我らが麗しき魔王様 出立す
お久しぶりでございます。グラオザムです。勉強の合休憩時間(脳は休んでない)にちょこちょこ進めていた改稿作業がひと段落着きました……たぶん。見逃してるとこもあるかも知れませんが。
特に『プロローーグ』と『裏通りにて』が大きく変わってます。暇な時にでも読み返してもらえると幸いです。
初期ってすごい文章下手でしたね(笑)……読み返して辟易としました。まあ、なんとかなった筈です。
それでは、また。
吾輩は悪魔である。名前はある。フュマーレと言う、父様と母様が考えて下さった立派な名前が。
そして、地位も実力もあると自負している。何しろ、魔王様の近衛師団団長という大任を仰せつかっているからな。
──魔王様は吾輩らが逆立ちしたって、例え天地がひっくり返っても、万に一つも勝てる見込みがないほどお強くいらっしゃるため、守る必要は皆無だ。個人的には、失礼に当たると思う。だから(?)殆ど雑用係みたいなものだ。魔王様関連の。
何はともあれ、光栄なことには変わりない。と言うか光栄過ぎて死にそうである。この場合きっと、診断書には“栄誉死”と書かれるのだろう。もう、誇らしくて誇らしくて仕方がない。
そんな吾輩は今日、広大な魔王城の最上階にある執務室に向かって歩を進めている。場所からも分かるように吾輩らが敬愛してやまない魔王様が使ってらっしゃる。
尤も、今はわかり易いように魔王様と呼んでいるが、普段は、可能な限りの敬意と畏怖を込めて“閣下”と呼ばせて頂いている。
閣下の執務室に吾輩が尋ねることはあっても、呼ばれることは早々ない。ともすれば、初めてではなかろうか? 心無しか嫌な予感が······。か、閣下に限って滅多なことはあるまい。あの方は、聡明で明哲で明敏で怜悧でいらっしゃるからな。
全二十階層に登る魔王城の内、上から3階は閣下がお使いになり、4階は吾輩ら近衛師団、あとは調理室や会議室、各科(食料担当とか政治のこととか)のフロア、使用人の部屋ぐらいだろうか。詳しくは把握していない。
17階(つまり、上から4階)から魔導運箱を使い、直通で最上階の20階へ。ミスリル銀の不思議な輝きをもつ、長方形の箱から出る。床にはあらゆる音が消されてしまいそうな程のワインレッドの分厚い絨毯が敷かれている。
毎度思うが、ワインレッドの絨毯はある程度、時間が経った血のような色をしていて、なんとも閣下らしい。
本来ならこの様な閣下を評価する言葉など畏れ多くて──恐れ多くて、できないが心の中であるし、不問としよう。
エレベーターを出て直ぐの突き当たりを左に曲がり、しばらく進むと木材のなんとも言えない重厚な輝きを放つ扉が見えてくる。
吾輩のごとき矮小な存在など、当の昔に閣下は気付いておられると思われるが、礼儀としてドアノッカーをならす。龍が槍を咥えている、このドアノッカーは閣下の師匠が、魔王就任祝いに、と贈られたものらしい。そして、この龍が魔王軍のシンボルだったりする。
先代勇者襲撃時、つまり第十五次人魔対戦のときには、あの龍のシンボルがのぼり旗に克明に描かれており、その様は壮観であった……。今でもありありと思い出せる。
あの時を思い出すと血が高ぶる。初めて閣下の力の一端を垣間見たのもこの時であり、この御方に一生ついて行こうと心に決めたのもこの時だ。
あの戦いで大好きな父様が殉死してしまったのであるが今は関係あるまい。
──おっと、また悪い癖で考え混んでしまった。兎にも角にも閣下との対談である。
返事があったことを確認し、中へと足を踏み入れる。全体的に暗い赤色で構成された執務室には、磨き抜かれて渋く光を反射する机が鎮座している。
そこには、一目で柔らかいことが分かるソファのような椅子に足を組んでお座りになられている、閣下がいらっしゃった。
──嗚呼、今日も高貴さと気高さが迸ってらっしゃる。
「フュマーレ、ただ今参上致しました。」
自然に体が動き、閣下の前で跪き頭を垂れる。
閣下はこの体勢を何度も止めさせようとするが、コレばっかりは、どうにもならない。もう、本能レベルで体か動いてしまうのだ。きっと魔王様の威光なのだろう。
「今日、うぬを呼んだのは他でも無い。縛魂器のことだ。」
「縛魂器、でございますか……?」
縛魂器とはその名の通り、己の魂を引き裂き、器(物なら何でも良い)に縛り付けたものだ。その際には、手足の爪をゆっくりと剥がしながら、皮膚を剥ぎ取られ、骨を大質量をもって押し潰されるような苦痛を伴うらしい。閣下はそれを7回行っている。この時点で既に末恐ろしいのに、この魔法を使ったのが18歳の時であるという。
魔法に長けてると言う、くそエルフでさえも、この魔法の最少年修得者は75らしい。尤も使う人は殆どいないそうだが。
デメリットはデメリットで存在するが(主に痛み)それに見合うメリットがもちろん存在する。それは、魂を縛り付けた器が壊されない限り、本体が死んでも死なないことだ。強度は物に依存する。実質不老不死みたいなものだ。
──おっと、思考を戻さねば。
「そう、縛魂器だ。まだ、誰にも言ったことは無かったが、どうやら魂を引き裂くにつれ使える魔力や魔法の威力、さらには身体能力が下がっておるようだ。」
下がってあの威力なのか……どんだけ規格外なのだろうか。
その状態で先代勇者を瀕死に追い込んだことも忘れてはならない。そのせいで閣下がしばらく眠りにつくことになったことは誠に許し難い。勇者のヤツをこの手で殺して差し上げよう、と言いたいところだが閣下を封印せしめた直後に死んでしまった。あれが彼の全力だったに違いない。
「今代の勇者は最盛期にして全盛期のフルパワーで挑まねば、封印どころでは済まないような気がしてならない。うぬはそうは思わんか?」
「申し訳ありません。閣下の最盛期にして全盛期のフルパワー、並びに今代の勇者の実力を把握しておりませんので、返答しかねます。未熟な吾輩をどうかお許しください。」
「よいよい、うぬのそんな風に己の意見をしっかり述べるところを見込んでこの地位に引っ張りあげたのだからな。ワシの周りにはイエスマンばかりだからな。まるで使えない。」
「有り難き幸せにございます。ただ、何よりも御自身のことを一番わかってらっしゃる閣下がそうおっしゃるのであれば、そうなのでしょう。」
「ふむ、まあ、備えあればなんとやらだ。各地に隠してある縛魂器を集めに旅に出る。」
「そ、それならば他の者、或いは、吾輩が······」
閣下は吾輩の言葉を見越していたように言い終わる前に言葉を重ねなさった。
「うぬらのことが信用できん訳では無いが、何かの間違えで見つからんように仕掛けを数えるのが嫌になるほど仕掛てある。そして最後にはワシの魔力波でしか空かない扉も、な。よってワシと付きのもの一人で出掛ける。」
「はっ! それならば付きのものに吾輩を……」
「ならん。うぬにはワシの代わりにしばらくここの統治をしてもらわねばならんからな。うぬの双肩に全てかかっておる訳だ。」
「りょ、了解しましたっ! 必ずやこの任を完遂致しましょう。」
「頼んだぞ」
「はっ!」
「旅の準備は既に出来ておる。ここにワシの直筆でその旨を書いてから後ほど通達する様に。では行ってくる。」
「どうか、ご武運を!!」
── ←これって罫線って言うらしいですよ。読んでいる小説に書かれていて最近知りました。




