VS魔族 part3
王宮ってこっちであってたよな? 昨日確認しといてよかった。よもやこんなに急ぐことになるとは。
♦エミューに見送られアリエス荘を出た智也は、石畳で舗装された王宮への道を走っていた。中世ヨーロッパのような石造り、時々木造の大小様々な民家を興味深そうに眺めながら道中を急ぐ。
──ッ!? この莫大な魔力はなんだ? って俺が向かっている方向じゃねぇか。つうことは王宮だな、多分。
これはいよいよチンタラ走っとる場合じゃねぇーなっ、と。
♦異変を感じた智也はショートカットを兼ねて家屋の屋根に飛び乗り、走る。駆ける、飛ぶ、駆ける、駆ける。疾風の如く。突風の如く。されど被害を出さぬよう細心の注意を払って。
だんだんと近づく王宮。だんだんとはっきり分かる異変。異様なほどに静まり返った城下町。王宮から響き渡る、悲鳴と怒号。そして、剣戟。
やっぱり厄介事が起こってやがる。それにしても、相手が魔族だとは思わなかったな。このまま見捨てるのは簡単だけど後味悪いし、何より明日の飯が不味くなる。全てはそこに帰結する!
どのくらい魔族相手に通用するかの実験も兼ねて、とっとと片付けるか。お! 第一魔族発見。
先ずは小手調べで軽く殴るか。てい!
──バッキィ!
──ドゴォーン!
……。弱っ!! 魔族ってこんな感じなのか? まだ1割も拳に力入れてないんだけど。そ、そんなはずはない。多分。
「ど、どなたか知りませんがありがとうございます。おかげで助かりました。」
「おう! 気にすんな。怪我は無いか?」
「はい! 騎士様方が身を呈して逃がしてくださったのです。それでも先ほど見つかってしまったんですが……。」
「フム。(出来るだけ助けながら倒していくか。騎士には荷が重いようだし。)とりあえず君に怪我がなくて良かった。それじゃあね」
「お、お待ちください。あなた様のお名前を……てもういない!」
(爽やかで感じの良い方でした。一体どなた何でしょう? あの魔族を歯牙にもかけない強さを持ってらっしゃる方なんて極小数なんですが。たしか、黒髪黒目……ハッ! もしかして……)
♦その頃、少女を苦もなく助けた黒髪黒目の少年は魔族をバッタバッタと倒しながらどうでもいいことを考えていた。
さっきの女の子可愛かったなー。クリっとした碧眼に肩まであったストレートの金髪。まだ10歳程度だったし将来が楽しみな容姿だったな。戸惑いながらも誠心誠意お礼を言った、あのあどけない表情が父性本能をこれでもかと、くすぐったね。まぁ、もう会うことは無さそうだけど。誰かに似てた様な気がするんだが……思い出せん。
魔族っていろんなのがいるな。悪魔っぽい羽と角を生やしたザ・魔族って感じのヤツとか捻れた角だけ額に生えてるヤツ、肌の色が水色とか紫色とか触手使ってるヤツとか。見ていて飽きないラインナップだ。どいつもワンパンだけど。
「──た、助け……て。誰、か……助け、て!」
こ、この声は! 誰だろう? 似たような声を最近、聞いたような気がする。まぁ切羽詰ってるし助けに行きますかね。幸い距離もたいしたことないし。
ワォ。切羽詰ってるどころか、もう詰んでるじゃん。
勿論、俺がいなければ、ね。ホイっと。
「勇者さ……ま?」
「──? 誰だ、貴様? オレの剣を止めるなんて唯モンじゃねぇな。」
誰でしょう
「勇者様、ですよね?」
う、うーん。合ってはない、けど間違ってもない。
「そうとも言えるし、そうではないとも言える。勇者として召喚されたらしいが、任命と承認する前に神に転移されられたからな。今はしがない冒険者さ。」
「……そ、そう言えばそうでした、ね……。」
「おい! そこの黒髪の小僧! 隊長が直々に質問しておるのだぞ。早く答えろ。」
「…………」
如何にも三下な敵さんがほざいております。勿論、無視。哀れみの目でも送っとくか。
「おい!! あ〜恐怖で答えられないのかな? ん〜? ギャハハハハハ!!」
「…………」
ダリぃー、こいつ誰だよ?
「あれあれ〜? ホントにシャベれないの?今 ならオウジョ様とやらと、後ろにいるニンゲンどもを大人しく差し出せば許してあげるよ? もちろん女の貞操は保証出来ないけどネ? ギャハハハハハ!!」
キュッと王女様(?)が礼服の裾を握ったのが分かった。怖かったんだろうな。今でもプルプルと震えている。あー、なんかムカついてきた。ただ何となくで魔族倒してきたけど、明確な理由ができちまったな。この際だ、盛大に殺して解して並べて揃えて晒してやんよ。おっといけねぇ。キョウの間の名残が出ちまった。
あれ? なんか三下がいきなり倒れたぞ? 隊長は青い顔してブルブル震えてるし。大量に汗もかき始めた。なんかしたっけ?




