VS魔族 part4
今までにないほどの難産でした。書き終わるまで何時間掛かったか分かりません……(汗)
「は、離しやがれ!」
おーおー、焦ってらっしゃる。焦ってらっしゃるゥーこんなことは初めてなんだろう。
「大人しく離すとでもお思いで?」
2本の指に力を込める。
──ビキッ! ビキビキッビキッ!!
──パッキィーーン!
(何の音だ? 割と近くから……は? 待て待て待て! オ、オレの愛剣が……! ど、ど動揺を見せてはならない……けど流石に堪える。距離を取らねば。)
智也と相対する魔族は一足に3m程飛び下がる。
「ンなもん知るかよ。今この城には数多の魔族が押し寄せている。魔族がここを占領するのは最早、時間の問題だ。どうだ? 勝ち目なんて存在しやしないんだ。怖気ついたか?」
(そして、魔法も完成間近。黙って殺られるかよ。魔王軍5番隊隊長のオレが剣しか使えねぇ、なんてことあるわけねぇだろ。)
「……? あぁ、あの雑魚どもか。あいつらなら俺が殆ど倒したぞ。他は騎士共がなんとかしてくれるだろ。あとはお前だけだ。」
「──なッ! ンなわけねぇだろ。仮に、そう、仮にそうだとしても! 援軍が来る手筈になっているから何の問題もねぇーよ。更にッ、お前の命運はここで尽きるんだよッ! 〈毒の竜!!」
(隠し持っていた魔法陣のお陰でこのスピードと完成度が実現する。これでお前とはオサラバだ。)
毒々しい紫色をした一般男性の身長と同じ高さのドラゴンの顔が形成される。顎を大きく開き、一直線に智也達へと向かう。
「やっと完成したか。まったく、出すまでが遅いよ。〈氷竜の息吹〉」
隊長と呼ばれる魔族が出した竜よりも1回り大きく、限りなく白に近い青色のドラゴンが顎を開き極寒の息を吐き出す。
ブレスが〈毒の竜〉の勢いを殺し、飲み込む。刹那には完全に白くなり勢いのなくなったドラゴンのオブジェクトは床へと重力に逆らうことなく、落下し始める。
──ドゴッ!
およそ氷が床にぶつかったとは思えない音で、ハッと我を取り戻した魔族は逃走を開始する。
(ケッ! あんなヤツに勝てるかよ。あの魔法出すまで、ほぼノータイムじゃねぇーか。これじゃ魔族とアイツだったらどっちが化物かわからなくなるぜ。)
「ノコノコと逃がすわけないだろ。〈業炎〉と〈疾風槍〉!」
地獄からそのまま出てきたかのような黒い豪炎が氷の塊を蒸発させることも許さず消し去り、減衰することなく、魔族の背中を無慈悲に追い掛け回す。
さらに、二つ目に唱えた魔法は、先端がえげつないほどに尖っり、まさに暴風をそのまま、押し込めたかの様な槍が背中を向けた魔族に追いすがる。
やがて、競い合うかのように並んだ二つの魔法は、槍に炎が巻き付く、といった形で干渉が起こり、やがて一つの魔法として大成する。
「混合魔法壱の型、火・風〈暴炎槍〉」
──パァァァン!
明らかにオーバーキルの魔法を惜しむこと無く、無表情で使う智成。その弾速は、音速、つまりマッハ1へと達していた。そのため、ソニックブームが発生し、廊下を所々傷付けていたことには、必死で目を背けていた。なら始めから使うな、なんていう疑問は野暮だろう……か?
そんな、些細な裏事情をよそに、暴虐な使徒と化した、あの槍は、いっそ清々しいほどまでの破壊力で、心臓付近を穿つ。
「終わってみればあっけないものだな。……斯も儚きかな、人生、なぁんて言ってみたり。ハァ……疲れた。」
♦何気に明確な殺意をもって、人型の知的生命体を手にかけたのは初めての経験。その重責を、例によっていつもの如く(?)、逃避気味にある曲の一部を抜粋し、誤魔化す智成。だが、誤魔化し切れずに、溜息が漏れてしまうのはご愛嬌。
「あれだけの大魔法を使って息切れ一つ起こしておりませんのね。流石ですわ。」
「まぁな。──っと危ねぇ。」
「へっ? きゃっ!」
「残党がまだいたのか。」
「ハニャッ!? 〜〜〜///」
♦あまりの出来事に、ショートを起こし、顔を使用人達に見られてしまったことへの羞恥と、憎からず思っていた彼からのお姫様抱っこで、王女は、美しく、可憐な顔を真っ赤に染める。
彼女の心の中でどんな心理が働いているのか、なんて露とも知らず、王女を狙って角から飛んできた雷や火の矢を咄嗟にお姫様抱っこをして避けることで事なきを得た。
彼がただで終わらせる筈が無く、お返しとばかりに全く同じ魔法を放つ。勿論、2倍も3倍も威力とスピードを増して。
──数秒後
──ドゴォーーン!
(よし、これで近くに魔族と思われる生命反応はないな。)
「そう言えば後ろに誰かいたな。……負傷した騎士と使用人か? 〈無実の光〉!」
どこまでも柔らかく温かい光が視界を埋め尽くす。
「こ、これは! 」 「傷が癒えていく…… 」
「それだけじゃない。疲労感や魔力切れの倦怠感もなくなっていく。」
これはアンデットにも効果があるという優れものだが言う必要は無いだろう。多分、死者が出る前に全部終わらしたと思うんだが、どうなんだろうな? そこら辺は。
「あ、あのあのあの!」
「ん? どしたの? 一旦落ち着こっか。」
何故かテンパっているが、こうやって近くでみると可愛いなぁ。肩まである髪を編み込みにしてあり、パッチリとした少しタレ目なのが印象的だ。あれ? この娘も金髪碧眼だ。しかも似たような顔をどこかで見たぞ?
「そ、そろそろ降ろしてくださいませんか?」
「おっと、ごめん、ごめん。ついつい見蕩れてしまって。」
こうやって全身を見ると理想的な体型をしてるのが分かる。すらっとした手足にキュッと締まったウエスト。掌に収まりそうな大きくも小さくもない胸、など均整がとれている。
「〜〜!?!? あ、あの……えっと、その」
(は、恥ずかしくてお顔が直視出来ません……お礼が言いたいだけですのに。)
「ゆっくりでいいよ。焦らずに、ね?」
何なんだ!? この可愛いすぎる生物は。俺の顔を見たり目を伏せたり忙しなく動く目線と新雪のような肌に桜が咲いたかの様なピンク色に染まった頬。思わず頭を撫でてしまった。
「あ、ありがとうございました。改めてお礼を申し上げます。ところで、お父様いえ、王様は無事ですか?」
「ああ。チラっと見たところ大剣もった大柄の男がなんとかしてだぞ。」
「鎧の色は覚えてらっしゃいますか?」
「たしか、白銀だった」
「それだと騎士団長様ですね。(ちょうど報告しに執務室に行った時だったので大事には至らなかったのですね。その代わり私が襲われてしまいましたが。でも、こうやって勇者様に助けて貰えましたので文句はありません。──って私は何を!? そ、それはともかく妹は上手く逃げたでしょうか?)」
──ギィィーーーン!!
静寂が支配していた王宮に突如として、金属音が鳴り響く。
「まだ終わってなかったのか。真下かな? 音源は。」
「ま、真下? 王女様、真下って執務室がありませんでしたか?」
近くにいたメイドのひとりが王女に尋ねる。
「お、お父様が……!」
「うーん、まぁ、だいたい分かった。一応行ってくる。万が一に備えて結界貼っとくか。〈聖域の間〉! これでいかなる攻撃も無効化出来るから安心して。食料と緊急事態発生置いとくから、なんかあったらこの紐みたいなの引っ張ってね。直ぐ駆けつけるから。」
「何から何までありがとうございます。どうかお父様を……」
「分かったから、そんな泣きそうな顔すんな。可愛い顔が台無しだぞ? そんじゃ、いってくる。」
(か、可愛いですって/////。か、顔が熱いです。)
智也は転移魔法を使い、お馴染みの眩い光に包まれる。一瞬の浮遊感の後に目に飛び込んできた光景は……




