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強い光と勇者様 エミューによる証言

 段々と、眩しいぐらいに神々しく、思わず顔を背けたくなるような虹色の魔力の光が収まってきました。これが『神気』だ、と言われれば信じてしまいそうなぐらい神々しかったです。

 けれども、確かにその魔力? 神気? からは智成さんの痕跡、それこそぽかぽかとした暖かさ──陽気もしくは妖気──が感じられて……ま、まるで優しく、だ、抱きしめられている様でした……! 包むように、包み込むように──。

 ……嗚呼、私は智成さんにパッキングされたお菓子(人間)なのだわ。

 ──はい? 何でしょう? ……意味がわからない? 理解不能だと? 大丈夫、私もわからない。一体全体私は何を言いたかったのでしょう? これが、神のみぞ知るって事ですね。(駄文……じゃなくて、多分違います。)


 ハッ、そうだ! 智成さんは、智成さんはどうなったのでしょう!?


 ……ようやく、完全に虹色の光が消え周囲の様子が分かってきました。名残り惜しいことに、もうあの感覚は味わえないのですね。

 ……このゴタゴタが終わったら、適当な理由をつくって彼に実際に抱きしめてもらいましょう。そうです、そうです、そうしましょう。えーえー決定ですとも。


 ……コホン、そ、それよりも、智成さんです。


 私はゆっくりと目を開きました。さっき、ちらりと言ったようにようやく、ようやく視界に入れても問題が無くなったわけです。問題さんがいなくなった訳です。

 しかし、あまりにも信じられない光景に私は──



「ああ……、ここは死後の世界なのですね。」



 と呟くことしか、できませんでした。私の思考能力はいっぱいいっぱいです。表面張力で辛うじて保っていたグラスの平穏は、呆気なく破られたのです。どうやら形容量を軽く凌駕しちゃったようでして。

 ……いや、待ってください。もはや、そう思ったほうが自然なのではないでしょうか。そう考えると納得がいきます。どんなに眩しくて、神々しく、聖なる気だとしても、あの優しくも柔らかく、かと思えば、力強くしなやかで芯の強さが、あの光からは感じられました。全身に智成さんを感じられて、私はなんて幸せ者なのでしょう。



「昇天とはきっと、このことを云うのですね。」



 いい気分であった私は物知り顔──したり顔とも言う──をしていると、そんな言葉が緊張で少しかさついた唇から思わず、口をついてでました。すると、ちょっとした縁で昔、お知り合いとなったアンティカノス王国の国王様より、窘めの言葉を頂くことになってしまいました。


「いやいや、現実を見なさい、エミューちゃん。我々の心の臓は今尚、鼓動を刻み、全身へ生命の源、赤き血潮を送り込んでいるではないか。」


「一理ありますね。……それでは、そんな国王様にお尋ねしましょう。」


「ふむ? 別に構わんが……何をだね?」


「では、遠慮なく。何故、私の勇し……間違えました、私たちの勇者様は神々しい気配を出しながら、四獣神様方とお戯れになっておられるのでしょう?」


「ははっ、これは異なことを。流石に、いくら絶大な力をお持ちになっている、今代の勇者様であってもそれはないだろう。──ふむ、いい加減もういいのではないのかな。脅威──ではないな、未知なる気配は去った。(厳密にはこれも違うと思うが)疾くその厳戒態勢を解くが良い。」


 まったく……いちいち大袈裟な、とぶつくさ、つぶやく声が聞こえると同時に、騎士団の中でもエリートの中のエリート──部隊名は忘れましたが、相当有名な筈です──あの騎士団長様には届かずとも、一人一人が部隊長を片手間であしらえるほどの実力は最低でも有している集団の人塊が、何事も無かったかのように消え失せました。──と言っても元の位置に戻っただけですが。

 いっそ城壁と言ってもいいぐらいの堅固さを誇る、王国の盾の最終形態。幾重にも重ねられた生垣、いえ人垣は緊急時のみに適用され、数多の戦で一度も破られたことのないと言われる程、守備力に長けているそうです。


 警戒態勢が解けて、視界の開けた国王様はその光景を目に収め──


「いやいや、まさか、ね。流石にあの勇者でも四神獣様を降臨申し上げて、あまつさえ戯れるなどある訳が──」



 一瞬の静寂。



「──ってホンマや!」


 ──と、ある意味、予想通りの返答でした。


「た、戯れる……だ、と? 一体、アレのどこが……どこが! 遊びだと言うのだ……!?」


 マイペースな私たち以外、驚きに唖然とする中、突如響いたのは、どこか疲れを感じさせる美声でした。この、疲れを滲みさせつつも、人を惹きつける落ち着いたハスキーなボイスは、第一王子のライラック様でしょうか。

 この王都と同じ名を持つことを許された170cmの美丈夫は齢20歳にして国王の代理を卒なく──むしろ現国王よりも効率よく──こなすことのできる、秀才、天才というありきたりな言葉では生ぬるい才能を持ったお方です。

 また、茶色に近い金髪に、ブラウンの瞳、涼しげな形の細い眉などと整った容姿であり、性格も生真面目でありつつも、ジョーク、冗談の類も通じ、国内はもちろんの事、他国からも縁談の話が絶えないそうです。


 ──っと長くなりました。……そうそう、“戯れる”の(くだり)でしたね。一言で言うと確かに、遊びの範囲は飛び越えて──というか、ぶっ飛んでいますが、その相手が神様と勇者様だと知ったら、ああ〜、なるほどって感じです──とはもちろん、なりません。なる訳がないじゃないですか。

 どうやら智成さんが結界を張ってくださったようで、被害らしい被害はひとつもありませんが……えーと、モノスゴイコトガオコッテマス。

 辛うじて見える程度なので、詳しくは分かりませんが具体的に描写すると、こんな感じ、ですかね。


 どれが本体かわかないほど残像が大量に飛び交い、それと同じくらいの属性魔弾(ファイヤーボールなど)などの初級魔法──威力は言わずもがなですが──から神聖級に限りなく近い天上級の魔法が次から次へと、これまた見たことのないスピードでビュンビュン飛んでます。


 そして、忘れてはいけないのが、彼の表情です。どの残像をみても薄ら笑いを浮かべて、むしろ笑いだしそうなのを我慢しているようでした。

 そこから私たちは、この信じ難い光景を戯れると表現をしたのです。


「ほら、やっぱりここは死後の世界なんですよ。」


 何度見ても、非現実的な様相にポツリと漏らすと、聞くとつい安心してしまうあの声が、私の鼓膜を揺らしました。


「おいおい、散々な言い様だな。」


「と、智成さん!?」


 そう、そこにいたのは、先程まで死闘を嗜んで(遊んで)いらっしゃった私の……いえ私たちの勇者様でした。

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