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俺のメイドと彼女の執事

 学年集会や、講演会で危機感を煽られまくったので、そろそろ受験勉強に突入しようかな……と思います。

 これまで以上にスローペースになると思いますが、エタることはないので、これからも宜しくお願いします。

 俺は今、豪華な部屋を前にして現実逃避気味に彼女(王女)の頭を撫で続けている。編み込みがしてあるので、髪の毛を梳くことはできないが非常に触り心地がいい。

 中世ヨーロッパ感があるこの世界では、現代のようなシャンプーやリンスがあるとは思えないが、どうやってケアをしているのだろうか?


 そんなような、あまり重要ではないことを、つらつらと考えていると、不意に気温が急激に下降したような感覚に襲われた。

 背中に視線を感じたので、恐る恐る振り返ってみる。すると……


 目に映ったのは、見覚えのある鮮やかで清潔感のある青い髪をポニーテールにした、ナイスバディな美女がニッコリと微笑んでいた。

 尤も微笑んでいたのは口元だけで、目は笑ってなかったが。


 だいたい予想はついていると思うが、我らが(?)アリエス荘の看板娘こと、エミューちゃんである。


「え、エミューちゃん!? なぜここに? と言うか、それ以前に何故メイド服?」


 そう、彼女はメイド服を着用している。メイド服のスカートは膝上10cm程で特別、長くもなく、短くもなくといったところ。ハイソックスとのコラボレーションで生まれた絶対領域が眩しい。


 つい最初の言葉で声が裏返ってしまったのは、ご愛嬌だ。俺に愛嬌は一つも存在しやしないが。


 メイド服を押し上げている、破壊的な威力をもつ胸元に目を向けないようにして、会話を続ける。


「彼女が専属のメイドさんに決まったみたいですわ。その様子からすると既に面識はあるのですね。」


 なんと疑問に答えてくれたのは隣にいる王女である。


「お初にお目にかかります、フィオナ王女殿下。私はエミューと申します。この度、勇者様の専属メイドと相成りましたことをご報告致します。」


「ご苦労様です。くれぐれも粗相のないように。」


「畏まりました。」


 美女と美少女が会話しとる……! なんて素晴らしい光景なんだ。

 そしてこの俺の場違い感……! 遠くから眺めるだけで充分なのに……


「姫、そろそろ、お時間でございます。」


 ──っ! い、いつの間に背後に? こいつ相当なやり手だ。

 師匠によって気配に敏感にさせられた(・・・・・)俺の背後を気付かれずにとりやがった、老練の男は執事服をビシッと着こなしていた。

 いつか必ず気づかれずに背後を取り返してやる!


 ──そんなふうに闘志を密かに燃やしていると、彼がこちらを向き薄く微笑んだように見えた。


 受けて立つってか? はっ! 上等じゃねぇか。




 ──取れたらいいな…………

 早くも折れかけている、脆い闘争心にムチを打っていると──


「そう、もうそんな時間なのね。セバスチャン、次の予定を教えて頂戴。」


 傾けた耳に、そんな声が入ってきた。


 セバスチャンだって! 執事と言えばやはりこの名前に行き着くのだろうか? 


「――とその前に紹介を済まして起きましょうか。勇者様、彼が第119代セバスチャンです。代々、超一流の執事やメイドを輩出し続けるセバスチャン家の当代の家督です。」


「お初にお目にかかります、勇者様。フィオナ王女殿下の執事を務めさせて頂いております、セバスチャンにございます。以後、お見知りおきを、お願いします。」


「御丁寧にどうも。勇者になる予定の智成です。まだ、予定ですけどね。」


「ふふっ、諦めてください、トモナリ様。あとは宜しくお願いしますね、エミューさん。」


「畏まりました。」


「行くわよ、セバス。」


「はっ! 次は──」


 ──? 初めて、フィオナ王女……だっけ? に名前で呼ばれた様な気がする。……なんか怒涛の勢いだった、な……? なんか甘い香りが。


 ──ふにょん


 だああーー!? な、なんか柔らかいものが、右腕に当たってるゥー! 横をみると……




 ──エミューちゃんが、その豊かな双丘でもって腕をホールドしていた──。



「え、エミューちゃん!? 少し距離が近すぎないかい!?」


「お嫌いですか?」


 やはり声が裏返るのはご愛嬌。俺に愛嬌は(以下略)。予想外過ぎる出来ことには弱いのだ。

 おい、そこ初心(うぶ)とか言うな。


「そりゃ、好きだけども……! はっ! ……って違う、違う!」


「何が違うんですか?」


 もう追求しないでーー!! 何も違わないですっ!!



「そ、そうだ。アリエス荘の方はいいの?」


「はい。やっと研修が終わって人手が増えたので問題ないです。もともと宮仕えしないか、というお誘い自体はあったのですが、人手不足を理由に断ってたんです。でも、今回、勇者様のお付きのメイドを決めると聞いて、居ても立ってもいられなくて。」


「そ、そうなのか……。今後は宜しく頼むよ。」


「はい! そ、それで……あの……そのぉ、あ、頭をな、撫でてくれませんか……?」


 ほんのり赤く染まった顔で、もじもじとしながらこんなことを言ってきた。

 は、破壊力が高過ぎる……! 危うく倒れるとこだった。


「わ、分かった」


 俺よりも若干低い所にある頭に手を載せ、ゆっくりと髪の感触を楽しむように撫でる。


「ありがとうございます♪」


 ぱぁっと花が咲くような笑顔でお礼を言ってきた。

 うむ、いつでも女の子の笑顔は素晴らしいものである。


 意図せず、立て続けに美(少)女2人の笑顔を見ることになったが、俺が彼女たちの笑顔を守ったのだと思うと、例え傲慢だったとしても、勇者としてこの王城にきたことを誇らしく感じた。




──あれ? いつ勇者になるって決意したっけ? 

 エミューちゃんは結構ヤキモチ焼きです。


セバスチャン家

 代々、超一流の執事、メイドを輩出する家。

 アンティカノス王国よりも歴史は古い。

 有能過ぎるが故にセバスチャン家に、どの国もどんな諸侯も攻め入ることはなかった。

 本家はアンティカノス王国にあるが分家は世界中に点在している。

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