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【完結済】悪役令嬢に転生したのでレベルを上げずに生き延びます。  作者: こみやし
04.天使と勇者の魔王討伐

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04-10.リリィとセーナ


 セーナは余裕の笑みを浮かべて待ち構えている。



 私は再度、風闇の繭を展開し、今度は真っ黒な竜巻を生み出していく。



「次から次へと二属性の混合魔法ばかり。まるでわたしは要らないとでも言いたげね」


「そうだよ! 私は一人で行くの! セーナはもう要らないの!」


 大きくなった竜巻をセーナに向かって放った。



「わたしに嘘は付けないってば!」


 セーナが上空に手をかざすと、上から光の柱が降り注ぎ、竜巻を丸ごと消し去った。



(この脳筋!! なによそれ!?)


 今のはただの光魔法だ。指輪の効果で威力が増幅されているとはいえ、何の工夫も無い、ただ威力が高いだけの魔法に掻き消されてしまった。


 こんなの反則だ。魔王のようなチートスペックがあるならいざ知らず、人間同士の戦いで光属性の使い手になんか勝てる筈がなかったのだ。私の努力の結晶たる複合魔法が全く通用していない。こんなのあんまりだ……。



「いい加減諦めなさい!」


 今度は大量に分身したセーナが、それぞれ巨大な光球を生み出していく。


 幻影? 同時発動? どっちも!?



 自身の身体に闇を纏い、セーナの攻撃に備えた。


 セーナの放った光に包まれて闇は一瞬で消し飛んだ。




----------------------




「それで? 敗者の申開きを聞きましょうか」


 気が付くと、私はセーナに膝枕されていた。



「なにそれ? 仕返しのつもり?」


 悪態をつきながら、セーナを見上げる。



「仕返ししたくなる気持ちも分かってほしいわね。側を離れるなって言ってくれたのになんで私を置いて逃げ出すの?」


 ついさっきまで笑みすら浮かべていたセーナだったが、その顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。



「……セーナはね、本当はセーナ・アージェントって名前だったはずなんだ。勇者として選ばれたセーナはアージェント伯爵家の養子になるはずだった。でも今のセーナはただのセーナ。私が横取りしたから」


 私は彼女が得る筈だったものを何もかも奪ってきた。



「本当のリリィはもっと大人っぽかったんだよ。頭が良くて綺麗で。私は大好きだった。でも今のリリィはこのとおり。お馬鹿で子供みたい」


 私のせいだ。何もかも。私はこの世界を変えてしまった。



「お父様が怒ってばかりなのも私のせい。私が一杯迷惑をかけたから、ずっと忙しくしてる。本当のリリィだったらもっと幸せに生きられたのに」


 ごめんなさい。お父様。どうかこれからは。心安らかに。



「折角魔王がいなくなったのに、私みたいな無駄に力を持ってる人間がいたら皆も困ると思う。制御できない力なんて怖いでしょう?」


 私はセーナとは違う。私が持つのは闇の力だ。魔王と同じ忌むべき力だ。人々は決して認めはしないだろう。



「セーナはあの国で幸せになれるはずなんだ。勇者は国の希望だから。きっと皆が良くしてくれるよ」


 お父様だってお母様だって。私が居なくなっても大丈夫。セーナのことだって自分の本当の娘のように思ってくれるから。私を恐れる人たちだって、光の勇者たるセーナを恐れることはないだろう。



「レオンたちだって良い人たちだよ? 一緒に居ればきっと好きになれると思う」


 今からでも遅くはない。セーナなら王妃様だって立派に務まるだろう。……ごめん。やっぱり心がズキズキする。なんでだろうね。ううん。わかってる。



「それにさ。故郷の村はどうするの? 私に付いてきたら二度と戻れないかもしれないよ?」


 あんなに大切にしていたじゃない。旅に出てしまえば様子を確認することだって出来なくなっちゃうよ?



 黙って聴いていたセーナが私を抱きしめた。



「わたしのリリィは、いっぱい考えるくせに、何も考えずに行動するし、すぐに元気になるくせに、いつまでも昔の事をうじうじ悩み続けてるし、とっても面倒くさい子なの」


 うん。そうだね。



「でも、わたしはそんなリリィが大好き。わたしが好きなリリィは賢くないし、大人っぽくなんてない。公爵様だって、他の皆だってそんなリリィが大好きなの」


 ……うん。



「いつまでもゲーム、ゲームって、私はゲームの主人公なんかじゃないし、セーナ・アージェントでもないの。ただのセーナ。それの何がいけないの?」


 ……。



「この世界はゲームなんかじゃないのよ? ゲームの記憶に振り回されて、何度も何度も失敗してきたくせに、いつまで拘っているつもりなの?」


 ……。



「わたしはもう聞き分けのない子供じゃない。故郷の皆の気持ちも今ならわかる。だからもう、私は旅立てる。あなたは変われないの?」


 ……私……は。



「わたしの幸せはリリィの隣にしか無いのに。勝手にわたしの幸せを決めつけないでよ……」


 セーナは泣きながら、私を抱きしめ続けた。



 私はなんて馬鹿だったのだろう。


 セーナを信じると決めたのに、またセーナの気持ちを信じなかった。セーナを裏切った。


 私の罪悪感をセーナに押し付けて、尻拭いを押し付けた。私の未練をセーナに背負わせようとした。セーナの気持ちを無視して私の都合を押し付けた。セーナを……。



「……ごめんね。セーナ。好きになってくれてありがとう。私も大好きだよ」


「バカ……バカリリィ……気付くのが遅いのよ……」


 ごめん……ごめんね……セーナぁ……。

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