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【完結】処刑エンドの悪役令嬢に転生したので破滅回避を目指したら、悪役皇子に溺愛されました  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)
第三章 聖女アンリーシェvs悪女チェリシア

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106 神殿へ

レイドは床に転がったままのアンリーシェを座った状態で見下ろした。

かなりの量の魔力を消費したのだろう、息が上がっている。



「殿下……協力してくださってありがとうございます」

「チェリシアと帝国民のためだ。気にするな」



本来、あのような伝達魔法は数多くある魔術の中でも上級に分類され、今のアンリーシェに使えるようなものではなかった。

しかし、彼女はレイドの手を借りることでチェリシアにメッセージを送ったのだ。



彼がアンリーシェに自身の持つ魔力を送り込み、二人分の魔力を持ったアンリーシェが術を発動させたのである。

そのおかげで、一分という比較的長い時間魔法を使用することができた。

チェリシアに伝えたいことも、全て伝達済みである。



「それにしても、魔力を送るときですら私に一切触れないだなんて……そんなにも婚約者様が大切なんですね」

「当然だ。他の女に触れるなどあってはならない」



レイドは当たり前、というように言い放った。



「でもよかったです……あなたがチェリシアを大切にしてくれているようで」

「……チェリシアがお前のことを気にかけていたぞ。相当お前のことを好いていたようだ」



その一言に、アンリーシェの目が見開かれた。

予想だにしていなかったのか、かなり驚いているようだ。



「お前、かなり疲れただろう。ちょっとくらい休んだらどうだ。俺が周囲を見張っていてやるから、仮眠でも取れ」

「……平気だと言いたいところですが、無理をしすぎたのでしょう。お言葉に甘えて、そうさせていただきます」



アンリーシェは大きな目をゆっくりと閉じ、眠りに就いた。相当疲れが溜まっていたのだろう。目を閉じてからすぐに吐息が聞こえてきた。



レイドはチェリシアのことが心配でたまらなかったが、今ここを離れるわけにはいかなかった。

愛する彼女がアンリーシェを守れ、と言ったのだから彼女を絶対に死なせてはならない。



(……まぁ、依頼料はあのキスってことでいいか)



彼は鞘に閉まった剣を傍に置き、あぐらをかいてアンリーシェの傍を守り続けた。

そのとき彼は、ふと崩壊した公爵邸の壁から外を見た。



暗く淀んだ、曇り空。

今にも雨が降りそうなほどの雲たちが、不穏にうごめいている。



「……何だ?空が――」



このとき、帝国にいる誰もが後になって起こることとなる一大事に気付いていなかった――



***



「キャー!!!馬ってこんな揺れるの!?振り落とされそう!」



チェリシアは必死の思いで猛スピードで駆け抜ける馬にしがみついていた。

皇宮から一頭の馬を借りた彼女は、そのまま神殿まで馬を走らせていた。



ロクサーヌ公爵邸と第二皇子宮を行き来する魔石は持っていたものの、神殿までは魔法で移動することはできない。

そのため彼女は、馬で皇宮から神殿へ移動するほかなかったのだ。



チェリシアは馬になんて乗ったことが無い。

見よう見まねではあったものの、危ないなんて言ってられなかった。

どちらにせよ、馬車を探している暇なんてなかったからだ。



「それより何か空がさっきよりも暗くなっているような……?気のせいかしら?」



馬に跨っていたチェリシアは、揺られながらも空の不穏な様子を感じ取った。

就任式のときはあんなに晴れ渡っていたのにもかかわらず、今は雷でも落ちそうだ。



(まさかデボラが……何かしたというの……?)



何か嫌な予感がする、と直感的に感じ取ったチェリシアは急いで神殿へと向かった。

神殿の門の前には、二人の近衛騎士が立っていた。



「開けてください!お願いします!中に用があるんです!」

「あ、あなたは一体何ですか……!?」



あの事件以来、トップを失った神殿は解体状態となり、今は皇家が管理していた。

チェリシアは二人の前に立ちはだかり、声を張り上げた。



「――私の名前はチェリシア・ロクサーヌ!ステイン・アル・ベレニウム第一皇子殿下の命を受けてここへやってきました!」

「ス、ステイン殿下の!?」



威厳あるその一声で近衛騎士はさっと道を開け、チェリシアを中に通した。

そのまま、彼女はすぐに神殿内部へと入った。



「大事なものを隠すなら、やっぱり関係者以外立ち入り禁止のあそこしかないわよね!」



二階にある、デボラが神殿長と話していたあの部屋。

きっとあそこに、紫色の水晶玉――デボラの魂維持装置はあるに違いない。



チェリシアは無我夢中で走り続けた。

中にいた神官たちが驚きの声を上げるが、そんなもの気にもならない。



彼女は記憶を頼りに、神殿内を走り回る。

何度か道に迷っては引き返すを繰り返した末に、彼女はやっとあの部屋へ到着した。



「この部屋ね!」



手で扉を押してみるも、鍵がかけられているのか、開かなかった。

鍵を探している時間なんてない。チェリシアは渾身の力で体当たりを繰り返し、扉を強引に破ってみせた。



中に入ると、殺風景な白い壁の部屋が広がった。

何も無い部屋の中央には、小さな台が置かれており、その上に――



「……あれが、アンリーシェの言っていた……」



――異様な光を放つ、紫の水晶玉が乗せられていた。

まるでそこだけが別空間であるかのように、神秘的なオーラを醸し出している。

数種類の似たような絵の具を混ぜたような謎の物質が、水晶玉の中でうごめいていた。

きっとそれが、デボラの魂なのだろう。



チェリシアは迷うことなく、部屋へ入った。



「あれを破壊すれば、デボラの魂は消滅する……!」



チェリシアは水晶玉を床に叩きつけようと、手に取った。

しかし、その瞬間に激しい電流が全身を駆け巡った。



「キャアッ!」



思わず床に倒れたチェリシアは、顔を上げて驚いた。

水晶玉がまるで自分自身を守っているかのように、周囲に電流を張り巡らせていたのだ。



「な、何なの……?」



近づくことすらできないその空間に、チェリシアは呆気に取られた。

そしてその頃、ちょうどデボラが幻想の世界で出口を見つけていた――




ここまで読んでくださってありがとうございます!


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