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「いってきまーす!」
扉を開けると、どこかあたたかい匂いがする。
強い風が髪を揺らす。
変わらない、日常になった朝。
エントランスの先に見慣れた背中。
「おはよ」
歩調が自然と揃う。
「澪花ちゃん、おはよ」
いつも通りのやりとり。
「今日ね、懐かしい夢をみたの」
「懐かしい夢?」
「律が大人になったらお嫁さんになってねって言う夢」
一瞬だけ、髪を乱していた風が止む。
「大人になった?」
横を見ると、
律は前を向いたまま歩いている。
「まだ大学生になったばかりでしょ」
そう言って、少しだけ笑う。
「…まだか」
「身長だけは大人、お父さんの血?」
「どうだろう。澪花ちゃん、時間大丈夫?」
「えっ」
「28分だよ」
「やばい、先行くね!」
足取りを少し速め、改札へ向かう。
「気をつけてね」
「律もねー!」
階段を降りると
朝のざわめきが近くなる。
いつもの電車に乗り込み、ドアが閉まる。
揺れに合わせて
身体が少しだけ傾く。
窓の外が流れていく。
さっきまでの空気が、遠ざかっていく。




