手合わせ vsセニーブ
♦今彼は一生豪遊出来るほどの金を手に入れ──素材の状態がすこぶる良く、且つ高ランクなため、大金の9割がその手に渡るには今しばらく時間がかかる──金にあかせて遊び歩いているわけでも、はたまた意気揚々と一狩りしに行ったわけでもなかった。
──その彼の前では、あのネコ耳の少女が荒ぶった息をととのえていた。
ちょ、ちょっと待って! そこそこの時間、待って!! なんか言葉が足らなくて少しばかり、いやかなり犯罪臭が漂っちゃってるよ……!?
誤解を解くには少し時を遡る必要がある。
何事もなく(?)登録を終えた俺は、名残惜しそうに見つめてくる彼女(あっ! 名前聞いてない……)の視線を決死の思いで振り切り、ギルドから出た。
そして、あのいろいろ慣れちゃって耐性がついている男性職員に教えて貰った宿へと向かった。
その宿はと言うと、三階建てでクリーム色、小洒落ていながらもどこかアットホームな雰囲気を醸し出していた。
勿論、外観も大事だが何よりも“安い”“早い”“上手い”がモットーである食堂が1階にあることである。宿泊代に含まれている朝夕の日替わり定食もさることながら、お金を払い注文できる一品ものの料理はどれも逸品らしい。
食道楽な俺には嬉しい限りだ。いや、条件を指定したからそうでなくちゃ困るのだが。今から、夕ご飯が楽しみだ。
その後、この間に武器やら何やらを準備するのに別行動だったセニーブと合流。王都には四つの出入口……もとい、大門があり俺が入ってきたのは北門。訓練に適したとこはないか? と聞いたら東門をぬけてすぐに平坦な草原がある、とのことなのでセニーブと一緒に草原へ向かい訓練を開始。
まぁ、そうは言っても実践形式でしか教えられないので──誰かさんのせいで──実践形式で行う。
今回、得物は近くの武器屋で買った量産品のショートソード。このショートソードはだいたい117cmほどで高校生男子が使う竹刀と同じ長さである。
一通りの武器の扱いは、あの地獄のような修行で心得ているが、小三の頃から続けている剣道の影響で剣が1番手に馴染んだ。
それよりも、徒手空拳の方が、武器を使う時よりも自由度があり、楽しいから普段はこちらがメイン。
そのショートソードを右手を添えるようにして柄の方を、左手で柄頭を包み込みしっかり握る。
足元は右足を前に、左足を後ろに下げる独特の構えをとる。
セニーブのもつ100cm程の細身の剣を巻き上げたり払ったりして、いなしながら打ち込ませる。その際に気付いたことを指摘していく。
流石、獣人といったとこか。身体能力が凄まじい。そして学習能力が高く、スポンジが水を吸収するが如く、教えたことを身につけていく。
──んで今に至る。
「時に、トモモナリさん」
「人を果物の一種のように呼ぶな。俺の名前はトモナリだ。」
「失礼、噛みました。」
如何にもわざとらしく、ハッと驚いて両手で口元を隠す。
「いいや、わざとだ」
俺はジト目をむける。
「……かみまみたっ!」
可愛らしく、それでいてあどけない笑顔でそんなセリフを口にする。
「わざとじゃないッ!?」
何処かで聞いたことのある一連の流れ(?)を終えて、満足そうに彼女は改めて質問してきた。
「ところで、どこでそんな実力を身につけたんです?」
「辺境の山奥で人知れずこっそりと。」
ここだけ聞くと怪しさMAXだな。
「辺境って北門の方のとこですか?」
「ああ、そうだ」
嘘じゃない。
「──!? あそこAAAランクですよ!?」
へぇー、道理で物々しい雰囲気だったわけだ。大したことなかったけどな。それより、もう新しいランクが浸透してるんだな。そこの方が驚きだ。情報社会でもないこの世界でこんなに早く出回るなんて。
★★★
そんなこんなで、手合わせが終了し昼間とった、宿へと向かう。
いや〜、飯が楽しみだな〜。きっと見たことのない食材が使われてるんだろうな。
♦ある意味呑気とも言えることを考えながら夕食に思いを馳せる智成。その宿で大きく人生を変える“招待状”が届いていることなど知らずに……




