VS魔族 part1
ホントは昨日更新するつもりでしたが、あと少しで書き終わるって頃に急用ができ、目を離すと消えてました。はい、見事にやる気が霧散しました。すいません。
── zzz。
クァーアァ。よく寝た。
チラッとカーテンをめくるとまだ薄暗かった。寝るのが早いと起きるのも自然と早くなるんだな。
さてさて、今日の朝ごはんはなっにかな〜。と、下に降りる前に、洗面台に行き、水魔法で出した水で顔を洗う。備え付けのフワッフワのタオルで余分な水分を、軽く押し付けるようにしてとる。
ベット付近まで戻り、アイテムボックスの中から、昨夜必死で作った、礼服のズボンを履き、寝ている時に汗を吸ったTシャツを脱ぐ。
人間って寝てる時に、だいたいコップ一杯程の汗をかいてるんだって。だから、シーツや枕カバーも時々洗濯してね。以上、智成の豆知識でした〜。チャンチャン。
──トントントントン
誰か階段を登ってるのかな? 木製の階段に小気味いい、足音が響く。
──ガンッ!
痛かったろうなー、今の音。大丈夫だろうか。誰か知らんが。
「イテッ! ──キャッ!」
──ガチャンッ!
そんなことを考えてたらいきなりドアが開いた。
「な、なに!?」
「イテテ、なんで何も無いところで躓いたんだろう?」
「誰かと思ったらエミューちゃんじゃん。おはよ 」
昨日起こしに来て、って頼んだったんだ。寝起きはボケていけねぇーや。
「あ、おはようごさいます。すいません勝手に開けてしまっ……」
……? どうしたんだろう? いきなり固まったりなんかして。彼女の視線を追うと……あ、着替えの途中で上半身裸だった。
「気になるの? じゃあ……」
──ゴクリ
彼女の白い首が音を立てる。
「……触る?」
「え?……あの、その……はい! ──じゃなくて!」
ほんのり桜色に染まった頬を隠すようにブンブンと首を振り、どもりながら一気にまくし立てる。
「ち、朝食の準備ができました! し、ししし失礼しましたっ!!」
そう言うと脱兎の如く階段を降りていった。ちょっと、からかいすぎたかもしれない。
(な、なななな何で上半身裸? 右手にTシャツを持ってたから着替えの途中? それにしても、引き締まった筋肉でいい体でした。特に胸筋と六つに割れた腹筋、そして均整の取れた腕の筋肉。もっと見てたかった、あわよくば、お触りも……じゃなくて)
いきなり、顔をブンブンと振りだした彼女に、様々な視線が突き刺さるが、それを気にする余裕は彼女にはなかった。
あ、やっべ。もうこんな時間だ。少しばかり急がないと。
階段を降り、昨日と同じ場所に座ると間もなく……
「お待たせしました、朝食です。さっきはすみませんでした。」
「いいのいいの。そんなに気にしなくて。次回からは、できればノックしてね。」
「は、はい。」
今尚、朱に染まった顔でこくりと頷いた彼女はとても可愛かった。どうやら俺は女の子のギャップに弱いようだ。 え? 聞いてない? まあまあ落ち着いて。
気を取り直して、いただきます。
コーンスープと焼きたての白パン、ツナサラダ(あるんだね、ツナ。もしかしたら違うやつかもしれないけど。)ベーコンエッグが今日の朝食のラインナップであります。
ちょっと時間が押してるので、急ぎながら味わって食べる、という神技(?)を強いられることとなったが卒なくこなす。
ふぃー。御馳走様でした。コメントはまた今度で。
階段を駆け上がり自室へと急ぐ。曲がり角で美少女とぶつかる……なんていうハプニングもなく無事到着。様々な魔法を付与した自慢の礼服に着替え、必要そうな物が〈アイテムボックス〉に入ってるかざっと確認する。そして、来た道を引き返し出口へ。
「あ、トモナリさん、お出かけですか?」
「おう、ちょっくら王宮に用があってな」
(そんな軽いノリで行ける場所ではないはずですが……カレは何者何でしょう? もしかして勇者様……とか? ないない……とは言いきれませんね。どこか不思議な魅力を感じますし。)
「鍵は預けましたか?」
「あっぶねぇー。忘れてた」
「良かったら代わりに預けておきますよ 」
「マジ!? じゃあ、お願いするよ。少し時間に余裕が無くてね」
「(なんか、すいません……)はい、確かに預かりました。では気をつけて行ってらっしゃいませ。」
(あれは礼服でしょうか? 素晴らしい装飾が幾つもついてましたし。それを着こなすトモナリさんもカッコ良かった……て、私は何を考えているの!? トモナリさんと私との関係はあくまでお客様と従業員。それ以上でもそれ以下でもない……はず。)
さっきから何なんだ? この妙な胸騒ぎは。しかも王宮に近付けば近づくほど強くなっていく。できるだけ急ぐか。
★★★
智也が王宮に向けて屋根を全力疾走している頃、その目的地は混乱に包まれていた。
騎士団と思わしき人の怒号が飛び交い、剣戟の音がそこらじゅうで聞こえる。
時を同じくして、使用人や王族の悲鳴、魔族のものと思われる高笑いも響き渡る。
その中で非戦闘員の使用人や負傷した騎士を背中に守り、1体の魔族と対峙するドレスアップした少女がいた。
華美な飾りは一切無いが、少女の美貌を引き立てる淡いピンク色のドレスは裾が所々破け、砂埃を被り薄汚れていた。それは、あたかも今の少女の心境を表しているようだった。
(マズイですわ。このままだと魔力生成が間に合わなくなってしまいます。騎士様には最低限の治療しかできませんでしたし、使用人達は恐怖に震えてます。せめてもう少し魔力生成が速ければ……。ないものねだりしても仕方が有りませんですわね。それにしても、光属性の結界魔法を習得していたことは行幸でした。そして、あの魔族が嬲りながら殺すことに快楽を覚える性格だったことも。時間が経てば誰かが駆けつけてくれるはず。それまで、何としてでも耐えなければなりませんね。)
「ギャーハッハッハ、やっと追い詰めたゼ。オウジョ様よ〜。こんな、ちんけな結界で俺様の攻撃に耐えられてると思ってラッシャルノカナ〜?」
「あなたの攻撃なんかこの程度の結界で十分です。これでも過剰なくらいですわ。」
「ギャーハッハッハ、言ってくれるねェー。どこまで耐えられるかな? カナ? マズは1発。ホォーラヨット!」
そこそこ体格の良い体が一瞬禍々しい光に包まれ、かなりのスピードの拳が繰り出される。
──ドガァーン!
「そ、その程度ならいつまででも耐えられますわ。せいぜい足掻いてくださいな。無駄でしょうけどね。(これは本格的にヤバイかもしれませんね。たかだか一発でこんなにキツイとは。早く、応援が来ることを祈りましょう)」
「こんのクソアマがぁ!」
今度は体当たりをかましてくるようだ。再び禍々しい光に体が包まれ拳と同じかそれ以上のスピードで結界にぶつかる。
──ドッガァーーン
「イッテぇー。フン、なかなか頑丈じゃねぇか」
「ブワッーァハッハッハ、止められてやんの。たかだか人間の結界に手こずってやんの。それにしても、ブワッーァハッハッハ、お前それでも魔族かよ。な、何が『フン、なかなか頑丈じゃねぇか』だよ。ヒーヒー、笑い殺す気かよ。良かったな。それで俺を笑い殺せるぜ。ブワッーァハッハッハ、ハーハー、腹筋イテー。明日は間違いなく筋肉痛だな。唯一の傷になるな、きっと」
「す、スイヤセン。隊長」
(こ、これはホントにマズイですわ。流石、隊長とだけ呼ばれることはありますわ。内包している魔力量がさっきの魔族と全然違うんですもの。)
密かに冷や汗を流す王女をよそに取れていた均衡は崩れ始めていた。
「結界はこうやって力任せに壊すんだ、よッ!」
さっきの魔族とは比べられないほどの禍々しい光に体が包まれ、豪腕から拳が、これまた比べられないほどのスピードで繰り出された。
──ドッギャァーーン!!
(くっ! 魔力が足らない!? これは……魔力?他の方の魔力がこんなにも暖かいなんて、これなら耐えら……れ!?)
わずかに魔法が使える使用人や騎士が王女の肩に手を添え魔力を譲渡する。普段なら不敬罪で処罰されるがそんなことを気にする人はどこにもいなかった。
持ち直したかに見えた結界にヒビが入る。刻刻とそのヒビは大きくなりやがて……
──パッリィーーン
耐久地を超えた結界が粉々に砕け散る。この場に相応しくないキラキラとした光と共に。
(こ、ここまでですか。せっかく今日はあの方に会える日だっていうのに。名前も知らないのにこんなに執着する自分が滑稽に見えてきましたわ。)
「分かったか? こうやって割るんだ。精進しろよ?」
「へ、ヘイ(やっぱりこの方には敵わねぇーや。)」
「あとは、煮るなり焼くなりお好きにどーぞってか? ブワッーーァハッハッハ、さっきの威勢はドコ行ったのかな〜? ん?」
「…………」
「チッ、つまんねぇーの。ダンマリかよ。お前から八つ裂きにしてやんよ。」
「ヒィッ! た、助け……て。誰、か……助け、て!」
その言葉に反応できるものはこの場にはいなかった。分かりきっていたこの事態を改めて感じ、絶望が彼女の心をジワジワと確実に支配する。
隊長と呼ばれる魔族が腰の剣を引き抜き、ゆっくりと振りがぶる。
次の衝撃に備えるためなのか、はたまた残虐な笑みを浮かべた魔族の顔を見たくなかったのか、あるいは両方かもしれない。
殺されまいと最後まで魔族に抗った少女は目をギュッと瞑った。




