VS魔族 part8
「あー、通りすがりの者です。」
面倒臭いので取り敢えずこう答えておいた。
「……!? 黒髪……君はもしかして──ッ!」
魔族の体内で魔力が急激に膨れ上がる。
「キィサマモ、おれのジャマをするノカァ? ドウなンだァ? アァ?」
一旦は失ったと思った理性が少し戻ってきたのか片言で問い掛けてくる。目は虚ろなままだが。
「その様子だと俺には一生勝てないだろうな。ハァ、全く持って時間の無駄だ。早くかかってこいよ。ほれほれ。」
拳を受けとめてない左手の指をクイクイッと動かし挑発すると、案の定……
「ば、バカニスルナァァーーー!! ニンゲン、ゴトキィガァ! ヤツザキニシテ、ヤルゥ!!」
ほらね? 簡単に理性は吹き飛びます。プライドが高過ぎるのも考えものだね。うん。
魔族が右足上段の蹴りを放ってきたので魔力で強化した左腕で受け止める……なんてことはせず、蹴りの速さがトップスピードになる前に思いっきり叩きつける。
──ボギャ!
一生聞きたくないような、嫌な音を立てたのは勿論、魔族の腓骨と脛骨、所謂脛の骨が折れた音だ。
「グゥ、ガァアアアー!! イタイ、イタイ、イタイィ! ……」
──ギロッ!
と結構な圧力がある濁って歪で虚ろな瞳を俺に向けてくる。だが、しかし俺にとっては大したことないけどね。
白衣の師匠の殺気の方がウン万倍怖かった。食後のプリンは奪っちゃいけない。ダメ、ゼッタイ。
「……コロス、コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスゥ!! ブッッコロシテヤル!!!!」
とうとう理性が焼き切れてしまったようです。あとはもう料理するのは簡単です。
大振りになったところを、ボディブローをぶっ込んでもいいし、背後に回って手刀を入れるのもいい。
怒りで我を忘れて周りを見ることができないからね。こうなると。
あぁ、そう言えばまだ右手で魔族の左を掴んだままだった。んー、よぉし決めた。握り潰そう♪
「ブルブル、なんじゃ、この悪寒は? 彼は本当に味方なんじゃろうか? 寧ろ、魔王だ、って言ってくれた方が納得するんじゃが。」
後ろで王が震えているが気にしない、気にしない。そのせいで(?)殺気が少ーーしだけ漏れてしまったが気にしなーい、気にしない。
治療魔法を使えないのか魔力で無理やり足を固定して打ち込んでくる、魔族。俺はそれを尽く打ち落とすか避ける。支離滅裂、滅茶苦茶、乱雑で猥雑。そこに駆け引きなどは一切無い。はっきり言って興醒めである。そろそろ終わらせよーかなー。
打ち込んできた右ストレートを上方に弾くと胴体が無防備になる。鳩尾に右拳を上、左拳を下にして添え、それを発動する。
「〈魔力発勁〉」
これは己の魔力を相手の体内に無理やり送り込み体内に溶け込んだ魔力を揺さぶりダメージを与える技だ。当然その魔力に振動の概念も付け加えることを忘れない。
これは自慢になるのだが唯一白衣の師匠に膝をつかせた技だ。
どんな物体でも魔力が微量なりとも含まれているこの世界で理論上、防ぐことは不可能だ。
──ドゥン!
「グボォッ」
奴は大量に吐血して目から生気を失いゆっくりと倒れる。
──ドサッァー
まあ、こんなもんか。手加減ができず、全力で打ったにもかかわらず、一秒と経たずに平然と反撃しかけてくる、師匠の方がおかしいのだ。
「き、君はいったい、何者なんだ……?」
「だから言ったろ? 通りすがりの者だ、って」
♦朗らかに笑う、圧倒的な実力を持った少年の言葉にアレクは、ただ呆然とすることしかできなかった。




