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(第60章 傷ついた天使たち)



そこには、長女の誕生を祝いに来てくれた永井社長の姿があった。

なぜか、永井の胸の中では、赤ちゃんが安心しているかのように、ぐっすり眠った。

本当のパパである奥野の抱き方が悪いのか、抱かれると大泣きして、眠るどころではなかった。

なので、初めて会った永井に、これほどなつくのが面白くなく、変な嫉妬すら感じてしまうのだ。

そして、娘が三歳になった時、二人目の子が生まれた。男の子だった。

どこか永井悠一会長に面影が似ていた。

「奥野先生と永井家は血族なのかしら?」と美子が疑い始めた時、奥野から事実を知らされる。

「美子には、すでに気がついていると思うけど、子供たちの父親は悠一君だ。申し訳ない。僕には種がないんだ。それでも家族が欲しかった。愛する女性の子供が。そして、愛する男の子供に会ったら、愛情をかけることができると思って、悠一君に持ちかけた。

彼は家族はいらなかった。女も愛せなかった。しかし、意識のない美子ちゃんだけは抱くことができた。意識のある女は怖いそうだ。

僕は両刀使いだから、二人とも愛せる。そして、愛する二人の子供なら、無条件に愛することができる気がして、こんな偽装を仕掛けてしまった。

美子ちゃんが悠一のことを愛していて、失恋したから僕と結婚してくれたことも承知している。だから、それぞれの障害を包み隠し、幸せになるには、これしか方法はないと思って。

美子ちゃんには悪いと思っている。このまま言わずにおいた方がいいかな、と迷ったけれど、できた子供に対する悠一君の執着は、想像以上だった。このままでは、どうせわかってしまう。それなら、僕の口から本当のことを知らせたかった」すまなさそうに、淡々と話してくれた。

「永井社長は、私を抱くことができたんですか? 愛してもいないのに?」と聞くと、奥野は大きく頭を横に振った。

「美子ちゃんのことは、好きだったよ。でも、手を出せなかった。家族になるのも、恋人になるのも、嫌な記憶が邪魔して逃げてしまったらしい。

僕が美子ちゃんを好きなのも、悠一がキミを好きなのも間違いない。でも、面と向かって普通の男女のように愛し合う勇気がなかったんだ。

でも、悠一は二人を子供として認知して、自分の遺産を継承してもらいたいと言っている。しかし、僕も二人を自分の子として育てたい。だから、悠一が死んだ時にだけ効力を持つ書類を用意している」

そう言うのを遮って、「遺産やお金なんて、どうでもいいんです。自分の心が壊れそう。少し一人にさせてください」と、赤ちゃんに顔を埋めて泣いた。

あの体に残ったあざは、永井のキスマークだったのだろうか。

そんな幸せな瞬間に、気を失っているしかない自分の情けなさ。

おっぱいをお腹いっぱい飲んで、げっぷをして眠ってしまった、まだ名もつけていない長男に添い寝をしながら、初めて永井の横で添い寝した、あの朝のことを思い出す。

「パパと同じ、可愛い顔をして」と言って、そっとキスをする。甘い、いい香りがする。

永井の美しい母親は、こんな無邪気に眠っている赤ちゃんの永井の姿を見て、自分の運命を呪ったのだろうか。いや、人工授精で愛する人の子供を授かったと思えば、何も悲しいことなどないじゃないか。

そう思い切り、考え方をポジティブにしてみたり、二人の企みに乗って、玩具にされた自分を不幸だと思ってみたり。

それでも、永井のことが好きで、二人の愛する子供が、その悠一の子であるという真実に、何の不満があるだろう。

しかも、家族の愛を知らない永井よりも、愛情深く育てられたエリートの奥野の妻であることの方が、どれだけ安心して子育てができることか。

頭のいい二人が考えついたことに、何の矛盾があるだろう。

複雑なトラウマや、錯乱しそうな愛情の隙に翻弄されることなく、今、目の前にいる愛しい我が子を抱きしめ、愛情を注ぎ込んで育ててみたい。

女は、子供ができると、どんなに愛した男よりも大切になる――それは本当だったと、美子は微笑すら浮かべていた。頼りがいのある夫と、美しいパパ。

愛し合う三人のもとに生まれてくれた、愛しい二人の我が子。

真実なんて、どうだっていい。この愛が溢れて、どんな汚れも、憎悪も、不幸も、すべて流してしまうだろ。






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