アリエス荘にて
今読んでた小説が佳境に入り、時間泥棒と化したので更新することが叶いませんでした。
こんなものですかね。言い訳としては……
──カラン、コロンッ♪
宿屋のドアを開けると金属特有の、高音で涼やかな音が鳴った。と、同時に如何にも美味しそうな、食欲をそそる香りが一気に押し寄せてきた。
俺が泊まることにしたのはギルドで勧められた、アリエス荘である。飯が“安い、上手い、早い”の三拍子が揃い、肝心の部屋には清潔感があり常に綺麗に保たれている。
このアリエス荘は名前からも分かる通り12星座が1つ、牡羊座からとったもので、アンティカノス王国には、他に姉妹店とも言うべき支店が11店舗あり、とてもメジャーな宿屋の1つらしい。
♦とてもメジャーと言うか、この宿屋がビジネスモデルとして取り上げられ、宿屋業界では1位、2位を争う大規模企業である、なんてことは智成はまだ知らない。
「いらっしゃいませ〜。お食事でしょうか? それとも、ってトモナリさんではないですか。」
出迎えてくれたのはこの宿の看板娘こと、エミューちゃんである。青い髪、碧眼の(外見から判断するに)17歳くらいの活発な女の子だ。スラリと伸びた長く細い足からは想像できない、強靭と思われる脚力でこの広い食堂を縦横無尽に移動し、ウエイトレスとしてこれ以上無いほどの仕事をこなしている。
肩甲骨辺りにまで伸びた髪をポニーテイルに、白い半袖のワイシャツのようなものを、黒いショートエプロンとくるぶしまであるズボンを身に纏い、足元にはそこまで高くないヒールを履いている。
ここだけ聞くと肌の露出が少ないので、色気がないように思えるが、その実、出るとこは出て、引っこむとこは引っこんでいる素晴らしい体つきをしている。更にワイシャツにぴったりとしたズボンのせいでナイスバディな体の輪郭が際立っている。
「 ──! 1回見ただけの客をもう覚えてるんですね。流石宿屋の看板娘ですね。」
「そりゃ勿論! って言いたいところですが、普段はそういうわけにもいきませんよ。この人数ですし。」
そう言って食堂を振り返る。
「じゃあなんで俺を?」
「こんなに人が訪れているにも関わらず、黒髪黒目なんていう特徴を持った人はみたことありませんからね。だいたい予想はついてたんじゃないですか?」
あー、全然ついてなかったよ……。そういえば、ここ異世界だった。
「おーい、エミューちゃん! 人手が足らないからお客さん案内したら料理運んでっ!」
「はーい。今いきまーす!」
「ごめんね。なんか引き止めちゃって」
「いえいえ。私も少しあなたに興味があって一言、言葉を交わしたいと思ってたのでちょうど良かったです。見た感じ粗野な雰囲気もイヤなやつ特有の空気もありませんでしたし。」
「そんな風に有名な宿屋の看板娘に言われて光栄だよ。」
「なんでそんなに他人行儀なんですか? しばらくここ拠点にするんですよね? なんならエミューって呼び捨てにしても、ゴニョゴニョ」
「( ──? 最後の方聞き取れなかった。なんて言ったのかな)ああ。そのつもりでいるよ。なんで? って言われてもなー、強いて言うならば……」
「言うならば?」
「エミューちゃん!? 早くーー!!」
既に泣きが入っているような悲壮な声が厨房の近くのカウンターで上がる。
「はい、ただいま!! (タイミング考えてよ! まったく、ハァ……)それではトモナリさん、こちらの席てお待ちください。」
♦そう言って案内し、カウンターへ向かっていくエミュー。
心の声は誰にも届くことなく、彼女の胸の中で留まる。彼女しか知らない淡い想いと共に。
彼女がひっそりと隠し持っているこの想いが、いつ芽生えたか、というのはまた今度の機会に。
これは、本人(智成)が無意識のうちに助けた人々の内の1人で、唯一顔を見たのが彼女だ、ということだけ言及しておく。
(あっ! “招待状”を渡すのを忘れてた。ちょっと、ではないくらい気分が高揚してたから仕方ない、とは言え気を引き締めなければ。)
あと4話ぐらいでバトルシーンに入れると思います。




