かない顔で鏡で自分の顔を見つめていた。



「お前……父上と会ったことがあるか」

「え、ええ……皇宮で何度か見かけたことがあります」

「あの人の瞳の色を見たか」

「瞳の色……?」



アルセリアはステインの父親である皇帝の顔を思い浮かべた。

どこかくすんだ赤色をする彼とは違ってギラギラな赤い目をしていた。



ステインは黙り込んだアルセリアを嘲笑するかのように口角を上げた。



「綺麗だろう、父上の目の色は。俺とはまるで似ていない」

「……」



彼はどこか悲しそうに、呟いた。

アルセリアにはそんなステインの気持ちが理解できなかった。

たしかに皇帝の瞳は宝石のように輝いているが、彼女にはそれほど魅力的には感じられなかった。

様々な赤を混ぜたような皇帝のギラつく瞳は変化がなく、何を考えているのかまるで読めなかった。



そのせいか、アルセリアは皇帝と目を合わせると委縮してしまっていた。



「私は殿下の目の色がとっても好きです。落ち着いていて、何より感情の変化がわかりやすいですから!」

「……それは一体どういう意味だ?」



ステインが眉をひそめた。

アルセリアは彼の瞳を人差し指で差した。



「殿下は不機嫌になるとそうやって目の色がいつもより暗くなります!」

「……」



自分でも気付いていなかったのか、ステインは固まった。



「そして嬉しくなると目の色が明るくなるんです!」

「……目で感情の変化が読み取れるとでも?」



彼は半信半疑だったが、アルセリアは絶対的な自信があった。

この五年間、彼女は彼を観察し続けていたのだから。



その努力の甲斐あって、アルセリアは彼の感情が瞳に反映されるということに気が付いたのである。

彼女はキラキラした眼差しでステインを見上げた。

同い年ではあるが、このときにはすでに彼の方が背が高かった。



ステインは気後れしたように彼女の視線を受け止めていた。



「……馬鹿げたことばかり言うな」

「……」



そう口にした彼の瞳は、普段よりも僅かに明るくなっていた――




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