03-04.思い出
あれからの私は常に一人だった。
人生の三分の一を共に過ごしたセーナが側にいない。当然他のメイドを側に置く気にはなれなかった。
セーナのいない私に魔物討伐が出来るはずもなく、今までの功績は全て勇者の手柄を横取りしていたのだ、なんて噂も広がった。
評価が地に堕ちた天使。堕天使……フフ。
まあ、間違ってはいないよ。地竜の時だってセーナがいなければ最初の一撃で死んでたんだし。
結局学院にも行けなくなって、部屋に引きこもった。
最初の頃は父も叱りつけてきたものだが、今ではもう顔も見せに来ない。見捨てられちゃったのかな……。
何日たったのか、何週間か、何ヶ月か、そんな事もわからなくなった頃、久々に父が姿を表した。
「レオン王子との婚約が解消された」
そう伝えると、他には何も言わずに去っていった。
そういえば、入学式の時にセーナが言ってたっけ?
あの学院を卒業できなければ貴族として扱われないって。
もう学院は退学になったのかな?
破棄ではなく解消ということは、父が代わりに同意したのだろう。今ならレベル上げもできるのかな? 流石にまだ本来の時期より一年以上早いはずだと思うけど。
もうどうでもいいかな……こんな世界……。
セーナがいないこんな世界なんて……。
セーナたち……魔王に勝てるのかなぁ……。
セーナは大丈夫だと思うけど、王子たちは順調に強くなっているのかな。王子たちの育成に必要なことはセーナにも共有しておいたし、きっと上手くやるとは思うけど。
私自身のレベル上げが出来るのなら、何もかも放りだして逃げ出してしまっても良いかもしれない。ちょっと早いけど冒険者を目指して旅に出ようかな。
どうせもう父様にも見捨てられちゃっただろうし。
うん、なかなか良い案な気がしてきた。
資金稼ぎは出来ていないけれど、昔ダンジョンで取ってきたガラクタ売り払えばなんとかなるかな?
のそのそと動き出し、クローゼットの隅にまとめられたガラクタを漁ってみる。
それらを見ていると涙が溢れてきた。
これもセーナとの大切な思い出だ。
初めて一緒に行ったダンジョンの戦利品。
二人がかりで手探りの研究を重ねて、効果を調べ上げた。
結局大した効果もなく、部屋の隅に追いやられていた品。
本当にこれを手放してしまうの?
こんなガラクタでも大切なものだと感じているのに?
きっとこれを手放したら、二度とこの国には戻らないだろう。セーナに会うことも出来なくなる。
私はたった一人で世界を彷徨うんだ。セーナのいない一人ボッチの世界を。皆を……セーナを見捨てた後悔を抱えながら。行く宛もなく。心を擦り減らしながら生きていくんだ。
それこそが私には相応しい結末なのかもしれない。だってそうでしょ? 私は悪役令嬢だもん。世界を救う主人公なんかじゃないんだよ? 始めから何もかも間違っていたんだ。
それでも私はよくやったよ。セーナはずっと強くなった。王子たちを強くするための知識だって与えておいた。これでもう十分じゃないかな。ゲームの通りにここで退場するべきなんだよ。本来のリリィを見習って。潔く。せめて高潔に。
……主人公が……悪役令嬢は……要らないって……そう……言ったんだから……さ……。
そんな事を考えていると、増々涙が止まらなくなった。
「会いたいよ……。セーナぁ……」
あんなに手酷く捨てられてしまったのに、私はまだセーナから離れられない。忘れられない。諦めきれない。
ひとしきり泣いた後、私は決意した。
強くなろう。もう二度と足手まといだなんて言われないように。セーナの意図した事かはわからないけど、私の成長限界は大きく解除されているはずだ。
セーナに追いついて! もう一度手に入れるんだ!
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その後、まず父の元に向かった。
「私どうしても強くなりたいの! しばらく外に出ます! 許可をください!」
執務室に入るなり、頭を下げる。
「そうか。わかった。ならば、着替えてから出かけなさい」
父は優しい顔をして答えてくれた。
私はヨレヨレになった着っぱなしの部屋着姿だった。
恥ずかちぃ……。
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部屋に戻って準備を済ませ、ずっと前に計画しておいたプランを思い返す。私のレベル上げ計画だ。
今の私にはゲーム知識に加え、セーナのレベル上げを行った経験もある。プランを少し修正しながら、目的地に向かって飛び立った。




