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夜会当日。
指示通りに早朝から登城したラティオとフィリアは、それぞれが係の女官にもみくちゃにされた。
何かを揉み込まれ、洗われ、整えられ。
次に二人が顔を合わせたのは、既に夕刻にさしかかった頃だった。
「兄上……またこのような……」
「似合うではないか! 我が義妹殿も、なんと美しいことか!」
弟とその婚約者に自らが選び仕立てさせた盛装を着せ、王は大層ご満悦である。
華美でないが一目で上等なものだと分かるそれに、ラティオもフィリアも肝を潰した。
「今宵は形式張った夜会ではない。たまたま城で開催されただけの、身内の会だ。そう固くならずともよい」
「城で開かれていることが問題なのです、兄上」
「気にすることはない。ただの城だ」
兄のペースに巻き込まれて、ラティオはすっかり拗ねてしまった。
そんな兄弟のじゃれあいを、フィリアは王妃陛下と並んで微笑ましく見守る。
異母兄弟とはいえ、王とラティオはよく似ている。
その薄い色の金髪も、黄金の瞳も、揃うとより輝くようだ。
ラティオはやっとのことで己を撫で回す兄の手を逃れ、フィリアの横に逃げ込んできた。
それと受けて、王妃陛下が王のもとに向かう。
いくら非公式な会であろうと、両陛下も相応のお支度があるのだ。
「なんだか首が寒い」
「髪も切られてしまいましたね。でも本当に素敵です、ラティオ様」
「……ひとつだけ、兄上に感謝しているんです」
「?」
「フィリアを、こんなにも美しくしてくれたこと」
ラティオがいたずらに笑い、フィリアは照れたように口に手を当てて笑う。
そして、そっと手を繋いで微笑みあった。
王と王妃は、その様子を見て目を細めた。
どうか最愛の異母弟とその伴侶が、永遠に微笑みあえるように。
王はそっと、女神に祈った。




