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晩餐会 上

 のめり込んてしまう作品って、悪役を書くのが上手いんですね。最近自覚しました。そう考えるとまだまだ、キャラの設定が甘いことこの上なし、ですね。

 扉を開けたら、意味のわからない光景が広がっていた。いや、ほんとに意味がわからない。エミューちゃんも驚きを隠せないようだ。かすかに息を呑む様子から推し量れる。


 充分な面積と貫禄を備えた長机が、デデンと置かれているのはわかる。ここまでオーケー。うん。


 ……ここからが、わからないところだ。一目で上座と断言できるところには誰も座っておらず、左側には、アレク王、フィーリア王妃、ペオニー第三王女、右側にはライラック第一王子、フィオナ第一王女、ティース第二王子、フリージア第二王女の順で並んでいる点だ。それだけに留まらず、左側の壁にメイドがズラッーと1列に整列している。

 さらにさらに、例外なくみんな最敬礼をしている。



 ──なんでやねん!?

 勇者、つっても、まだ仮やっちゅうに!


 そんな納得いかない思いを胸に、意図せず(・・・・)俺の体は堂々と左側の通路を歩みを進める。


 三歩ほど、後ろからついてきていた、エミューちゃんが、椅子を引いてくれたので、躊躇いもなく(・・・・・・)座った。



「顔を上げよ。諸君、此度の晩餐会の準備等々、誠に大儀であった。着席してグラスを掲げよ。」


「仰せのままに……」


 アレク王が代表して答え、直立不動のメイドを除き、各々の席につき、アレク王夫妻は食前酒の入ったグラスを、王子達も、何かしらの果物水の入ったグラスを掲げた。


「余計な言の葉は、不要であろう。それでは、乾杯。」


「「「乾杯」」」


 西洋式のグラスを掲げるだけの乾杯を終え、料理が運ばれてくる。


「……」


「……」


「(エミューちゃ……コホン、そこの君。ちょいとこちらに)」


 食べているのに全く音がしない、沈黙の最中、王がエミューちゃんを呼んだ。俺はそれを表情を変えずにカッテージチーズ的な乳製品をマイグラントサーモンで巻いてある前菜を口に運ぶことで気にしていないことを示した。


「(お呼びでしょうか?)」


「(ああ、先ほどフィオナに神託が下ってな。その内容というのが……)」


「(……言いにくのならこれ以上ききませんが?)」


「(──────。)」


「(──っ! ───────。)」


「(──────。)」


「(──。)」


 用が終わったようなので、今度は俺が念話で話しかける。


『エミューちゃん、晩餐会って会話しちゃいけないの?』


『そんなこと無いと思いますけど……』


『ふーん。まあ、いっか。』


 でも、このままだと、ぜーんぜん楽しくない。エミューちゃんとの約束が守れないじゃないか。



★─★─★─★─★─★


 やくそく?

 やく、そく……?

 何の?

 誰と?

 いつ?

 何処で?

 何故?

 どうやって?


 やくそく


 約束、約束


 ───あっ……!?



★─★─★─★─★─★




「そろそろ打ち合わせとかしたいんだけど」


 なぜか、ビクッとアレク王が体を跳ねさせる。こりゃなんかあったな……


「は、はい。明日の勇者誕生の儀でございましょう?」


 おかしすぎる。絶対なんかあったな。


「──その前に、アレクさんよぉ。態度が風呂にいた時と今と全然違いやしねぇか?」


「………………」


「……沈黙、ね。さっさと、吐いた方が楽になるよ。でないと──」



 ──この国沈めるよ



「──ッ!? は、はい、た、ただいま。じ、じつは晩餐会が始まる15分ほど前にフィオナが神託を授かりまして……」


「それで?」


 フィオナ王女が、巫女でもある件。



「今代の勇者は神であるこの儂と、対等以上に殺り合えるから、くれぐれも粗相のないように、と。」


「……なるほど。あの、駄神が……!」


「トモナリさん、トモナリさん、殺気が漏れてます。一部の他の方々が、怖がってらっしゃいます。」


 ──とエミューちゃん。


「っと、悪ぃ。エミューちゃん、良く平気だったね。」


「勿論ですよ。トモナリさんが、私に危害を加えることなんて、例え世界が滅んでも無いって信じてますから。」


 輝くような笑顔でそう断言され、俺は言葉を失ってしまった。どこからそんな、確信がくるのかわからないけど……うん、悪い気はしない。


「わ、(わたくし)も、勿論信じておりましたわ。」


 ──と、取り繕うようにフィオナ王女。


「そ、そうか。……それより、アレクさんよぉ。あの風呂場でのやり取りは、なんだったのかなあ? わざわざ、時間とって俺の人間性を測れるようにしてたってのに。非常に残念だ。──人を見る目を養い直したら?」


「……」


「だから言ったのです、お父様。むしろ普通にしない方が粗相にあたるって。わたしたちも、よく知っているはずなのです。」


 プクゥと、頬を膨らませ、怒っているフリージア王女。なんというか、可愛い。怒ってる姿が可愛い。小動物が威嚇してるみたいで微笑ましい。

 ていうか、この子最初に助けた、俺の父性本能を刺激しまくった子じゃん。見覚えあったのは、最初に召喚された時のことだったのかな。


「ほぉ〜ら、あなた。フリージアにも言われてますよ〜。ぐうの音も出ないんじゃないんですか〜。」


「……ぐう……」


 ほんとに出してどーするよ。


「で、でも、登場した時のトモナリ様のお姿、とってもかっこよかったですわ。公務の時のお父様よりも。」


 ──と、フィオナ王女。頬を赤らめながらそんなこと言わても、困っちゃうな。どう返答しろと?


「そ、そう?」


「ええ! 天と地ほどの差がありましたわ。雲泥の差ってこのことを言うのですね。」


「グッサァ……!! そ、そこまで言わなくてもいいんじゃない!? フィオナちゃん。」


「お父様は黙ってください。いま、トモナリ様とお話してるんです。それと、ちゃん付けしないでください。」


「……あぁ、あの優しかったフィオナは、どこか、旅にいってしまったのか……」


「バカなことばっかり言ってないの〜。そのくらいされても〜、何も言えない状態にしたのは〜、あなたなんだから〜。」


「グッ……、おっしゃる通りです。」


「わかったなら〜、しばらく気配を消してなさ〜い。」


「……。」


「わかった〜?」


「了解です。」


「よろし〜ぃ。トモナリくん、話の続きをどうぞ〜。」


「んー。扉開けてから、乾杯するまで自分で、動いたわけじゃないんだよね。」


「「「……?」」」


「てっきり、場慣れしていたのだとばかり思ってましたわ。」


「いやいや、あれ初めてやったし。そして、それが不思議なんだよな。自分の意思じゃなくて、自然に、それこそ操られたみたいに体が動いたんだよね。」


「「「……?」」」


 みんなが、首をかしげるなか、ペオニー王女が、おもむろに小さく可愛らしい口を開いた。


「……ちょも……トミョナ…………お兄ちゃん、の……」


(((お兄ちゃん……!?)))


 舌っ足らずな口から、“お兄ちゃん”が出てくるという、衝撃な事実に驚くも、そんな驚きがちゃちなものに思えるほどの事情が、明らかになる。


「……背中に……さっきまで……聖霊が、……いた……」


「精霊ではなくて〜、()霊なの〜?」


 ゆるっと、ふわっと、フィーリア王妃が聞き返す。


「……そう、……聖霊。」


「だから、なのか……。」


 ようやく合点がいった。でも何故、半ば支配される形で影響されてたのに、それがとけた?


「心当たりがあるのですか? トモナリさん。」


「ああ……まあ、な。言えはしないけどな。」


「そう、ですか。」


「悪いな、コレばっかりは。ある程度の何か……例えば血筋とか資格、手っとり早いのが実力、……ぐらいか、とかがないと、命が危ないんだ。」


「それは仕方ありませんのね。」


 フィオナ王女も気になってんだ……。


「あらあら、まあまあ〜。すっかりトモナリさんも〜、娘達に〜、(ほだ)されてしまって〜」


「──!? まあ、毒気が抜かれたのは確かだ。」


 絆されるなんて、実用会話で初めて聞いた。王妃って気の抜けるしゃべり方するのに、毒と刺が混じってるよね。


「ほぉ〜ら、あ・な・た、娘達に国救ってもらったんだから〜、感謝しなさいな〜。」


「……。あ、ありがとう。助かったよ。」


「「「………………。」」」


 父親が謝り、変な空気流れる中──



「……完全に空気でしたね、ライラック兄様。」


 ──ポツリと、ティース王子の言葉が響く。


「仕方あるまい、ティースよ。こういう時もあるさ。滅多に起きて欲しくはないがな。」


 それに対して、心底疲れたような長男の返答が、一同の言葉を代弁していた。

 会話で特徴出すのって難しい……。早くもレパートリーが消えかけている件。

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