04-09.逃走
私は遠く離れたセーナたちを見つめていた。
王都への帰還中、お花を摘みに行きますと一行から離脱した私は、空中に上がってセーナたちをギリギリ目視できるところで振り返った。
今、セーナはレオン達と談笑しているようだ。
昔の冷たい態度が嘘のように、セーナは仲間たちと笑い合う。
「ちょっと前まで私以外に興味無かったくせに」
長い戦いでセーナの心も溶かされてしまったのだろうか。
良い事の筈なのに素直に喜べない自分がいる。
セーナには誰より幸せになってほしいのに……。
悔しい気持ちと、セーナへの思いが溢れて止まらない。
けどダメだ。もう行かなきゃ。
「大好きだよ。セーナ。バイバイ」
最後にもう一度、セーナの姿をしっかりと記憶に焼き付け、逃げるように飛び立った。
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皆から十分に離れたと判断し停止した。
ここまでくれば流石のセーナも探知はできまい。
「さて。どこに行こうかしら?」
他の国ってどこにあるんだろう。
海を越えれば見つかるかな?
そんなことを考えていると、突然背中に衝撃が走った。
「っ!?」
「どこにいくですって? お馬鹿リリィ」
大きく高度を落とした私をセーナが見下ろしている。
意味がわからない。
レオン達と一緒にいたはずだ
たとえずっと探知していたって、あの距離で間に合うはずがない。私の飛行速度の方がずっと速いのだ。
「レオン達といたんじゃなかったの?」
「聞きたいのはこれのこと?」
セーナが分身した。
は?
何その魔法!? 見たこと無いんですけど!?
「私は最初から付いて来ていたわよ。リリィの感情は見えているのだから、私に企み事なんか出来るわけないじゃない」
……そうだね。忘れてたわけじゃないんだけどさ。
「それで? 申開きを聞きましょうか」
「私はまだ負けてないわよ」
「じゃあ、負かしてあげる」
「今はそんな気分じゃないわ!」
セーナを背にして逃げ出した。
しかし、私の軌道を完全に読んでいるセーナは、的確に攻撃を仕掛けてくる。
(本当にどいつもこいつも! なんで飛んでるのに当たるのよ!!!)
逃げ出すのを諦めて、セーナに向き直った。
「勝てば見逃してくれるの?」
「いいわよ。勝てればね」
余裕を崩さないセーナに向かって風の刃を放つ。
当然の様に防ぎ、光線を放つセーナ。
「これまたやるの? 意味がないと分かるでしょう?」
セーナの言う通りだ。私たちは互いの手を知り尽くしている。今更小手先の技など通用するはずがない。
「なら見せてあげる!! 魔王には相性悪くて使えなかったけど!」
私は風の繭に闇を混ぜこんで発動する。
セーナの放った光線は闇に吸い込まれ、風に刻まれ私には届かない。
セーナの攻撃手段を潰して安全を確保した私は、反射のない黒い球体を生み出していく。
球体が大きくなってくると、いつかの様に、セーナの攻撃は吸い込まれていく。
「今度こそ耐えてよね!」
私は十分に大きくなった球体をセーナに向けて放った。
しかしセーナに近づいた球体は、光の立方体に包まれ、あっさりと消滅した。
「なにそれぇ!? そんなの使ってなかったじゃない!」
魔王戦で手の内を隠してたの!?
「これはリリィ専用だもの。リリィとの合体魔法を応用しているから、魔王には通用しないわ」
「なんで私対策の魔法なんて開発してるのよ!?」
「こうなるって分かっていたもの。今度はこっちの番ね」
セーナが光の玉をいくつも生み出していく。
魔法の同時展開!? 私はできなくて諦めたのに!?
というか! それも魔王戦で使ってないじゃない!
セーナの周囲に浮かぶ無数の光の玉から、一斉に光線が放たれた。
風闇の繭でも防ぎきれず、撃ち落とされそうになる。
私は繭の出力を一気に上げて、全て吹き飛ばした。
同時に、そのまま広範囲を闇の霧で覆い尽くす。
「リリィだって新しい魔法を隠していたのね。まさか、魔王の猿真似だなんて。面白いこと考えるわね」
闇の中に姿を隠しながら、セーナに攻撃を加えていく。
セーナの放つ光は闇に飲まれ消えていく。
「セーナ一人では無理よ! 諦めなさい!」
「冗談」
セーナは魔力増幅の指輪も使い、光の爆発で辺り一帯を吹き飛ばした。
「所詮は猿真似ね。こんな屋外で使ったって意味ないわ」
セーナの放った爆発で私の姿が露わになった。
「まだ続ける?」




