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【完結】処刑エンドの悪役令嬢に転生したので破滅回避を目指したら、悪役皇子に溺愛されました  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)
第三章 聖女アンリーシェvs悪女チェリシア

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109 協力

ロクサーヌ公爵邸の崩壊した壁から見える空は、真っ黒だった。

曇り空にしてはあまりにも暗く淀んでいて、今すぐ雷雨でも落ちてきそうな勢いである。

それだけではなく、瘴気のような何かが空中でうごめいている。



――それはまるで、空が闇魔法に染まったかのようだった。



「こ、これは一体どういうことですか……!?」

「……何だあれは」



レイドですら初めて見る光景のようで、驚愕に染まった顔で空を見上げている。



「デボラがやったのでしょう、闇魔法で帝国を支配するつもりだと言っていましたが……私たちを生かしておくつもりなんて最初から無かったようですね」

「……アンリーシェ」



アンリーシェは寝ている状態から立ち上がった。

窓があったであろう場所まで近づくと、天を見上げた。



「デボラの目的は、帝国のトップに立ち、闇の力でこの国を支配すること。既に計画は始まっていたようですね」

「なら、あれは闇魔法だと……?」

「ええ、その通りです」



空を真っ黒に染める黒い物質の正体は、何と闇魔法だった。

彼女の強大な闇の魔力は、何とベレニウム帝国を丸ごと包み込んでしまった。



「ですが、デボラはもういないのに……」

「デボラがいない今、あの闇を止めることもできなくなったというわけです。まぁ、彼女が生きていたところでそんなことしないでしょうけど」



アンリーシェは落ちそうなギリギリに立ち、黒く染まった空をじっと見つめていた。

背を向けているため、何を考えているかはわからない。

突如吹き抜けた風が、彼女の羽織っていた黒いローブを揺らした。



「チェリシア、レイド殿下……最後に頼みがあるんです」



そこで、アンリーシェは二人の方を振り返った。

恐れなど一切見えない、力強い瞳がチェリシアとレイドを捉えた。

この状況になってまで、毅然とした態度でいられる女性は彼女くらいではないだろうか。



アンリーシェは二人に一歩近付き、口を開いた。



「――私に、協力してくれませんか?」



***




「……チェリシアもレイド殿下も、生きているかしら」



エルンバッハ侯爵邸では、アルセリアが親友の身を案じていた。

あの場で、チェリシアだけを残してきたことだけは後悔している。



彼女が助けを呼んで戻った頃には、既にチェリシアと魔女デボラの姿は見えなくなっていた。

レイドとステインの一騎打ちが始まり、彼は邪魔だと近衛騎士たちを追い出した。



親友の姿が見えないアルセリアは、不安感を抱きながらも侯爵邸へと帰った。

そして、何の連絡も無いまま時間が過ぎ、今に至る。



「それにしても……聖女アンリーシェの中身が魔女デボラだったとは驚いたわね」



アルセリアにとってアンリーシェは、愛する男を奪った憎き女だった。

しかし、アンリーシェもまた、自分からそのようなことをしていたわけではなかった。全て、魔女デボラに体を乗っ取られていたせいだったのだ。

そのため、今は複雑な気持ちだった。



彼女の目の前には、真っ黒な空が広がっていた。

デボラの闇の魔力は既に帝国全体を呑み込み始めており、どこに行っても似たような景色が見える。



「果てしなく続く空が……黒く染まっているわ」



突然の出来事に市民たちは困惑し、貴族たちも皇家に説明を求める書簡を送っているところだった。

アルセリアの父親もまた、そのうちの一人である。



皇帝の暗殺未遂騒動で皇太子就任式は中止となり、多くの貴族がそのまま邸へ帰った。

暗殺の犯人が聖女アンリーシェだとは、誰も予想していないに違いない。



「もし、あの女が勝利してしまったら……」



帝国はどうなってしまうのだろうか。

アルセリアはまだ、デボラの魂が消滅したことを知らなかった。

それと、もう一つ。



「ステイン殿下は……今、どこにいるのかしら」



――あの場でレイドと戦っていた、ステインのことがやけに気にかかった。



読んでくださってありがとうございます!


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