裏通りにて
ホントはギルドまでいきたかったんですが、思いの外長くなってしまったので、一旦切りました。
気さくな(?)門番さんに別れをつげ、まずはギルドへと足をむける。
え? どうやって方向がわかったのって? 聞いちゃう? それ。ロレンツォ印の地図で即座にわかりました。
えーえー、なんてたってギルドのはすむかいにあるんですから。やってらんねぇーぜ。ったくよォ。
閑話休題
そんなわけで門から王宮へと続く一本道を途中で折れて、裏通りに入りショートカット。
何もなければ10分(体感)も歩けばつくはずだ。
──そう、何もなければ、だ。
──ピーー ピーー ピーー
なんとなくで作った〈スリ防止システム〉が発動し、頭の中で警報をならす。いやー、作ってみるもんですね。
存在を忘れてて最初、音がなった時パニクりかけたのはここだけの話……
10秒後物陰から人が走り出てきた。
──あれはッ!? ネコミミだ! モフモフだッ!
そんな感想を抱いてたらこちらに向かって猛スピードで走ってきた。
何をする気かなのは既に知っているので、通り過ぎるときに伸びてきたしなやかで色白な手をつかむ。
──パシッ
「──!?!? にゃ、ニャニをするニャ。その手を早く離すのニャ」
理想的なしゃべりじゃニャいか。おっと、うつってしまった。このまま行くとただただキモイ(というか誰得?)だけなので、何とか元に戻す。
「そろそろ離してくれませんか?」
120cm程の身長にみすぼらしい服をまとい、赤に近い茶髪は肩まで伸びており、ネコミミをはやした少女は……それでも気丈に、ジト目をむけてきた。
あっれー? こっちも元に(?)戻ってる。
「あなたが何を考えてるのかだいたいわかります。あれは訛りです。故郷の訛りです。少し動揺してしまったので出てしまっただけです。」
……大事なことだから2回言ったんですね。わかります。
だが、きゃつは何と言った? 訛り……だと……!? それにしてもこの衝撃は計り知れない……! あれはデフォルトではないのか?
はっ! 待てよ。あれは訛りと言ったな、まだ希望は途絶えていない!! きゃっつの故郷にはニャが溢れているに違いないっ!
「は、早く離してくださいよー! こんな、私みたいな、いたいけな少女の腕を掴んでどこに連れていく気ですか……! も、もしや、人気のないところまで無理矢理連れて行って、私にナニかするつもりなんですね!」
「いやいや、いやいやいや、しねぇーよ!? ナニもしねぇーよ!? 俺をなんだと思ってるの? そして、この街に、俺ほど人畜無害な人間はいないからな!?」
「……それでは人畜さん」
「人畜さん!? 誰のことだそれはァッ!」
「ち、違うんですか……? それでは、改めて、無害さん。」
「そっちでもねぇーからなッ!! それと、わざわざ区切らないくていいからっ!!」
「もー! 注文が多いですね! と に か く ! いつまで私の手を握っているつもりですか? ロリコンなんですか? この! 私の! 魅力に! 取り憑かれちゃったんですか? 骨抜きにされちゃったんですか? 仕方無いですねー。ちょっとだけならいいですよ? 後で要求するので。ブツを」
「お前に殆ど興味なんかねぇーよ!! 何故って? 私が来た! ······間違えた。もとい、断じてロリコンではないからだ。んで、どさくさに紛れてお前は何させる気だよ! ちょっとだけもダメだからな!?」
「むぅー……、とりあえず──財布をよこせえー!」
「渡すわけねぇーだろうがっ! 悩んだ挙句にそれかよ! 頬を膨らます様子が可愛いと思ってしまった、俺のピュアな心を返せ! それに加え、いまの会話の中でずっとそれ狙ってたの!? 逆に尊敬するわ!」
「あなたなんかに、尊敬されても、ちっっとも嬉しくなんかありませン!」
再び伸びてきた手を払う。
そこから取っ組み合いが始まる。俺と彼女の仁義無き戦いが……!
――しばしお待ちください――
――ビッターーン
「クァーハッハッハ!」
やったぜ。やってやったゼ。あんなに強気な態度をとっていたとしても、所詮は少女。あの過酷で、文字通り地獄の修行を終えた俺に遠く及ぶわけがなかろうなのだ……!
推定10歳の少女を、激しい取っ組み合いの末、本気の一本背負いを決めて、高笑う元男子高校生の姿がそこにはあった。
───────────というか俺だった。
「し、失礼しました。あなた様がこんなにもお強いなんて。」
「それはそうと、これからどうするんだい?」
「どうするとは、どういうことでごさいましょう?」
磨けば光る原石と表すことができる容貌をした、少女は首を可愛らしくコテンと傾け、聞いてきた。
「このままだと一文無しだろう? 冒険者家業の合間に稽古をつけてやろうか? そしたら自分で稼げるようになるしな。」
「ニャんと!? それはありがたいニャ。おっと。……それではお願いします。」
「そうそう、冒険者登録はしてあるの?」
「いえ、まだです。」
惜しい……! もう元の口調に戻ったのか。
「それじゃあ一緒に行こうか。」
「……はい!」




